陵辱の表現能力の限界に達したので、今回で終了とします。
登場人物
ポルトス。三銃士の1人で、大食漢で十人力の怪力の持ち主。
アラミス。三銃士きっての美形。剣術師範を務めるほどの腕前だが、女性であることを隠している。
ベーズモー。拷問と陵辱を趣味とする、シャトレの牢の看守。
鉄仮面。実はベイズモーが金で雇った囚人の1人。
ポルトスは、目をギュッと瞑って、悔し涙を堪えていた。
なにも抵抗できずに、ただ黙ってベーズモーの非道な行為に耐えなければならない。
それは、ポルトスがジュサックを助けるために、自分自身でした約束。
だから、ポルトスは自分以外の誰も責めることはできなかった。
ベーズモーは、そんなポルトスをチラッとみて、満面の笑みをこぼしながら、話しかけた。
「ハーハハッ。身も心もボロボロに打ちひしがれた気分はどうだ?」
「・・・」
「これからお前のチンポを舐めてやろうと思ったが、気が変わった」
「なに・・」
「お前の体は最高だ。いまここで穢してしまうのがもったいないのだ。
これからシャトレの牢に連れて行く。地下牢に閉じ込めてじっくりと愛撫してやる。
じっくりと服を一枚ずつ脱がしてな。一生放さんぞ、私の大切なコレクションだ。ハーハハッ」
「ううっ・・」
「おい、鉄仮面よ。ポルトスの鎖を外して、シャトレの牢まで運べ!」
ベーズモーが鉄仮面に命令をしたとき・・。
<お前ら、一体なにをしているんだ!>
甲高い声が、酒場の中に響き渡る。
驚いたベーズモーが、慌てて後ろを振り向くと、そこには小奇麗な身なりの銃士が立っていた。
透き通るような美声に、顔を伏していたポルトスは現実に戻された。
ゆっくりと顔をあげると、正面には金髪をなびかせた細身の男。
その姿をみて、ポルトスの自然に表情が柔らかくなった。
「アラミス・・・!」
柔らかくなった顔は、さらに涙目へと変わっていく。
「アラミス、来てくれたんだな! やっぱり俺のことを、心配してくれたのか!」
目を潤ませながら微笑むポルトスに対し、なぜかアラミスは顔を横に向けていた。
そして、いつもの悪態をつくような、サラリとした口調で返事をしてきた。
「今日は夜風が気持ちいいからな。たまたま、ここを散歩で通りかかっただけだ。
しかし、ポルトス。なんという恥ずかしい格好をしているんだ。目のやり場に困るぞ」
「えっ?」
どうやら、アラミスはポルトスの姿を見た瞬間から、気まずくなったのか、目を伏せてしまったらしい。
ポルトスが視線を下に向けると、ズボンが我慢汁でベットリと濡れているのに気がついた。
「うわぁぁぁ! アラミス、見ないでくれぇ!」
「お前に言われなくても、さっきから目を瞑っている。だから心配するな」
アラミスは、やれやれという表情で、手で目を隠していた。
「しかし、お前は拷問される趣味があるのか? どうみても単なる変態だぞ」
「そんな趣味があるわけないだろう!」
「だったら、どうしてそんな鎖くらい断ち切らないんだ?
毎日食べてばかりのお前が、唯一自慢できるのは怪力ぐらいだからな。そんな鎖は簡単に外せるだろう?」
2人が夫婦漫才のような会話をしている間に、ベーズモーは冷や汗を垂らして考えていた。
──まずい。
いまここで、アラミスに見つかったことは非常にまずい。
ポルトスを吊るした状態を、どう言い訳するか?
