金太君小説(第5部) (7)



登場人物

白金太郎。愛称「金太」。春風中学校2年生で柔道部の主将。

南条隼人なんじょうはやと。春風中の1年生。柔道部で金太の後輩。


突然、権藤大三郎の関係を詮索するような質問をしてきた隼人。
その質問に、金太はたじろいだ。
金太と隼人は、数ヶ月のあいだ共に、居残り練習をしてきたが、
 それは柔道の練習相手として過ごしてきたにすぎない。
考えて見ると、金太も隼人も、お互いのプライベートなことに関しては、話したことがない。
だから、突然隼人から予想もしない質問をされ、金太の心は動揺していた。


なにか気まずくなった雰囲気を取り戻そうと、金太は苦笑いをしながら話しかけた。
「よし、そろそろ練習を再開するか、な?」
「えぇ」
「あと乱取りを30分やって終わりにしよう」
残ったジュースを一気に飲んで、立ち上がった金太。
しかし隼人は考え事をしているのか、視線を下に向けたまま、なかなか立ち上がらない。
「どうしたんだよ、南条?」
金太の問いかけに対し、隼人はなにかを心に決めたように、話しかけてきた。
「実はオレ、ずっと前から考えていたことがあるんです」
「なにをだ?」
「白金主将の試合のことです。白金主将は権藤大三郎さんに勝ちたいって言いましたよね?
  オレ、ずっとビデオをみていて思ったんですが、主将が権藤さんに負けた試合って、全部寝技じゃありませんか?」
「えっ・・?」
またもや唐突な質問。
金太は、顎に指を当てて思い出してみる。


「そう言われると、俺はすべて寝技で負けているな」
金太に答えに対し、隼人は真剣な顔をして返事をしてきた。
「オレ、この数ヶ月、主将と何度も組み合って分かりました。
  主将は足腰がすごい強いから、足技じゃ簡単に倒れません。主将から綺麗に足技で一本を取るなんて無理です。
  白金主将から一本とるには、なんらかの方法で強引に倒した後、寝技で押さえ込むしかないんです」
「強引に・・?」
「はい。権藤大三郎さんだって、白金主将から簡単には足技で一本を取ることはできないはずです。
  強引に体勢を崩して倒した後、寝技で必ず一本を取る戦法なはずです」
「そういえば、そうだったような・・?」
隼人はたたみかけるように、さらに会話を続ける。
「白金主将は権藤大三郎さんに勝ちたいって言いましたよね?
  だったらそれを研究したほうがいいと思うんです。寝技を克服するとか・・」
「しかし、そんな簡単に言われても・・」
「オレがこれから寝技をかけます。それを外す練習しませんか?」
「南条が寝技をかけられるのか?」
隼人はニコッとした笑みを浮かべて答えた。
「ハイ。オレ、こう見えても寝技はけっこう得意なんです。父さんに教えてもらいましたから」
「そうか。じゃ、やってみるか?」
たしかに、隼人の言うとおり、ただ練習していただけでは権藤大三郎には勝てないだろう。
勝つための秘密特訓も必要かなと、金太は考えた。
しかし、まさか隼人から、権藤大三郎に対するための練習を提案されるとは思いもしなかった。


金太は隼人に言われるまま、畳にゴロンと仰向けに寝転がった。
隼人はスッと立ち上がり、金太の足元に歩を進める。
そして、真上から金太の逞しい肉体を見下ろした。
ジッと見つめる視線に、金太は自分の心臓の鼓動が、ほんの少し速くなっていることに気がついた。
(なんだ・・南条に見つめられて、どうしてドキドキしてるんだ・・)
これは寝技の練習。
会話上の成り行きで決まったことであり、特に不自然な流れではないのだ。
しかし、先ほどの隼人の会話といい、この体勢といい、なにか不安な感じがする。
この体勢で金太の脳裏にかすめるのは、"リョウジョク"という行為。
まるで、権藤大三郎に真上から見下ろされるような、そんな感覚。
(い、いかん・・俺はなにを考えているんだ。
  真剣にやらなければ南条に失礼じゃないか・・)
これはれっきとした寝技の練習だと、金太は気持ちを切り替えようとする。


天を向き、大の字に寝転がった金太。
隼人は足元から、金太のお腹の上にゆっくりとまたがった。
いわゆるマウントポジションってヤツだ。
隼人が上で、金太が下。
(この体勢は・・大三郎と1年前にエッチしたときと同じ体勢じゃないか・・。
  あの日のことを思い出しちまう・・。
  いや、いまの相手は南条なんだ。変なことを考えている俺のほうが不純だ)
金太は頬をパチンを両手で叩き、気合を入れなおす。
「さぁ、南条、寝技かけてこいよ」
「オスッ!」
隼人は金太のお腹にまたがったまま、ゆっくりと金太に顔を近づけてきた。
お互い、数十センチの距離で見詰め合う。
隼人の顔は、少し緊張して強張っているように見えた。
「白金主将。寝技をかける前に提案なんですけど・・」
「どうした?」
「この練習、多少無茶なことをしていいですか?」
「無茶なこと?」
「たぶん、俺が寝技をかけても、白金主将のパワーで跳ね返されます。
  だから・・その・・ちょっと強引に押さえ込みたいんです」
(強引な押さえ込みってなんだ・・? まさかリョウジョクなんてことないよな・・・)
あれこれ考える金太に、隼人はすでに行動を起こしていた。


次回、陵辱?

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