勇者モコモコ小説 (2)


相変わらずのパターンですが・・。


登場人物

モコモコ。大食い、怪力の持ち主でアベルをライバル視している。

ムーア。バラモスの側近で、さまざまな呪文を使いこなす魔道士。



「野を越え、海越え、山越えて〜っと。モコッチ」
断崖絶壁をよじ登るモコモコ。


吹雪の棍棒を獲得するためならば、少しくらいの苦労は朝飯前だ。
モコモコは、町を出たあとに近くの港から船に乗り、1週間ほどで北の大陸に渡っていた。
北の大陸といっても、それほど寒いわけではなく、いつもの服装で十分だった。
きっと、アベルが目指したネザーの町というのは、もっともっと北にあるのだろう。
モコモコが向かっているのは「カラッカゼの町」。
町の情報屋で、"吹雪の棍棒"ならぬ、"木枯らしの棍棒"がカラッカゼの町の近くにあると聞いたからだ。
・・・・。


ようやく1つ目の山を越える。
さらにカラッカゼの町を目指して、肌寒い荒野をひたすら歩き続けた。
しかし、いつまで経ってもそれらしい町は見えてこない。


「あ〜、腹減ったなぁ・・」
必死に山を越えて荒野を歩いたが、お腹の虫はごまかせない。
全く変わらない景色に嫌気が差して、ヘトヘトと座り込む。
すると、いきなり後ろからバットで殴れたような激痛が走った。
「ほんげっ!」
モコモコは前のめりでドスンと倒れる。
頭に出来たタンコブをさすりながら、周りを見渡してみる。
どうやら、魔法かなにかが直撃したらしい。
「いてて、なんだぁ?」
『ムーヒョヒョヒョ。バカめが!』
上空から、覚えのある嫌らしい声が聴こえた。



モコモコが何事かと空を見上げてみると、そこにはカエルのような魔導師の姿をしたバケモノがいた。
赤くて丸いバリアに入って浮いている。
『ムヒョヒョ。まんまと罠にハマリおったな。小僧が!』
「お前は、ムーア! どうしてこんなところに!?」
驚いたような声を上げるモコモコに対し、ムーアが話しかける。
『"木枯らしの棍棒"を探しているのだろう?』
「どうして知ってるんだ!」
『あれは私が流したウソだ。お前は頭が悪そうだから、引っ掛かると思ってな、ヒョヒョ』
「なんだと! でも、どうしてオラなんかを罠にハメるんだ?」
『ムヒョヒョ。実は、竜伝説の1ページに気になるものがあったのだ。
  "勇気ある者より流れる聖なる水を飲めば、その命は永遠に生きながらえる"とな。何のことか分かるか?』
「知るか!」


ムーアはチッチッと舌打ちをしながら、得意そうな顔で話を続けた。
『"勇気ある者"とは勇者のことだ。きっとアベルとかいう小僧のことだろう。そして聖なる水とは・・』
「聖なる水なら、"聖水"に決まってるだろ!」
『ムヒョヒョ、私も初めはそう考えていたのだ。しかしあったのだ。勇者から搾り取れる聖水がな!』
「はぁ? 人間の体から聖水なんかでるわけないだろ」
『お前のような小僧にはどうでもいいことだ。まずはお前の体から取れるのか実験してやる』
「な、なんだって!?」
モコモコにはムーアの話していることが理解できなかったが、なにか悪い予感がする。
ムーアが自分のことをジロジロといやらしい目で見つめていたのだ。
ブルッと寒気がする。


ムーアといえば、実力はヤナックと互角か、それ以上の力を持つ魔導師。
とても自分1人では勝てるとは思えない。
しかし、今日のモコモコはぶるっと武者震いをすると、キッとムーアを睨みつけた。
「今日のオラはいつもと違うぞ。1人でもお前なんかに負けるもんか!」
『ムヒョヒョ、威勢はいいな。ではコイツに相手をしてもらおう』
地面がグラッと揺れると、そこから巨大なカニが這い出してきた。
カニは素早い横歩きで、モコモコに襲い掛かった。



「こんなヤツ、オラの敵じゃねぇ! モコッチ!」
モコモコは棍棒を構えると、大きく振りかぶってカニの甲羅に一撃加える。
しかし、ガシャンと音がして棍棒が弾かれた。
「なんて硬い甲羅だ、手が痺れちまう。こうなったら!」
モコモコは意を決してカニの下にもぐりこむと、そのままカニを怪力で持ち上げる。
「とりゃ〜、モコッチ〜!!」


投げられたカニはひっくり返り、モコモコはその腹を棍棒で叩く。
あっという間にモンスターは宝石に変わった。
「今日のオラは一味違うモンね!」
棍棒を意気揚々と振り上げるモコモコ。
しかし、ムーアは余裕の笑みを浮かべていた。


次回予告
モコモコ「せっかく"木枯らしの棍棒"が手に入るかと思ったら、ムーアが現れやがった。でも今日のオラはいつも違うからな。絶対にやっつけてやるんだ。モコッチ!」

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