ムーアに狙われたモコモコは!?
登場人物
モコモコ。木枯らしの棍棒を探して旅に出たが・・?
ムーア。バラモスの側近で、さまざまな呪文を使いこなす魔道士。
巨大なカニの腹を棍棒で叩いて、宝石に変えたモコモコ。
ムーアは驚いた顔をしたが、すぐにいつもの嫌らしい顔つきに戻る。
『ムヒョヒョ。予想以上にやるではないか』
「カニの一匹や二匹で、オラはやられねぇぞ!」
モコモコの勇ましい発言に、ムーアは薄ら笑いを浮かべて指をパチンを鳴らした。
『生意気な小僧め!』
今度は地面が大きく揺れて、大量のカニが這い出してきたではないか。
唖然としたモコモコは、指で一匹一匹を指しながら数えてみる。
「ひーふーみー・・いや、20匹以上いるぞ〜!」
『ヒョーヒョヒョ! さて今度はどうする?』
(こりゃ、まずいことになったぞ・・。逃げるが勝ちだ)
多勢に無勢とみたモコモコは、短い足を懸命に動かしてその場から退散する。
しかし、走った先の地中からカニが次々に出現して、簡単には逃げさせてくれない。
『グェーー!!』
前後左右から大挙して襲い掛かるカニ軍団。
「ちくしょう、もうヤケクソだぁぁ、モコッチ!!」
カニを一匹ずつ持ち上げる。
そして、ひっくり返しては叩く地道な作業が続く。
なんとか応戦していたモコモコだが、さすがに疲労の色は隠せなかった。
「ハァハァ・・まだいやがる」
もう10匹以上のモンスターを、宝石に変えただろうか?
モコモコが棍棒を大きく振り上げた瞬間。
一匹のカニがスキを見て、モコモコの足をハサミで捕らえた。
「あわわわっ」
ハサミは殺傷能力はなかったが、モコモコの片足を拘束する力は十分にあった。
モコモコはその場でカニを叩きつけたが、疲労のためか力が沸いてこない。
『グェー!』
カニはそのままモコモコの足を引っ張って、勢いよく転倒させた。
──ズデンッ!
尻餅をついたモコモコに、周りのカニ軍団が殺到してきた。
モコモコの太った体に、ピラミッドのようにどんどんと重なり押しつぶしていく。
「うげぇぇ!!」
カニ軍団は、重量で一気にモコモコを気絶させる作戦のようだ。
一匹乗っかるたびに、胃が圧迫されるような苦痛が襲う。
モコモコは体をくねらせて、その場から逃れようとしたが、大きなお尻がなかなか抜けない。
「うわわあ!」
『ムヒョヒョ、降参したら許してやるぞ』
「降参なんてするもんか!」
モコモコはほふく前進するかのように、なんとかカニの隙間をぬって脱出する。
そして必死に立ち上がると、カニがいない方向を目指して、いま持てるすべての力をふるって走り続けた。
長い髪を振り乱しながら、荒野を一気に走り抜ける。
(このまま逃げられるか?)
いつのまにか、モコモコの周りは無味乾燥な荒野から、緑の茂った森に入っていた。
後ろを振り向いてみたが、カニ軍団が追ってくる様子はない。
どうやら、カニは重なり合ったまま動けなくなったようだ。
(ハァハァ・・・ムーアもカニも追って来ないみたいだ。よーし、あそこの洞窟で一休みだ)
モコモコの走った先には小高い丘があり、そこにくりぬいたような洞窟があったのだ。
すでに体力の限界に達していたモコモコにとっては、まさに天国ともいえる隠れ場所。
フラフラとよろけながら、洞窟の中に転がり込んだ。
中に入るとジンと冷たさを感じる。
まだ目が慣れないのか真っ暗だったが、だんだんと視界が開けてきた。
(なんかジメジメしてるなぁ・・・ん?)
よくみると、洞窟の中に白いヒモのようなクネクネしたものが生えていたのだ。
(なんだぁ、この白いフニフニしたのは?)
モコモコは大きく息を整えながら、興味深く白いモノに近づいてみた。
すると、白いものが大量にヒョロリと地面から伸びて、モコモコの体に纏わりついてきたのだ。
「うわ〜っ!!」
白いものは触手となり、モコモコの体を何重にも締め付ける。
モコモコは必死に体に力を入れるが、触手の力は思った以上に強くて、全く外れそうになかった。
それどころか、ギュウギュウと体を圧迫してくる。
「ちくしょう、こんなもの、モコッチ・・・」
『ムヒョヒョ、まんまと罠にかかりおったな』
「その声は・・ムーア!?」
いつのまにか、洞窟の中にムーアがいるではないか!
くくっと押し殺したような笑い方で、いつもの赤くて丸いバリアに入って浮いていた。
ムーアはモコモコの行動を予測して、先回りをしていた。
カニと戦って疲れれば、必ずこの洞窟に逃げ込むとムーアはあらかじめ先手を打っていたのだ。
『さぁ、小僧。ゆっくりと眠ってもらおうか』
ジタバタと短い足を動かして抵抗するモコモコに、ムーアは球体に入ったままゆっくりと近づく。
ムーアは、触手に絡まれて動けないモコモコの体を、ジロジロとした視線で上から下まで舐めまわした。
『ムヒョヒョ。なかなかいい体をしているではないか』
ムーアは片手に魔力をこめて、紫色をした球体をボンッ!と浮かばせると、それをモコモコに向かって投げつけた。
その球体はモコモコの顔の前で爆発すると、モクモクと紫色の煙を出して彼の周りを覆っていった。
「なんだこれ・・・苦しいけど・・眠くなって・・」
『ムヒョヒョ。これでお前は私のものだ。ゆっくりと料理してやる』
まぶたがだんだんと重くなり、モコモコは触手に絡まれたまま、ゆっくりと首を落とした。
『これからが本番だ。じっくりと楽しませてもらおうか』
モコモコのあどけない寝顔を見て、ムーアはあざけり笑った。
次回予告
モコモコ 「紫色の煙を吸った瞬間、眠たくなって・・。オラどうなっちまうんだ・・」