いや、どんな理由でも、清廉潔白なアラミスに通じるとは思えない。
──アラミスを始末するしかない。
それがベーズモーが、瞬時に下した判断。
ベーズモーは、平静を装いながら、アラミスの前まで歩を進めた。
「どなたかと思えば、銃士隊のアラミス殿ではありませんか」
ベーズモーは、かしこまった態度で、アラミスに丁寧に話しかける。
「たしかお前は、シャトレの牢で、看守をしているベーズモーじゃないか」
「はい。実は、たまたま店を通りかかったときに、ポルトス殿の悲鳴が聴こえまして、
立ち寄ったところ、このような惨状に、驚いているところでございます」
「偶然、通りかかっただと?」
「はい、偶然です」
「偶然というのは、実に都合のいい言葉だな、ベーズモー」
「な、なにをおっしゃいます・・?」
「ポルトスは、私の親友だからな。我ながらおせっかいだとは思ったが、手紙にあった酒場の近くまで来て見たのだ。
するとジュサックが現れて、ポルトスを助けてくれと涙を流して頼んできたのだ。
『殺されそうになった自分の身代わりに、ポルトスが捕まってしまった』と。
ポルトスは見ての通り、おっちょこちょいなヤツだが、とても根は優しくて、真面目な男だ。
ジュサックの身代わりになるなど、お人好しすぎて、呆れているほどだ」
その言葉に、ベーズモーはオロオロとし、喉がからからになる。
(な、なんだと、ジュサックのヤツ、裏切りやがったのか! あの役立たずが!
どうやら、アラミスはこの状況をすでに理解しているらしい。
こうなったら、貴様にもポルトスと同じ痛みを喰らわして、捕えてやる!)
ベーズモーは、アラミスが目を伏せているスキに、片足を振り上げる。
その体勢を見たポルトスは、額から汗を吹き出す。
そして、叫んだ。
「アラミス! ベーズモーから離れるんだ!」
「なにっ?」
アラミスがポルトスの言葉に反応したときは、もう遅かった。
ベーズモーの振り上げた足は、アラミスの急所へと蹴り上げられていたのだ。
股間に見事に突き刺さったベーズモーの足。
さすがのアラミスも、苦痛に顔をゆがめる。
「ぎゃっ!」
「ハーハハハッ! 油断したな!
俺様は、キンタマを自由自在に、痛めつけることができるのだ。すばらしい特技だろう?
アラミス、キンタマから火が出るほど痛いのではないか? 貴様もポルトスと同じ目に遭わせてやる!」
自慢の不意打ちが成功して、「ハーハハッ」と豪快に笑うベーズモー。
しかし、アラミスは何事もなかったかのように、涼しい顔をした。
「同じ目だと? お前がどうやって巨漢のポルトスを捕えたのか不思議だったが、こんな卑劣な攻撃をしていたとはな」
「バカな・・・この私の急所攻撃が効いていないだと!?」
ベーズモーは自慢の金的をかわされて、表情が固まった。
「クソッ、今度は外すものか!」
すぐに足を振り上げて、もう一度アラミスの股間を蹴りを入れる。
しかし、すぐにベーズモーは違和感を感じ取った。
「無い・・・ないだと〜! ええぃそんなアホな!
コイツ、ないぞ。キンタマがねぇんだ! どうなってる!
三銃士の1人、アラミスにキンタマがないということは・・えっ、ど、どういうことだ・・。
まさか、コイツは女ってことか!?」
頭を抱え、錯乱状態でうめきまくるベーズモー。
しかし、一方のアラミスはチッと舌を鳴らす。
なぜなら、いままでずっと隠し通してきた『自分が女である』ことを大声で暴露されてしまったから。
「コイツ、余計なことを大声で・・・」
「アラミスが女・・どうなっているんだ・・。
いや落ち着け・・・。アラミスは女であることを隠していたんだ。秘密にしていたんだ!」
「べーズモー、それ以上喋るな!」
アラミスは思わず声を荒げたが、同時に額から汗が流れていた。
チラッとポルトスに視線を向けると、ポルトスも驚きのあまり、表情が固まっているように見えた。
(ポルトスにも、私が女であることがバレてしまった・・)
アラミスは、ポルトスにだけは知られたくなかった秘密を暴露されたことで、さらに動揺する。
そんなアラミスに対し、ベーズモーはニンマリと笑みを浮かべた。
(ハハハッー。天は我を見放さず。神は我の味方なり。勝機到来だわ!)
ベーズモーは、アラミスのことをニッといやらしい目で見つめる。
「アラミス、抵抗すると貴様が"女"であることを、国王にバラしてやる」
「なんだと・・!」
「もし、そうなったら、大変なことになるぞ。
貴様は国王の直属の銃士隊でありながら、男であると偽っていたのだ。
国王を騙した不埒者として重罪に処せられる。いや処刑だろう」
「くっ・・汚いぞ・・」
「もし、バラされたくなかったら、私のいうことを聞くのだ」
「うっ・・」
ベーズモーはゆっくりと近づくと、アラミスの肩に手をまわす。
「よしよし、貴様が女である証を、これからたっぷりと見せてもらおうではないか」
「このゲスが!」
「なんとでも言うがいい。勝者はこのベーズモー様なのだ」
「くそっ」
「フフフ、私は両刀使いだからな。乳を触らせろ」
ベーズモーは、アラミスの胸に手をズルズルと伸ばす。
アラミスは、目をギュッと閉じて、その厭らしい手に震えていた。
──ぬおおおおっ!!
