金太君小説(17)


六千四百年前から電波が飛んできてますね・・・。大きな星がついたり消えたりしている・・・・。


登場人物

我らが金太君です。

権藤大三郎です。

青空第2小の柔道部員に囲まれてしまった金太。果たして・・・?


いつのまにか、金太の周りを多くの柔道部員が囲んでいた。
柔道部員の1人が、金太の胸に恐る恐る手を伸ばす。
そのまま金太の胸をゆっくりと撫でながら、乳首をキュッと握った。
「あぅ・・」
無抵抗なまま、小さな声を出す金太。
「お、俺も!」
「俺にもやらせろよ!」
その1人に触発されるかのように、金太の胸に大勢の柔道部員の手が一斉に伸びる。
まるで無数のヘビが、絡みつくかのように。
「や、やめろ!!」
金太は悲鳴をあげて抵抗しようとする。
しかし、金太の両手両足はガッチリと押さえられてしまった。
声はかすれて相手には届かない。
そうこうしているうちに、ゾッとするような生暖かい感触が体中を走った。
(はぁっ!あ・・・あっ・・)
何本もの手が、同時に上半身を触診していることはすぐに分かった。
一本一本の手が、それぞれ違う動きをしている。
グニュッと乳房を揉んでいる。
お腹をすべすべと撫でている。
わき腹を摘んで楽しんでいる。
同時に複数のヘビが体を這うような感触。
(ああっ!!)
無数の快感に、頭の中が真っ白になっていく。
「あっ・・あぁっ・・んんっ!」
息も絶え絶えになりながら、金太の体は自然に喘いでいた。


次々に襲い掛かる魔の手に、思わず喘ぐ金太。
「なんかコイツ感じちゃってるみたいですよ」
「すげー敏感みたいだぞ」
柔道部員が金太の反応に気がついたようだ。
「もっとイタズラしちゃおうぜ!」
全員よってたかって、金太の乳房をいじり始める。
部員の1人が、股間の膨らみをグイッと握る。
「ぎゃあ!」
股間の刺激に耐えられず、思わず大声を出してしまう金太。
部員たちは、ここぞとばかりに金太をおもちゃにしていた。
「コイツ、もう勃っちゃってますよ」
「あははっ。俺にもやらせろ!」
「大河原さん、下も脱がしちゃってくださいよ!」
自分を辱める最悪の言葉に、金太はビクンと反応する。
「やめろ・・」
自分のおちんちんが、見ず知らずの柔道部員たちの前に晒されてしまう。
金太のような硬派な男にとって、最も屈辱的な制裁。
それだけはなんとしても避けたい。
しかし、押さえつけられている両手を必死に動かそうとするが、どうにもならなかった。
そうこうしているうちに、大河原の手が柔道着を掴んでいる。
「じゃ、行くぜ!」
ゆっくりと下半身の道着が脱がされていく。
(も、もうダメだ・・)
金太の表情が諦めに近いものに変わっていく。


そのときだった。
「お前ら、いい加減にしねーか!」
「ご、権藤さん!」
いつのまにか、先ほどのダメージから回復したのか、鬼のような形相で柔道部員たちを睨み付けている権藤。
「制裁はその位でいいだろう?」
「しかし・・」
道着は下ろそうとしていた大河原はアタフタする。
「随分とキンタを痛めつけたみたいじゃねぇか・・まだ不足なのか?」
「いえ、そんなことは・・」
「お前らごときが、キンタをリョウジョクするなんて10年早えんだよ」
「すみません・・」
「部屋を片付けて、さっさと帰れ!」
「コイツはどうするんですか?」
「ここから先は、俺とキンタの問題だ」
「わ、わかりました・・」
金太を取り囲んだ柔道部員は、ちょっと残念な表情をしながらその場を離れていった。
大河原も少し不満そうな顔をしていたが、権藤の言う事は絶対なのだろう。
きっぱりと諦めて、そのまま帰り支度を始めた。
金太はそのやりとりを、目を閉じて聞いていた。
(まさか権藤のヤツ・・俺を助けたのか・・)
自分の大切なところが晒されるという屈辱を避けられたことに、金太は正直ホッとしていた。


