金太君小説(第5部) (16)


金太に抱かれた隼人の気持ちは?


登場人物

白金太郎。愛称「金太」。春風中学校2年生で柔道部の主将。

南条隼人なんじょうはやと。柔道部の後輩で金太のことが好き。


──誰もいない崩れかけた建物の中。
オレはいま、大好きな人の胸に抱かれている。
そして、唇と唇を合わせている。
オレは生まれてはじめて、キスをした。
相手は、オレが一年間憧れ続けた柔道部の主将。
白金太郎さんという人。
オレは、うれしくて、感激して涙が出そうになった。


唇って柔らかい。
何も味はしないけど、触れ合っているだけで白金主将の暖かい心が流れてくるみたいだ。
オレが唇を動かすと、それに反応して主将も動かしてくれる。
つながっているんだ。
いま、この瞬間だけはオレと主将の心がつながっているんだ。


目を薄っすらと明けると窓から薄日が入るのか、少し眩しい。
チラッと主将の顔をみると、ただ黙って、目を閉じてオレの唇を求めている。
オレはその表情を見て、安心した。
もし、白金主将が目をあけて、目と目がぶつかったら恥ずかしい。
だから、オレも目を閉じて、時の流れに身を任せることにした。
オレは、気持ちがだんだんと高ぶっていき、オレの大切な部分が勃起していることに気がついた。
大好きな白金主将に抱かれて、キスされて、反応しないわけがない。


オレは思い切って、自分の舌を、主将の唇に伸ばした。
主将の唇の中は、何もない空間で、舌を伸ばしてもその奥に何かが存在するわけではなかった。
しかし、そのうちフッと生暖かい感触が走った。
それは白金主将の舌だった。
舌を動かしていると、主将の舌と触れ合う。
オレは、舌と舌が触れるたびに、大きな興奮と快感を味わった。
舌って柔らかい・・。
それに暖かい。
(主将、もっと・・!)
オレが念じると、主将は舌をオレの舌に絡ませてきた。
そのときオレは伝えた。
白金主将、愛してます・・と。
だから、舌をもっと絡ませてそれを伝えていた。
すると白金主将の舌も、それに反応して求めているように思えた。
舌ってこんなに暖かくて柔らかいものだったのか・・。
絡み合った舌同士は、なかなか離れることができない。
たぶん、主将も気持ちいいんだ。
この心地よさが永遠に続いたら、どんなに幸せなことだろう。


白金主将・・オレ、もうたまんないッス。
舌と舌を絡ませながら、オレは主将のこと思いっきり抱きしめていた。
腕が勝手に動き、お互いが体をギュッと密着させるように抱いていた。
1分くらい、舌と舌を求め合ったあと・・。
オレはぶはっと息を吐いて、一度呼吸を整えた。
白金主将も同じことをしていたと思う。
オレは自然に語りかけていた。
──白金主将、もう一回、と・・。
オレが目を閉じると、主将はもう一度キスをしてくれる。
オレの心臓は再び鼓動が速くなり、それは頭の中に心音が響くほどだった。


うれしい・・。
オレの気持ち、主将に伝わっているかな・・。
快感に支配されながら、オレはそんなことを考えていた。
オレは主将の舌を執拗に求めて追い回した。
もう一度、舌と舌が絡んだとき、オレはさらなる快感を打ち震えた。
いままで経験したことはなかったけど、舌を絡ませあうたびに、どんどん胸が詰まるような気持ちになるんだ。
やっぱり白金主将はオレのことを求めてくれている・・。
これって、気持ちが通じ合ったってことなのかな・・。
主将はこれから毎日、オレのことを愛してくれるんじゃないか?
オレはふとそんなことを考えた。


