話がボチボチと進んでいく感じですね・・。
登場人物
我らが金太君です。
権藤大三郎です。
大河原。権藤の舎弟らしく、以前金太を陵辱したこともある。
──3日後。
この日は、新入生の部活動開始の日。
春風中では、新入生は前日までにいろいろな部を見学して、入部を決めることになっている。
金太は緊張した面持ちで、体育館の奥にある道場に歩を進めていた。
肩には、丸めた柔道着を背負っている。
左手には「入部届」と書かれた大きくて真っ白な封筒を、しっかりと握っている。
いまどき、こんなでかい封筒を持っていく律儀な新入部員などいないだろう。
しかも「入部届」の文字は、金太の直筆。
そう、これは金太の"気合"の表れなのだ。
小汚い道場の入口には、「受付」と書かれた机がポツンと置いてあった。
1人の学生が柔道着で、あくびをしながら座っている。
きっと受付係なのだろう。
暇そうなところをみると、あまり入部志望者がいないのだろうか?
金太は高鳴る心臓の鼓動を抑えながら、机の前まで足を進める。
そして、受付係をキッと見つめ、真面目な顔をする。
「1年A組、白金太郎!! 以後よろしくお願いします!!」
天まで届きそうな大声に驚いたのか、受付係はドシンと後ろに椅子ごと転倒した。
──金太が、机の上に入部届の封筒を置いた瞬間。
「俺様も入部希望だぜ」
同じ「入部届」と書かれた封筒が、上に重ねられていた。
(な、なんだ!?)
金太の入部届よりも、はるかに大きい封筒だ。
まさか、自分よりも気合を入れているヤツが、他にもいたなんて。
金太は、慌ててその声の主の方向へ振り向く。
そいつの顔を見た瞬間、口から心臓が飛び出しそうになった。
「お、お前は!?」
「ヘヘヘッ、久しぶりだな。キンタくん」
「ご、権藤・・・大三郎・・!」
ゴクリと唾を飲み込む金太。
その顔を見た瞬間、金太の脳裏にあの日の出来事が蘇った。
──権藤に裸で密着されたときの、ゾクッとした感触。
──おんぶされたときの、大きくて逞しい背中。
──「お前だけを愛してやる」と言ったときの真剣な表情。
そして、忘れもしない、権藤自身が叫んだ最後の言葉。
──「頼む、行かないでくれ」
権藤の顔と体を見ただけで、ドキドキと心臓の鼓動が速くなる。
なにか体にゾクゾクとする感覚が走る。
(ど、どうしちまったんだ・・俺・・)
権藤を見ているだけで、自然とアソコがうずいてしまうなんて。
金太は、その感覚に戸惑いを隠せなかった。
権藤はニンマリとした笑みを浮かべながら、金太に話しかける。
「どうしたんだ? 俺に会えてそんなに嬉しいのかい?」
「そ、そんなこと・・お前、青空中に進学したんじゃないのか!?」
「青空第二小は中間区域だから、どちらも選択できるんだよ。ほとんどのヤツは青空中に行くけどな」
「・・・」
「ヘヘッ。俺には分かってるんだぜ。キンタ、ずっと寂しかったんだろ?」
「なにを・・!」
「そう照れるなよ。顔が真っ赤だぜ。エッチして欲しいんだろ?」
「ふ、ふざけるな!」
「お前の顔にそう書いているぜ」
「・・・」
突然の会話に、返答に窮してしまう金太。
権藤にジッと見つめられて、ポッと赤くなる。
そして、思わず視線を横にずらす。
「お前、相変わらず分かりやすいな」
「う、うるさい!」
権藤は「ヘヘッ」とせせら笑うと、ポンッと金太の肩を軽く掴む。