しばらくすると、柔道部屋には権藤以外は誰もいなくなった。
金太は大の字の格好のまま、ポツンと取り残されている。
薄っすらと目をあけると、そこには自分を見下ろす権藤の姿があった。
権藤はいつもの笑みを浮かべていない。
真剣な目で金太のことを見つめている。
金太は苦しそうな声で権藤に話しかけた。
「ご、権藤・・・ケガは・・大丈夫なのか?」
「軽い脳しんとうだったみたいだぜ」
「すまん・・・」
「それよりキンタ、体は動くのか?」
「・・・・・」
権藤の質問に答えず、自分の力で立ち上がろうとする金太
しかし、その姿は生まれて間もない小鹿のように、ヨロヨロと震えている。
「キンタ、そのケガじゃ自力で帰るのは無理だぜ」
「お前の力は借りない・・」
「俺の家で少し休んでいけよ。嫌だとは言わさないぜ」
「・・・・・」
金太は権藤との約束を思い出した。
負けたらなんでも言うことを聞くと。
「分かったよ・・俺も男だ・・約束は守る」
金太はうつむき加減で答えた。


金太の男らしい答えに、権藤は満足したような表情だった。
権藤は金太の目の前で、背中を向いてしゃがんだ。
「じゃ、俺の背中に乗っかれよ。おぶってやるぜ」
「そ、そんな恥ずかしいことできるかっ」
「約束だろ?」
金太は少し悔しそうな顔をする。
「・・・分かったよ・・」
金太は少し照れながら、権藤の大きな背中におんぶされた。
権藤は背中に両手を回し、「よっこいしょ」と金太を持ち上げる。
人の背中におんぶされるなど、何年ぶりだろう?
金太は忘れかけていた不思議な感覚に戸惑った。
「じゃ、いくぜ」
権藤は金太をおんぶしたまま、ゆっくりと歩き出す。
柔道部屋を出ると、柔道着姿のまま傘をさして歩き出した。


雨は激しさを増し、雷が時折ゴロゴロとなっていた。
権藤は比較的大きな傘を差していた。
しかし、金太を背負った状態では、傘一本ですべての雨を防ぐのは難しかった。
「キンタ、もっと俺にしがみつかないと濡れるぜ」
「し、しかし・・・」
男が男をおんぶしているという事実が、金太には恥ずかしかった。
しかも相手が権藤だと思うと、余計に照れる。
「お前がちゃんとつかまっていないと、俺が歩きにくいんだ。
 それに、周りに人はいないぜ」
たしかに周りを見渡してみると、この雨の中をわざわざ出歩く人などいなかった。
金太はズリ落ちそうな体勢を整えるために、権藤の体にギュッとしがみつく。
「そうだ、しっかり抱きついてろよ」
「う、うん・・」


ノシノシ・・・。
権藤の背中がとてもつなく大きく感じる。
耳を背中につけていると、ドクンドクンという権藤の心臓の音が聞こえる。
外はとても寒がったが、権藤に密着している部分だけはとても暖かい。
ずっと昔に、父親にこうしておんぶされたことがあったかな、と金太は思った。
――権藤大三郎。
小学4年生からずっと倒したい相手だった。
柔道のライバル、ただそれだけだった。
そう、あの事件までは。
俺を殴りつけて、結花にひどいことをした。
2人っきりで柔道をしたときは、俺の体にイタズラしてきた。
しかし、夢に出てくる権藤は、なぜか金太に優しかった。
こうして背中に乗っていると、どちらが本当の権藤なのか分からなくなる。
この逞しく大きな体に、フッと身をゆだねてしまいたい気がする。


金太は小学校に入学したころから、体は人一倍大きかった。
ケンカなら誰にも負けない。
小学生という幼い年頃では、ケンカが強いものが常に弱者を支配する。
常に強者であるということは、弱みを人には見せられない。
甘えられる人間は自然と限られてくるのだ。
金太の周りには、自分より力で勝る人間はいなかった。
だから、金太はいつも何事も1人で乗り切ってきた。
「1人で苦境も乗り越える。それが男だ」
そう自分に言い聞かせてきた。
拳一や結花に甘えることはできない。自分は強いのだから。
金太は常に自分に厳しかった。


しかし、いまの傷ついた金太にとって、権藤の存在は特別に感じた。
自分を子供のように軽々と背負っている。
自分よりも柔道が強い。
自分よりも大きくて広い背中。
こんなヤツは初めてだ。
一体、権藤は俺のことをどう思っているのだろう?
ライバルなのか、俺を徹底的に潰したいのか・・もしかして友達になりたいのだろうか。
いままで、権藤の気持ちなんて考えたこともなかったのに、いまはそれが無性に気になる。
権藤なら俺のことを優しく包み込んでくれるんじゃないか・・。
俺の気持ちを理解してくれるんじゃないか・・。
あれこれ考えているうちに、金太は重圧から解放されたように、大きな背中でスヤスヤと眠りについた。


もう収集つかんな・・<俺

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