それは、建物が崩れるかのような、野太い叫び声だった。
ポルトスが腕の鎖を断ち切り、ベーズモーの背後に仁王立ちしていたのだ。
全身を赤黒く染めて、湯気がでるような怒気をみなぎらせて。
「まさか・・ポルトス! あれだけ痛めつけたのに、どうやって・・!」
「ベーズモー、すぐにその薄汚い手を放せ!!
これ以上、アラミスを苦しめるというならば、このポルトスが絶対に許さんぞ!」
ポルトスは怒りに全身を震わせる。
その迫力に、ベーズモーは「うっ」と怯んだが、すぐに切り返す。
「そんな脅しをかけてもムダだ。アラミスのことをバラされたくなかったら貴様も・・うぎゃ!!」
そこまで口にしたとき、ベーズモーはポルトスに片手で頭を握られ、宙に浮かされていた。
「いい覚悟だ、ベーズモー。もしアラミスのことをこれ以上詮索するというのなら、俺はお前を殺す。
お前がどこに逃げようが、地獄の果てまで追いかけて殺してやる。
俺はアラミスのためならば、命を賭けられるのだからな」
「そ、そんなバカな・・・」
「俺の言葉に偽りがないか、試してみるか?」
そういうと、ポルトスはベーズモーの頭を、石ころのように握りつぶした。
「ぎゃあああ!!! 痛い、やめて! やめてください、ポルトス様。お願いします!!」
怒りで顔を赤黒く染めたポルトスは、そのままベーズモーを壁にぶん投げた。
「ベーズモー! 二度と俺の前に姿を見せるな。もし次に現れたら、俺はお前をひねり潰すぞ!」
「ひぃぃぃ〜・・・おい、鉄仮面、なにをしている!」
ベーズモーは鉄仮面に助けを求めたが、鉄仮面はスタスタと入口に歩いていく。
そして、仮面を脱ぎ捨ててベーズモーに叫んだ。
「くだらん。お前のようなジジィに金に目がくらんだ俺がバカだった。金は返すぞ!」
そういうと、鉄仮面だった男は、金を床にばら撒いて出て行ってしまった。
「あぁぁぁ・・・そんな・・。
ポルトス殿、私が悪かった、お助けを・・!」
「とっとと失せろ!」
ポルトスは、壁にもたれかかったベーズモーの顔面に、強烈な拳を一撃叩き込んだ。
「うげっ!」
ベーズモーは、鼻血を出したまま、微動だにしなくなった。
・
・
──月明かりがほとんどない、夜の静かな道。
アラミスは、ポルトスから少し距離をとり、後ろをゆっくりと歩いていた。
いつもとは少し違う、重い足取り。
アラミスは、背後からポルトスのボロボロになった服をみて、
ベーズモーにひどい仕打ちをされたことを察したが、いまはポルトスを気遣う気持ちの余裕はなかった。
なぜなら、自分が女であることがポルトスに知られてしまったから。
(ポルトス、私はこれから、お前にどう接したらいいんだ・・)
アラミスは苦悩に満ちた表情をしながら、前を歩くポルトスに視線を向ける。
ノシノシと歩くポルトスの広い背中は、何も語らない。
(ポルトス、どうして何も言ってくれないんだ・・・。
私が女であることをずっと隠していて、やはり怒っているのか・・)
ポルトスの表情は、窺い知ることはできなかったが、いつも楽しそうに歩くポルトスの背中とは違ってみえた。
アラミスの心はどんよりと不安になった。
もう、自分とポルトスは、友達ではなくなってしまったのではないかと。
アラミスとポルトスは、貝のように口を閉ざして歩いていた。
しばらくの間、歩を進めたとき──。
ポルトスの足が止まった。
そして、アラミスに背を向けたまま、おもむろに口を開いた。
「アラミス、そのまま聞いてくれないか」
「・・・」
「俺は、お前に伝えたいことがある」
「ポルトス・・私のことを怒っているのだろう?」
アラミスのすまなそうなセリフに、ポルトスはゆっくりと振り返る。
ポルトスの表情は、いつもおちゃらけた顔ではない。
温厚ではあるが、普段よりも随分と真面目な顔で、アラミスの瞳を見つめていた。
「俺は以前から、ずっと心に決めた女性がいるんだ」