「これからは一緒に柔道できるんだぜ。もっと嬉しそうな顔をしろよ」
「どういう意味だよ?」
「前に言っただろ? お前の体は、もう俺の呪縛から逃れられないんだぜ。
ただ、お前が気が付いていないだけなんだ。俺を求めてるってことをな。これからじっくりと教えてやるよ」
「教えてやるって・・訳分かんないこというな!」
「お前、もう想像してるだろ?」
「えっ!?」
権藤は、くけけっと笑いをこぼすと、金太の股間に目を移動する。
ズボンの股間には、ポツンとした膨らみ。
権藤は長い手を勢いよく伸ばし、その膨らみをギュッと鷲づかみにする。
「んぎゃあ!」
「いくら否定してもよ、ここは正直だよな」
久しぶりに感じる、全身に電気が走ったような感覚。
拳一とは全く次元の違う、いやらしい手つき。
金太の体は、その衝撃に全身が硬直してしまった。
「はわわ・・!」
「もうこんなに勃起しちまってるじゃねーか」
金太のおちんちんを、ズボンの上から揉みほぐす権藤。
じっくりと、金太の竿や玉袋を確認するかのように・・。
「くああっ!」
「俺にチンチンをしゃぶられたいと思っているだろ?」
その言葉を聞いた瞬間、金太のおちんちんがビクン!と反応する。
その脈動は、権藤の手に伝わるほどだった。
「ヘヘッ。お前、本当に隠し事ができないのな。好きだぜ、そういう清純なのさ」
「ふ、ふざけんな・・!」
権藤のとんでもない発言に、顔を紅潮させながら否定する金太。
「ヘヘッ。まぁいいさ。たっぷり時間をかけてお前に分からせてやるよ。
お前は、俺だけを求めれていればいいってことをな」
そういうとゆっくり股間から手を放し、スタスタと先に柔道部屋に入ってしまった。
(な、なんて野郎だ・・)
金太はしばらくの間、ボーゼンと入口で立ち尽くしていた。
(なんてことだ・・・。まさか、権藤が春風中に入学していたなんて・・)
金太の心は複雑だった。
確かに権藤大三郎のことは気になっていたし、一緒に柔道をしたいとも思っていた。
そして、権藤と心が打ち解ける日がいつか来るといいなと、心の中で思っていた。
しかし、いざ一緒に柔道をするとなれば話は別だ。
只でさえ、初めての部活で緊張しているというのに、権藤のことまで考える余裕はとてもない。
それに、いまの権藤の様子だと、仲良くなるどころか再びリョウジョクをしてくる可能性が高い。
予想だにしない事態に、金太の頭は混乱した。
「あの・・そこの君?」
「えっ?」
「入部希望の1年生なんだろう? 早く着替えて道場に入ったほうがいいよ」
先ほど受付で眠そうに座っていた先輩が、金太のことを心配したのか話しかけていた。
なにか弱々しい声。
本当に柔道部員なのだろうか?
「あ、ありがとうございます。この奥で着替えればいいんでしょうか?」
「そうだよ。それから、特別に1つ忠告しておくよ。
3年生には絶対に逆らわないほうがいい。特に初日はね。なんでも『はい』って笑顔でハキハキとね」
「わ、分かりました」
なにやら意味深な先輩の忠告が気になる。
もしかして、先日拳一が話していた、3年生の横暴のことを指しているのだろうか?
権藤のことで混乱する金太に、さらに漠然とした不安が襲い掛かる。
(クソッ、なにやってるんだ。いまはあれこれ考えるのはやめて、柔道に専念しなくっちゃ!)
