いつも通りの展開かも・・・。
登場人物
風祭将。サッカーが大好きな中学2年生。
野呂弘美。デブだがサッカーが大好きな中学1年生。将に憧れている。
──次の日。
「野呂く〜ん! 待った?」
将がいつも通りに公園へ行って見ると、そこには野呂の姿はなかった。
(おかしいなぁ。今日は野呂くん、どうしたんだろう?)
将はいつも野呂が座っているブランコに、腰をかけてみる。
ギィと錆びた金属音が響き渡る。
将は、寂しそうな顔をしながら、ゆっくりと周りを見回した。
(野呂くん・・)
しばらくブランコに乗って待ってみたが、いつまで経っても野呂は現れる気配はない。
(野呂くん、いつまで待っても来ないや・・。
今日は塾で忙しいのかな・・? 僕だけ河原で練習しよう・・)
将はふっとため息をつきながら、1人で寂しく河原へと歩いていった。
──さらに3日後。
野呂はずっと公園に現れなかった。
(野呂くん、一体どうしたんだろう・・。なにかあったんだろうか・・)
もしかして、自分がサッカーに夢中になるあまり、
知らず知らずに、野呂に対して厳しいことを言ってしまったのでないか。
自分は野呂のことを考えずに、1人でサッカーを楽しんでいたのではないか。
将は、ひょっとして野呂に嫌われてしまったのではないかと思うと、心がどんどん暗くなっていった。
(どうしよう・・。もし野呂くんがサッカーを嫌いになってしまったのなら・・・)
将は肩を落として、公園を立ち去る。
いつのまにか、将にとっては、野呂はかけがえの無い後輩になりつつあったのだ。
将が視線を落として、帰り道を歩いていると、コンビニの横から聞いたことがある笑い声。
<アーハハハッ>
<野呂のヤツ、今度ヤキいれてやらねーとな>
コンビニの横にある駐車場に、元サッカー部の3年生でたむろっていたのだ。
将は、チラッと彼らに目をやる。
彼らとは、サッカー部で決裂して以来、まともに話をしていない。
将が一緒にサッカーをやろうと話しかけても、3年生たちは、将を無視しつづけていたからだ。
(そうだ。3年生の先輩に、サッカー部に戻るように、もう一度説得してみよう・・)
将はゆっくりと薄暗い駐車場に歩を進めた。
「あの・・・」
将が声をかけた瞬間、3年生たちの鋭い眼差しが将に向けられた。
「あの、先輩。サッカー部に戻ってもらえませんか?」
「はぁ?」
「サッカー好きなんですよね? だったら一緒にサッカーやりませんか?」
3年生たちは将の発言に対し、笑みを浮かべてみせる。
「戻ってやってもいいぜ」
「ほ、本当ですか?」
「あぁ、本当だぜ。お前と水野が、サッカー部を辞めてくれればな」
「そんな・・・。サッカーをやって、うまくなりたくないんですか!?」
真面目な顔をして説得をする将に対して、3年生たちは怪訝な顔をする。
「おめーよ、身長いくつあるんだよ」
「146cmです・・」
その瞬間、3年生たちから爆笑の声があがる。
<ハーハハッ。おいおい、電車やバス、半額で乗ってるんじゃねーの?>
<そんな小さい背でサッカーかうまくなるわけないだろ。バカじゃねーの、ワーハハッ!>
爆笑の渦の中、将は声を荒げる。
「好きで小さいわけじゃありません!」
グッと唇を噛み締めて、体を震わせていた。
そんなとき、1人の3年生が将に話しかけた。
「そうそう、1年の野呂だけどよ。お前とサッカーやりすぎて病気になったらしいぜ」
「ええっ!?」
「お前、知らねーのか?」
「知りません。本当なんですか?」
「バーカ。野呂は病気になっちまったんだよ。ノロウイルスで大変らしいぜ」
「ノロウイルスって、なんですか・・?」
「はぁ?」
「そのウイルスのこと、教えてください」
将の焦った顔を見て、3年生たちは顔を見合わせる。
そして、コソコソと話し出した。
(おいおい、風祭は最近流行ってるノロウイルスのこと知らないらしいぜ? マジか?)
