この物語は、金太君小説(第三部)の続きとなります。読んでいない方は第三部を先にお読みください。第三部を書いてから、一年以上経ちましたが、金太と権藤の決着をつけたいと思ってます。
登場人物
白金太郎。柔道で黒帯を目指す硬派少年。
権藤大三郎。金太を何度も陵辱しているが、目的はよく分からない。
峰崎拳一。金太の一番の友達で、以前金太とエッチしたこともある。快活な少年。
──「頼む、キンタ! 行かないでくれ!」
数ヶ月前、アイツの家で、アイツが伝えた最後の言葉。
アイツは俺をどうしたかったんだ?
どうして俺の体にイタズラしてきたんだ?
"お前だけを愛してやる"ってどういう意味なんだ?
俺たちは男同士なんだぞ・・。
俺は思う。
アイツは、俺と同じものを求めているんだ。
だから、分かり合える。
いつか、分かり合える。
絶対に、分かり合える。
俺はあの件以来、そんなことばかり考えていた。
本当はアイツのことなんか、忘れたいはずなのに・・。
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──白金太郎、中学一年生。
──春風中学校の入学式。
体育館での長い式典もようやく終わり、金太はパイプ椅子に座って「あ〜あっ」と背伸びをしていた。
ネクタイを、少しだけ緩める。
まだ騒がしい体育館は、新入生たちでごったがえしている。
「えーっと、俺の名前はどこにあるんだ?」
いま金太の手元にあるのは、クラス表が書かれたプリント。
「どのクラスだ・・・?」
──春風小学校の6年2組の仲間が、一緒だといいな。
──拳一が一緒なら、また喧嘩できそうだ。
──結花が一緒だったら最高だったりして。
などと、期待と不安を抱きながら、目を皿のようにしてプリントにある名前を追っていく。
そして、1年A組の中に自分の名前があることを発見した。
「金太くぅ〜ん」
突然、横から馴れ馴れしい声。
その猫のような甘ったるい声の主は、顔を上げなくても容易に想像できる。
どうせロクでもないことを言ってくるヤツだ。
「拳一、なんか用か?」
「お前のそのブレザー姿、くくくっ・・・」
押し殺したような含み笑い。
「なんだよ、その笑いは?」
「いやさー、金太にはちょっと似合わないかなぁと思っちゃったりして〜」
「なんだと!」
「だってぇ〜、金太くぅんが〜、清楚なおぼっちゃまみたいになってるし〜・・くはははっ」
腹を抱えて笑い出す拳一。
金太はバッと椅子から立ったかと思うと、すぐに拳一の襟元を掴む。
「それ以上言ってみろ! タダじゃおかないぞ!」
「あれ、もしかして図星だったの?」
「そ、そんなことあるもんか!」
まるで読心術でも使っているように、気にしていることをズバズバと言ってくる拳一。
実は、ブレザー姿が似合わないのではないかと、金太自身も鏡を見て気にしていたのだ。
もっとも、逆に突っ込んでくれたほうが気が楽かなと、金太は思ったのだが。
「クラスが変われば、もう拳一とも喧嘩できなくなるしな。今日のところは許してやるぜ」
金太は、ふぅと息をため息を吐くと、そのまま拳一の襟を放した。
こんな悪友は、中学になればおさらばだろう。
──そう思った矢先。
「あ、そうそう。金太、またよろしくな!」
「なんのことだよ?」
「俺とお前、同じA組だぜ」
「へっ?」
頭を抱える金太。
(よりによって、またコイツと同じクラスか・・)
一体、何の腐れ縁なのだろうか。
しかし、拳一と同じクラスと聞いて、なぜか心が落ち着いたのも事実だった。
「やっぱり"エッチ"した仲は、そう簡単に離れられないよなぁ」
その言葉を聞いた瞬間、金太の顔はストーブのように真っ赤になる。
「バ、バカッ!」
急いで、拳一の口を片手で塞ぐ。
「んがぐっ」
「それは、二度と言わないって約束だろ!」
そのまま太い腕で、拳一の頭を押さえ込む。
そして真っ白なYシャツのお腹にギュッと押し付ける。
「ゲボバッ!」
息ができずにもがく拳一。
「拳一、おしおきだからな! 少しはおとなしくしてろ!」
拳一は特に何も意識することなく、"エッチ"という言葉を平然と使っているのだろう。
しかし、他人に聞かれたら一体どう説明してよいのやら。
(拳一のヤツ、俺とエッチした事をまだ忘れてないのか・・!)
