金太君小説(第5部) (2)


少し展開が急ですが・・(^^;


登場人物

白金太郎。愛称「金太」。春風中学校2年生で柔道部の主将。

権藤大三郎。柔道のライバルだが、同時に金太に好意を持っている。

南条隼人なんじょうはやと。春風中の1年生。柔道部で金太の後輩。


──あれから約1年。
<まだ受身がとれてないぞ!>
<もっと相手の懐に素早く飛び込んで、体重を乗せて!>
<おいそこ! ハンパな気持ちだとケガするぞ>
畳を敷き詰めた体育館に響き渡る声。
気合が入った怒声だが、その中に部員に対する熱意と優しさを感じる。
叫んでいるのは、柔道部の主将。
それがいまの金太の、柔道部の立場だった。


律儀で真面目な性格。
柔道に対する姿勢。
ひたむきさ。
そして全国大会でも十分に戦える実力。
あらゆる点で、春風中には金太よりも主将としてふさわしいものはいなかった。
そして柔道部全員が、金太と一緒に柔道をしたいとを望んだ。
だから、金太はまだ2年生だったが、満場一致で柔道部の主将に抜擢された。


<今年も全国大会に出場! いや今年は打倒明法大付属中!>
金太が主将になったときに掲げた目標。
権藤大三郎のいる明法大付属中には、もう負けたくない。
だから秋の柔道大会に向けて、暑い時期を激しい稽古に汗を流していた。
今年の春風中は、昨年に全国大会に出場したこともあり、大勢の新入部員が入部していた。
主将となった金太は、副将の大河原らとともに、後輩の面倒も見なければならない。
自分の練習時間を割いてまで、後輩を指導に当たることは大変なことであったが、
 金太の何事にもめげない性格と、人一倍柔道を愛する心は 部員たちを突き動かすのに十分だった。
また、金太自身も己をさらに鍛え、着々とパワーアップを果たしていた。


金太は新入部員を一人ずつ、細かく指導していく。
「受身がまだできない。ケガするぞ」
「はい!」
「内股はもっと足を蹴り上げるんだ」
「ウッス!」
「技に入る直前まで、そんなに力を入れるな」
「分かりました!」
金太の小気味良い掛け声。
そして、後輩からの元気の良い返事。
テンポよく繰り返されていく。
「よし、10分間休憩!」
金太は、フーッと深いため息をつく。
(今年はたくさんの新入部員が入ってきたし、みんな元気はいいな。やる気もある。
  だけど、まだほとんどのヤツが体ができていない・・。コイツもまだダメだ・・コイツも・・。
  早く土門先輩の穴を埋める、1年生のレギュラーを育てなくっちゃ。
  そうしないと、予選を突破するのは難しい。大三郎との約束を果たすこともできない。
  たとえ大三郎との約束を果たしたとしても、俺自身がもっと練習しなくちゃ、また負けちまう・・。
  ちくしょう、時間が惜しい・・)
金太はふと権藤のことを考えながら、体育館の外にある水道の蛇口まで足を運ぶ。


──休憩時間。
金太は水道の蛇口をひねって、頭から水を浴びる。
「うひゃ〜、気持ちいい〜」
蛇口から無尽蔵に出る水が、金太の髪の毛にぶつかって、弾け飛ぶ。
練習の合間にこうやって冷たい水をかぶると、体中の熱が一気に放出されてスッキリする。
頭をぶるぶると横に振って、水を弾き飛ばす。
「ふぅ〜」
「白金主将〜」
「ん?」
「主将、タオルです。オスッ!」
「いつもありがとうな」
「白金主将のためなら、こんなことなんでもないッス」
金太が後ろを振り向くと、いつの間にか、元気のよい1年生が目の前にいてタオルを差し出していた。

←それっぽいのをつなげてみました(^^;


金太の目の前で、ニコニコとしながら一緒に汗を拭く1年生。
顔は小学生のように可愛くて、童顔だ。
しかし、体は金太よりも一回り小さいくらいで、今年の新入部員の中では一番大きくて目立っている。
肩幅といい、胸の筋肉の厚さといい、全体の体格のバランスといい・・。
いかにも柔道をするために、生まれたような理想的な体型。
頭はスポーツ刈りを長めにした感じで、瞳は大きくてパッチリしており、「オスッ!」が口癖。
それが、目の前にいる金太の新しい後輩であり、金太が期待する1年生だった。


目の前にいる清々しい笑顔の少年を見て、金太は思い出す。
──デカい。
金太が初めて彼を見たときの印象だった。
『1年C組、南条隼人です!
  オレ、いままで父さんとしか柔道したことがないんです。
  だけど、昨年にテレビで春風中が全国大会で活躍するのを見て、初めて部活をやりたくなって、
  父さんに反対されたけど、春風中の柔道部に入ることに決めました。
  白金主将に憧れてます。一緒に柔道やりたいです。
  将来の夢は、オリンピックで金メダル取ることです。オスッ!』
元気で透き通るような声。
随分と大胆な自己紹介をするヤツだなと、金太は苦笑した。
しかし、昨年に自分が柔道部に入ったとき、
 『日本一の柔道家になりたい』と土門主将の前で公言したを考えると、
  まるで1年前の自分を見ているようで、ほのぼのとした親近感が沸くのも事実だった。
隼人の<オリンピックで金メダルを取りたい>という大胆な目標を、
  同級生の中では笑うものもいたが、それがデタラメではないことは、すぐに証明された。
隼人は父親に柔道の基礎をしっかりと叩き込まれたのか、
 受け身も技の型もしっかりとしており、技のキレも相当なものだった。
春風中のレギュラーと同等、ひょっとするとそれ以上の実力があるかもしれない。
金太はそんな隼人に、とても期待をしているのだ。




金太は隼人に向かって、真面目な口調で話しかけた。
「南条、調子はどうだ?」
「オスッ! いまは柔道が楽しいッス」
少しドスのきいた、変声期を迎えて間もない声。
だが、どこかあどけなさが残るのも確かだ。
「そっか。柔道が楽しいってのはいいよな。どうしてそんなに楽しいんだ?」
「それは・・その・・」
なぜかモジモジとしている隼人。
金太は「はて」と首をかしげながら、話しかける。
「南条は1年生だけど、2年生のレギュラーと同じくらい実力があると思う。自信をもっていい。
  もっと本気で練習をして、レギュラーを取って欲しいんだ。
  そして、全国を勝ち抜いて欲しい。俺のために力を貸してくれ。南条なら絶対にできるから」
そういうと、金太は軽く隼人の肩をポンと叩く。
「主将・・」
「ど、どうした?」
なぜか隼人の目がウルウルと涙ぐんでいるように見える。
「なんでもありません。自分はとってもうれしいです。だって白金主将に期待されているなんて・・」
「当たり前じゃないか」
「指導を・・オレに指導をよろしくお願いします!」
「よーし、その意気込みだぞ。練習はキツいけど、期待してるからな!」
「オスッ!」
金太は隼人の肩をギュッと握り締め、道場に戻っていった。
そんな金太の後ろ姿を見て、隼人は幸せそうな笑みを浮かべた。


新キャラがあざとすぎます?(^^;汗

戻る