(そうだ。ちょっとからかってやろうぜ)
(コイツ真面目だから、冗談でも信じるかもしれないぞ)
3年生たちは、なにかアイデアが閃いたのであろうか。
悪魔の笑みを浮かべてみせる。
「ノロウイルスってのは、急性のウイルスなんだぜ」
「急性って・・それでその病気にかかるとどうなるんですか!?」
「下痢になったり、熱がでたりするらしいぜ」
「そ、それで、すぐに治るんですか?」
「普通は3日ほどで治るぜ。でもよ、野呂の場合は死んじまうかもな」
「ええっ!?」
3年生の予想だにしない発言に、将の表情は凍りついた。
思わず声を荒げる。
「野呂くんが死ぬかもしれないって、本当なんですか!?」
「あぁ。"ノロ"ウイルスって呼ばれている理由を、お前は知ってんのか?」
「いや、知りません・・・」
「ノロウイルスは普通の人間には単なる急性のウイルスだけどよ。
野呂には、致命的なんだよ。野呂って苗字のヤツがノロウイルスにかかると死んじまうんだぜ。
だから、"ノロ"ウイルスって呼ばれてるんだ」
「ウ、ウソつかないでください!」
「別にウソなんかいってねーよ。お前も冷たいヤツだな。後輩が苦しんでるってのによ」
「野呂くんが死んじゃうなんて・・」
将は、喉がからからになって、全身に鳥肌がたった。
どうしてよいのか分からず、額に汗が流れ落ちた。
3年生は、少し真面目くさった感じの声で話してきた。
「でも、たしか野呂を助ける方法があるよな・・本で読んだような・・」
「ほ、本当ですか? 教えてください!」
「えーっと、なんだったかな・・・」
「早く!」
3年生の1人が、腕組みをしてウームと思案する。
そんな3年生に、イライラとする将。
「早く、教えてください!」
「お前、精通してるか?」
「は?」
「もう風祭は中学2年生だもんなぁ。お前、チンポから白いの出るだろ?」
全く脈略のない会話に、困ったように頬をかく将。
将は、突然の精通の話をされて、不満げに口を尖らせた。
「なにをくだらないことを言っているんですか!
精通とノロウイルスと、どう関係があるんです?」
「それが関係あんだよ」
3年生の意味深な発言に、将は負けじと切り返す。
「じょ、冗談はやめてください。僕は精通のことなんか聞いて無いです」
「なんだ、おめぇは。こちとら野呂を心配して、真面目に話してるのによ。別に知りたく無いならいいんだぜ」
「うっ・・」
将は精通の意味は分かっていた。
いちおう、自分は精通していて、おちんちんをいじると気持ちよくなるのは分かっている。
そして、気持ちよさが最高潮に達すると、白いモノがでるのも、理解している。
しかし、それを口に出すのは、当たり前だがとても恥ずかしい。
そういう年頃なのだ。
しかし、いまはそんなことを言ってられないようだ。
「お願いです、精通と何か関係があるのならば、教えてください」
将の目は真剣だった。
「いいぜ。たしか精通していないガキが、ノロウイルスにかかると100%死ぬらしいぜ」
「100%・・」
「だから、野呂が精通してないとしたら、死んじまうかもな。
そのときは治ったように見えても、後遺症で死んじまうらしいぜ」
「そんなことが・・」
「野呂のチンチンよ、着替えているときに、パンツの上からちょっと見たことがあるんだけどさ。
ものすごい小さい膨らみだったから、たぶん精通してないぜ」
「・・・・」
「どうしたんだよ?」
「あ、あの・・・すみません、今日はこれで失礼します!」
将は3年生にロクも挨拶もせずに、全速力で走り去っていった。
その姿を見て、呆然とする3年生たち。
(おい、風祭のヤツ、まさか本気にしてないよな?)
(するわけないだろ)
(いや、なんか目がマジになっていたぜ?)
3年生たちは、ハーハハッと全員で笑い転げていた。
なんてバカな小説なんでしょう。