なにやら複雑な思いの金太。
──と、少し気を許した一瞬。
「はうっ!」
金太の体は、突然の刺激に硬直していた。
その発信源と思われる下半身を、恐る恐る見てみる。
拳一の手が、新調したブレザーの股間をしっかり握っているではないか。
しかも、股下からいやらしく腕を伸ばしている。
「ぐっ・・拳一・・・やめろ・・・」
久しぶりの感触に、ブルッと痙攣を始める金太。
目がトロンとして、全身の力が抜けてくる。
相変わらず、おちんちんを握られると、金太は何もできなくなってしまうらしい。
「あぐっ・・・手を放せ・・」
肉圧から解放された拳一は、ニタッと悪魔の笑みを浮かべる。
「金太のチンチン、中学生になっても大きさ変わらね〜な〜」
そういうと、拳一は金太のおちんちんの大きさを確かめようと、亀頭と思われる部分をピンポンイトで摘んでくる。
「そ、そんなに早く成長するわけ・・」
「そうなの〜? 金太くぅ〜んは成長遅いんだから〜」
そう言いながら、拳一は金太のおちんちんを摘みながら、縦にブルブルと揺らしてみる。
「うがっ!」
「ギャハハ!」
ビクンッと一回り大きくなる金太のチンチン。
そんなウブな金太の反応を見て、拳一は笑いが堪えられなくなった。
・
・
拳一と金太は、新学期のホームルーム後、ゆっくりと春風中学校を見物するために歩いていた。
拳一の頭には、大きなタンコブ。
「おい、金太! あんなに思いっきり殴らなくてもいいだろ!」
「あんな人の多い場所で、変なことするからじゃないか」
「へへっ」
金太の言葉に、拳一は両手を頭の後ろに組んで、口笛を吹き始める。
相変わらず、何事もなかったかのように、あっけらかんとしているのは拳一らしい。
「でもさ、チンチン触られて嬉しそうだったじゃねーか」
「だから言うなって!」
「すごい鼻息荒かったけど?」
「お前、もう一回殴られたいのか?」
2人で掛け合い漫才のような言い合いをしながら、肩を並べて歩いていく。
一体、仲がいいのやら悪いのやら。
金太は、中学生になったら柔道部に入りたいと考えていた。
小学校に柔道部がなかった金太にとって、部活は憧れの存在だったのだ。
そこで、拳一に付き合ってもらい、柔道部を一緒に見学することにした。
1人で柔道部に行ってもよかったのだが、気がつくと拳一を誘っていた。
金太にとって、部活動というものは未知な存在。
見学といっても、何をどうしたらよいのか見当がつかなかった。
だから無意識で一番信頼できる友達に、自然と声をかけていたのだろう。
春風中には、柔道部専用の建物がある。
体育館の横に、ひっそりと建っている平屋の道場がそれだ。
年代が経っているのか、お世辞にも綺麗なものとはいえない。
しかし、この辺りの中学で、専用の道場があるのは春風中だけだった。
実際に、春風中は県大会では常に上位に入っておりり、かなり柔道には力を入れているらしいのだ。
「ちょっと汚いけど、立派な道場だなぁ。サッカー部も専用グラウンドが欲しいなぁ」
拳一は、正面にある巨大な建物を見て、感嘆の声をあげている。
<さぁ、次!>
<なにやってる! ちゃんと受身をとれ!>
なにやら野太い掛け声が、部屋の中に響いている。
(そういえば数ヶ月前にも、拳一と一緒にこんなことしような・・)
金太は、数ヶ月前に青空第二小に道場破りに行ったときのことを思い出した。
(今回は道場破りじゃないからな・・正面から入らないで横からチラッと見てみよう・・)
拳一と金太は、横の窓からそっと中を覗くことにした。
道場の中はギッシリと畳が敷き詰められており、その中に10人ほどの部員が練習をしている。
(建物の割りには、意外と部員が少ないかな?)
それが金太が最初に思ったことだった。
部員達は、合図で受身の練習をしたり、ペアになって投げ技を練習したりしている。
本格的な部活動を目の当たりにして、ブルッと武者震いする金太。
稽古姿を夢中で追いかけている金太に、拳一がヒョイヒョイと袖を引っ張る。
「拳一、どうしたんだ?」
「あれを見てみろよ」
「えっ?」
拳一が目線を送った先には、1人のガッシリとした男。
「黒帯じゃないか・・!」
金太が目標にしている黒帯。
それをつけた1人の男。
精悍な面構えをしており、視線は鋭い。
金太よりもかなり身長が高く、ゴツイ感じ。
デブというよりはガッチリしており、貫禄もある。
しかし、どことなく不敵さを感じる。
「あの黒帯の人さ、3年生の土門っていう柔道部の主将らしいぜ」
「どうして拳一がそんなこと知ってるんだ?」
「実はちょっと聞いたことあってさ。県下で一番強いって噂だぜ」
「土門さんかぁ・・・どこかで聞いたことあるような?」
金太は腕を組んで「ウーム」と考える。
(あの顔、以前どこかで会ったような・・)
真剣に悩む金太に対し、拳一が話しかける。
「実はさ、柔道部ってあまりいい噂聞かないんだ」
「えっ?」
「3年生の土門と、その取巻きの連中がかなり横暴しているらしくってさ。
ハードな練習についていけなくなって、すぐにやめる部員もたくさんいるらしいぜ」
「そ、そうなのか・・?」
拳一の言葉に、額からわずかに汗を垂らす金太。
「金太が楽しみにしている部活動だから、言うのをやめようかと思ったんだけどさ。
実際に見たら部員の数も少ないし、顧問の先生も見えないしさ。余計なお世話かもしれないけど・・」
「・・・・」
なにか漠然とした不安を感じる。
── 一方、拳一が金太に話しかけている時・・。
「土門主将、あれ見てください!」
3年生の1人が、主将の土門に慌てて話しかける。
「どうした?」
「あそこです、アイツ!」
取巻きの一人が指を指した方向に、金太の姿。
その姿を見た途端、土門はギュッと拳を握り締めた。
「アイツ・・白金太郎か。ヘヘッ、お前が来るのをずっと待っていたぜ。
2年前の大会の準決勝、俺が小学6年で優勝候補のとき、2歳も年下のお前に負けたんだ。
忘れようにも忘れられねぇんだよ・・さぁ、早く入部して来い!」
土門は腕を組みながら、ペロッと舌舐めづりをする。
「ヘヘッ。あの体躯だ。どの新入部員より、いい肉付きをしてるんだろうな。
お前の体をもてあそべると考えると、ウズウズしてきたぜ。先輩としてたっぷり可愛がってやる」
土門の周りにいる4人の取巻き連中も、なにやら薄気味悪い笑みを浮かべていた。
いきなり中学生編になりましたが・・・。土門のイメージは「最強の弟子ケンイチ」の第一話に出てくる空手君です(名前忘れた)。