「な、なにを言い出すんだ・・?」
突然ポルトスが、彼らしくないことを言い出すので、アラミスは困惑する。
「ちなみに、その女性はフランスで一番強い」
「一番って・・」
「剣術も強いが、気はもっと強い。もし喧嘩をしたら、俺は負けてしまうだろう」
「まさかそれって・・」
アラミスは、ポルトスの言葉にハッと我にかえる。
「ここからは俺の勘なんだけどな。
その女性は心に深いキズがあって、自分のことを一切語ろうとしない。
まるで鉄仮面みたいな、気難しい女性さ。
でも、そのキズを癒してもらいたいと、心の中では思っているんだ。
自分よりも強くて逞しくて、心の広い男にな。
俺はそれに応えたくて、剣術を磨き、心を穏やかにして、切磋琢磨してきた。
でも、俺にはまだ力が足りないらしい。
その女性は、俺のことを1人の男としては見てくれないんだ」
「ポルトス・・・」
「俺は思うのさ。もし俺が真に強くなったとき、その女性は俺を1人の男として認めてくれるんだろうとな」
「お前、まさか私のことを・・」
ポルトスの言葉に、アラミスは不思議と心が暖かくなった。
そして、自分でも気付かないうちに、心臓が高鳴っていた。
「うっ・・ポルトス・・・」
アラミスの声は震えていた。
知らないうちに、頬に涙が伝わっている。
「アラミス?」
いままで決して自分の感情を見せようとしなかったアラミスに、ポルトスは驚いたような表情をする。
そっと、アラミスの肩に手をかける。
「アラミス、一体どうしたというのだ?」
「私にもよく分からない・・」
「アラミス・・」
「いつから、私のことを女だと思っていたんだ?」
「以前、お前が銃で撃たれたとき、お前を抱きしめたことがあっただろう?
あのとき、そうじゃないかと思ったんだ。俺は鈍感だから、確信はもてなかったけどな」
「そ、そうだったのか・・」
アラミスは、涙を見せまいと顔をそむけたが、
ポルトスは、大きくてゴツイ指で、アラミスの頬についた涙を拭ってあげた。
「アラミス、どうしたんだ、お前らしくないぞ」
「お前が、急に変なことをいうからだろ・・」
アラミスの頬には、さらに一筋の涙。
「お、俺は真剣に話をしているのだぞ」
「人生で一番大切なことは、食べることじゃなかったのか」
「食べることは大切だ。だが、俺にはいつのまにか、もっと大切なものができたらしい」
「ううっ・・」
「ど、どうしたんだ、アラミス!?」
「ポルトス。これ以上、私に優しい言葉をかけないでくれ。慣れないことを言われると涙が止まらないじゃないか」
「アラミス・・!」
アラミスが初めてみせた女らしい表情に、
ポルトスの胸は高鳴り、もはや感情を抑えることができなくなってしまった。
「アラミス、すまん!」
ポルトスはなぜか謝っていた。
そして、気がついたときにはアラミスを、思いきり抱きしめていたのだ。
「うぐっ・・」
あまりにポルトスが強く抱きしめるので、アラミスは思わず息を詰まらせる。
「く、苦しいよ、ポルトス」
「す、すまん、アラミス。
俺には、お前を抱きしめる資格など無いのは分かっている。
だが、今日だけ、いやこの一瞬だけでいいんだ。頼むから、お前を抱かせてくれ」
「・・・」
アラミスはそのまま目を閉じた。
ポルトスの体は大きくて、暖かくて、とても安心できる心地よさがあった。
それはアラミスが忘れかけていた心地よさ。
遠い昔に感じていた、人間の温もり。
しばらく抱擁した後、ポルトスは名残惜しそうにアラミスから離れる。
そして、アラミスの瞳をじっと見つめる。
ポルトスは、真面目な感じの声で話しかけてきた。
「アラミス、俺は、今日あったことはすべて忘れる。
明日からは、いままでどおり、俺たちは友達に戻ろう」
ポルトスの言葉に、アラミスは困惑した。
「ど、どういうことだ? お前は、いまの感情を忘れることができるというのか?