オレはキスをしながら、自然と自分の股間に手が伸びていた。
そのまま自分の柔道着の帯をスルスルと外すと、柔道着の下がずり落ちて、下半身だけが素っ裸になった。
いわゆる、おちんちんが丸見えな状態だ。
オレは、白金主将の腕をそっと掴む。
恥ずかしかったけど、その手を思い切って自分のおちんちんに押し付けた。
主将はその手をどうしようか迷っていた。
オレのおちんちんは、これ以上ないほど勃起していて、さすがに手にやり場に困っているのだろう。
しばらく手がオレの股間の周辺で、さまよったあと・・。
オレのおちんちんを、柔らかく握り締めてくれた。
(あうっ・・!)
竿を握る暖かい手。
白金主将は、そのまま、ゆっくりと揉んでくれた。
優しくなぞるように。
亀頭に被ったままの皮を、上下にゆっくりと揉まれて、玉袋も触ってくれた。
オレは自分のおちんちんが、一気に膨れ上がるのを感じた。
(んっ、あっ・・気持ちいい・・)
上から唇を重ねられ、下から股間を揉まれて・・。
なにがなんだか分からないほど、気分が高揚して・・。
オレは鼻から荒い息を吐き、そして体を悶えさせた。
おちんちんからはあっという間に、ドクンドクンという脈動が始まった。


オレはしょっぱい涙とともに、おちんちんから液体が噴き出すのを感じた。
ガマンしようと思ったけど、もう抑えることはできなかった。
好きな人に触られると、アソコがマグマのように物凄く熱くなるんだ。
それに、こんなに簡単に逝っちゃうなんて・・。
主将は、黙って持っていたハンカチをオレのおちんちんにそっと当てて、
 下半身に流れ落ちたオレの液体を、手探りで綺麗に拭いてくれた。
キスをしていて見えないはずのに、何度も何度も丁寧に拭いてくれた。


オレはもう、主将と離れたくない。
ずっとこうしていたい。
どれくらいキスをしていたのかは分からないけど、オレは体を震わせながら、ようやく唇を離した。
目をあけると、白金主将の唇とオレの唇に唾液のあとがツーッと引いていた。
オレは半ば放心状態で、ウツロな目で主将をみつめた。
でも、オレは主将の顔をみてハッとした。
なぜなら、白金主将は目を真っ赤にして、涙を必死に耐えていたから。
どうして涙を耐えているのか?
どうして悲しい顔をしているのか?
オレには分からなかった。
こんなに気持ちよくて、ドキドキしているのに。
オレの気持ちが主将に伝わったはずなのに・・。
なぜなんだ・・。




「白金主将・・どうして悲しい顔をしているんですか・・」
「・・・・」
「どうして・・? オレとキスをしたことがそんなに悲しいんですか・・?」
すると金太は隼人の瞳を見つめながら、語りだした。
「悲しいよ。だって、南条は俺の柔道の最高のパートナーだったんだから。
  南条と稽古をしているときはなにもかも忘れて夢中になれた。
  俺はこの数ヶ月間、南条と稽古するのが楽しかった。
  それまで俺の相手を一生懸命にしてくれるヤツは、誰もいなかったんだ。
  南条だけが、俺のために真剣に柔道をしてくれた。
  すごい幸せだったよ。俺は南条に感謝している。
  だから、俺はお前のことが好きだった。愛してるとか、そういうのじゃなくて、好きだったよ。
  ずっと南条と柔道をやれたらいいなと思ったよ。本当のことだ」
「主将、本当ですか・・。オレ、素直にうれしいです」
「本当さ」
「でも、だったらどうして、悲しいんですか? 体を震わせているんですか?」
「俺と南条はもう元に戻れないんだ・・。だから悲しいんだ。
  俺は南条の気持ちを知ってしまった。そして、こうしてキスまでしてしまった。
  これからは、一緒に稽古しても、苦しい思いをするだけだ」
「そんなことありません・・」
「無理なんだ。俺は南条と顔を合わせるのがつらいんだ。たぶんお前もつらくなる。
  だって、俺はお前を好きだけど、愛してはいない。
  でも、南条は俺と体を合わせたいだろう? だから2人っきりになれば、今日のことを思い出す。
  こうして体を合わせてしまった以上、体がそうさせるんだ。
  もう普通の精神状態で、柔道はできないんだ。またキスをしたくなる。体を合わせたくなる。
  だから2人で純粋に柔道だけをすることはもうできないんだ・・」