金太は顔を両手で叩き、気合を入れなおす。
元気よく更衣室に入っていった。
・
・
金太が柔道着に着替えて、奥の扉をガラッと開くと・・。
目の前に広がる大きな部屋。
天井は低く、畳がビッシリと敷き詰めらている。
鼻にツンとくる、ちょっとカビ臭いニオイ。
すでに横一列に整列した、一年生の姿がある。
どうやら、金太が一番最後らしい。
金太はどうしたらよいか分からず、キョロキョロと周りを見渡しながら、畳の上に足をかける。
──その瞬間。
「おい! そこの新入部員!!」
「は、はい!」
いきなりの野太い怒声に、金太はその場でピンと背筋を伸ばして起立する。
「道場に入るときは、まず礼をするのが当りめーだろ!」
「も、申し訳ありません!」
そういうと、金太は腰を90度曲げて、深々と礼をする。
そして、新入部員の一番端っこに、そそくさと並んだ。
金太がチラッと横をみると、隣に権藤大三郎。
そして、10人ほどの顔が並んでいる。
中には春風小学校の柔道大会で対戦したと思われる顔もある。
(なんだ、意外と新入部員が多いんだな・・)
もし、自分だけが新入部員だったらと心配だっただけに、金太はホッと安堵の息をつく。
すると、横から権藤の小声。
「おい、キンタ。どうやらお前は3年生に目を付けられてるみたいだな」
「えっ?」
「なんとなく分かるんだよ。アイツら、お前に何かするつもりだぜ。潰されないように気をつけろ」
「そ、そんなことあるわけないだろ・・」
「この部屋に入るときに、礼を強要されたヤツなんか1人もいないんだぜ」
「な、なんだって・・!」
「ヘヘッ。どうした、キンタ? 顔色が悪いぜ」
権藤のいやらしい口調に、金太は首筋に嫌な汗が流れ落ちた。
一列に並んだ新入部員の前に、1人のガタイの大きな男が仁王立ちする。
片手に竹刀を持ち、威風堂々としている。
「俺が春風中学校、主将の土門だ」
顔は暴れ馬のようで、声も想像以上に野太い。
さすかに黒帯を取るだけのことはあって、見ているだけでとても威圧感がある。
「へぇ。今年は入部希望者が多いじゃねぇか。
いいか、お前ら! 春風中柔道部に入部するのならば、伝統を守ってもらう。
主将である俺の命令には絶対服従だ。
そして、先輩すべてに礼儀正しくしろ。
守れないやつは今すぐここから出て行け。分かったか!!」
突然の土門の剣幕に、1年生全員が顔を横に見あわせた。
「分かったかって聞いたんだろうが! この新入りどもが!」
「「「はい!」」」
「よーし。これからお前らに自己紹介してもらう。部活暦と目標くらいは言ってみろ!」
そういうと、一番右に立っているひ弱そうな新入部員を竹刀で差す。
「ホラ、お前から自己紹介しろ!」
「は、はい・・・あの・・でも・・」
「デモもヘチマもねぇ。早くしろ!」
土門の威圧感に、柔道部屋全体の空気がすっかり飲まれているようだった。
・
・
次々の自己紹介をしていく新入部員たち。
土門の睨みつけるような視線に、新入部員たちの声は震えていた。
そんな中、1人の元気な声。
「青空第二小学校、大河原武! 部活暦は4年で、青空第二小学校では副キャプテンでした」
金太はその言葉を聞いて、思わず振り向いた。
大河原といえば、権藤とともに自分を陵辱した、いけ好かないヤツ。
結花にひどいことをした、許せないヤツ。
(そういえば、さっきから新入部員はほとんどが青空第二小ばかりだぞ・・。
俺以外の新入部員は、ほとんどが権藤の手下ってことじゃないか・・!)
権藤や他の新入部員までも、自分のことを敵視しているのだろうか?
(まさか権藤のヤツ、また俺のことを集団でリョウジョクするつもりなんじゃないだろうな・・)
孤立無援の状態に、金太の胸は不安で一杯になる。
ボケッとする金太に、土門の檄が飛ぶ。
「何してる! お前が最後だぞ!」
そういうと、土門は金太を竹刀で指差す。
金太は慌てて顔を天に向け、ありったけの声をだした。
「は、はい! 春風小学校、白金太郎! 部活の経験はありません。俺の目標は・・あの・・その・・」
緊張しまくった甲高い声に、思わず土門はプッと吹き出す。
「ハハハ、お前の目標はなんだ? はっきり言ってみろ!」
「俺の目標は・・・その・・日本一の柔道家になることです!」
──思わず口から出てしまった。
その言葉に、道場全体がシーンとなる。
土門の取巻き連中は、お互い顔を見合って、笑いを堪えているものもいる。
「クククッ、お前、白金太郎とかいったな?」
「ハ、ハイ!」
「面白いこというヤツじゃねぇか。日本一だって? じゃ、お前だけは特別に可愛がってやるよ。
部活の経験がないって言ったな。まずは俺様が手取り足取り教えてやる。先輩後輩の関係ってヤツをな!」
「よ、よろしくお願いします!」
金太は深々と礼をする。
(初日から、いきなりマズイこと言っちゃったかな・・・)
土門の勢いに思わず発してしまった言葉に、金太は少しだけ後悔をした。
なかなか話が進みませんね・・。