今日あった出来事をすべて忘れられるのか?」
「できるといったら、ウソになるかもしれない。
でも、俺は忘れることにする。なぜなら、俺はお前と、剣を天高く構えて約束したのだ。
"俺たちは永遠に友達でいよう"と。だから、いままでどおり、友達だ」
「・・・」
「でも、俺がお前よりも強くなって、お前を守ることができるようになって・・。
もし、俺にお前がすべてのことを話してくれたとき、そのときは、俺たちは友達以上の関係になろうじゃないか」
その言葉を聞いた瞬間、アラミスは大きな目を見開いた。
「友達以上って、まさか・・」
「あっ・・いや〜、その・・なーに・・」
ポルトスは、自分で自分の言葉が恥ずかしかったのか、頭を掻きながら赤くなっていた。
「ポルトス、ありがとう。
私は過去に愛した男の仇をとるために、女であることを捨てた。
銃士隊に入った理由だって、本当は仇討ちをするためさ。
"剣で人を守る"なんて綺麗事を言ったが、実際に私が行っていたことは、そんな立派なものじゃない。
私は、お前のことを騙していたのかもしれない。卑怯な人間さ・・」
「アラミス・・」
「ポルトス、それでも私のことが信じられるか?
それに、私はもう二度と他の男を愛さないと心に誓ったんだ。
だから、私には気持ちの整理ができない。お前に良い返事をできるかも分からない・・・」
その言葉を聴いて、ポルトスは「あははっ」と苦笑いをする。
「はははっ、それ以上は言うな。俺がせっかく格好良く決めたんだ。
もし、いまここで断れたら、いくら鈍感な俺でも、立ち直れなくなってしまうではないか。
今日はこのまま家路につかせてくれ。体もあちこち傷だらけで痛いんだ。じゃあな!」
ポルトスの顔は、いつもの楽天家の表情に戻っていた。
いままでの行動を忘れたかのように、アラミスの肩をポンと叩くと、そのまま大きな体を揺らしながら歩いていった。
そんないつもの彼らしい後姿を見て、アラミスは自然と頬を緩ませた。
(ありがとう、ポルトス。
そうか、お前は私が女であることを、以前から知っていたんだな。
そして、私のことをずっと見守ってくれていたんだな・・。
今日、お前の本当の気持ちを知って驚いたが、それがなぜかとてもうれしいんだ。
お前は自分のことを弱いといったが、本当に弱いのは私の方だ。
私はいまだに、死んだフランソワのことを忘れることができない。振り切れないんだ。
しかし、私の弱い心を包んでくれるのは、もしかするとお前だけかもしれないな・・)
アラミスは柔かな笑みを浮かべて、ポルトスの大きな背中を見つめていた。
そして、姿が見えなくなるまで、じっと道にたたずんでいた。
最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。
この小説は、『アニメ三銃士』を見ていないと分かりづらかったんじゃないかと思います。でも、これを機会に「アニメ三銃士を見たい」と思ってくれる方が増えると嬉しく思います。
突然、ショタ系ではない小説を書いたので驚いた方もいるとは思いますが、実は最近、アニメ三銃士のムックを購入しまして。それをずっと読んでいたら、ポルトスをむしょうに陵辱したくなってしまって、Sチック小説を書いてしまいました。当初は、シャトレの牢でポルトスが拷問され放題の小説内容だったのですが、書いているうちに長くなってしまい、シャトレの牢の拷問シーンはすべてカットしてしまいました。また、初期はジュサック×ポルトスの内容だったのですが、書いていてどうもおもしろくない。ジュサックとポルトスの間に友情以上の何かが芽生えるのか?という疑問に突き当たって、結局は一番結ばせたかったポルトス×アラミスに落ち着きました。
ポルトスの過去は本編では語られていないので妄想し放題でした。気難しいアラミスと、陽気なポルトスがどうして馬が合うのか? それを(8)で妄想し、ご都合主義的ですが(10)でアラミスが女であることが判明したとき、いままで「友達」の関係だった、ポルトスとアラミスはどうなってしまうのか? そして、ポルトスはどう反応するだろうという妄想を書いています。ポルトスのいじらしい心が、うまく伝わると良いんですけどね。