隼人はゆっくりと目を閉じた。
そして、金太の胸に思いっきり自分の顔をこすりつける。
「うっ、ううっ・・白金主将・・」
「南条?」
隼人はガクガクと震えながら、言葉をつないだ。
「オレは・・ううっ・・オレはもしかしたら、間違っていたのかもしれません。
  告白しなければ、ずっと白金主将と一緒に柔道ができたのに、オレは求めてしまった。
  でも、それをいまさら後悔することはできません。
  だから告白したことも、キスを強要したことも、オレはすべてを受け入れます。
  約束通り、今日の予選を最後まで勝ち抜きます。
  それが白金主将に対する・・オレに優しくキスをしてくれたことに対するお礼です」
「南条・・」
「オレ、絶対に忘れません。このキスの味も、オレの大切な部分を優しくしてくれたことも。
  いま俺の耳元で、ドクンドクンといってる白金主将の心臓の音も。
  オレには、柔道で勝つことくらいしか、お礼ができないけど、
  それでも許してくれますか? オレが主将の心を裏切ってしまったことを許してくれますか?」
隼人の心の底から出た言葉に、金太は優しく答えた。
「あぁ。いまの南条はとてもいい顔をしてるぜ。
  だから戻ろう。俺たちがいるべき場所にさ。俺たちはそのために一緒に柔道をやってきた。
  だから、柔道でしっかりと答えを出さなくちゃいけない。柔道を裏切っちゃいけないと思うんだ」
「はい・・」


金太は隼人に肩を貸しながら、暗い建物を後にした。
正直、この建物に入ってから、どのくらいの時間が経ったのか検討がつかない。
おそらく、すでに開会式は始まっているだろう。
だから、2人は走って体育館へと急いだ。
「南条、急ぐぞ! 全力で走れるか?」
「オスッ」
隼人は、体育館へと走る金太の後ろ姿を見て思った。
思えば、この大きな背中に憧れて、春風中の柔道部に入ったのだと。
金太の後姿を見ているだけで、自分は幸せに感じていたのだと。
そして、この後姿だけは、絶対に失いたくなかった。
でも、それも大会が終われば・・。
そう考えると、隼人の目から自然に涙が零れ落ちた。




2人は息を切らせて、全速力で走り続ける。
隼人は、金太の大きな背中を見ながら、話しかけた。
「主将・・あの・・聞きたいことがあるんです」
金太は隼人の声に、走りながら後ろを振り向いた。
「ハァハァ・・どうした?」
「男同士が付き合ったとして、その先になにがあるのか、主将は考えているんですか?」
「考えても分からないんだ」
「ならば、その答えが分かったら教えてください。その答えが出たとき、主将は変わっているかもしれないから・・」
「・・・そうかもな」
金太はそう呟くと、猛然と体育館に向かって走っていく。


金太と隼人が、ようやく体育館に近づいたとき・・。
目に入ったものは、入り口で金太と隼人を探している春風中の部員の慌てようだった。
「白金主将、どこに行っていたんですか!」
「ハァハァ・・すまない、遅くなって。南条を連れてきた。試合は何分後だ?」
「そんなのんきなことを言ってる場合じゃないっす!!」
「えっ・・?」
部員の只ならぬ慌てように、金太と隼人は顔を見合わせた。
「もう、とっくに先鋒の試合は終わってます。南条は棄権で負けになったんですよ!」
「なんだって・・!」
「主将が南条をメンバーから外すなっていうから、登録したまま待っていたんです。
  でも南条が来なかったから、不戦敗です。どうされるんですか!」
「す、すまない・・それで試合は・・?」
「いまは副将の大河原さんが戦っています。もし大河原さんが負けたら、俺たちは一回戦で敗退です」
「そんなバカな!」
予想だにしない事態に、金太と隼人の顔は凍りついた。




金太が隼人を追って体育館を飛び出した後、中学柔道大会の開会式がすぐに始まった。
そして、直後に一回戦の春風中と青空中の試合が開始された。
1年生部員たちは、隼人がいつまでも会場に姿を現さないことについて不満を漏らしていた。
しかし、金太が「南条を必ず連れ戻す」と約束していたため、
  副将の大河原はそのまま隼人をメンバーから外さなかった。
隼人が間に合わなくても、それは仕方のないことだと大河原は腹をくくっていた。
たとえ、先鋒が不戦敗になっても、あとの4人で3本を取れば勝ち残れるのだ。
そして、春風中の1勝2敗で迎えた副将戦で、大河原が最後の砦として奮戦していた。
大河原は、金太が必ずここに戻ってくると信じて戦っていたのだ。


果たして春風中は予選を突破できるのか。次回をお楽しみに(←ォィ)

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