(4)の続きです。意外なことに、けっこうまともな小説っぽくなってきました。
登場人物
千太キュンです。超聴力の能力の持ち主です。
千太の親友の皆早賢次です。ジュニアのパイロットです。
UXの艦長、レッド提督です。遠隔透視能力を持ちます。
次の日、レッドの横にはレッドと同じダークレッドの服を着た千太がいた。
レッドとお揃いの制服だったので、まるで親子のようだ。
(おい、あの太った子、たしか先日捕虜として捕まえた子だろう?)
(どうやらUXの特別乗員になったらしいぜ)
(え?あんなガキがどうして?)
(レッド提督のお考えだ。なにかあるのだろう・・)
レッドは司令室の真ん中に悠然と立っていた。
その横に緊張した面持ちでキョロキョロしながら落ち着かない千太。
「千太、落ち着かないか?」
レッドは優しい笑顔をみせて、千太に話し掛けた。
「ええ・・・いきなりこんなところにいて、僕には場違いな気がして・・」
すると、レッドは千太の肩に手を回し、グイッとつかんだ。
千太はなぜか不安な気持ちがフッと消えた。
「なぁに・・・すぐにここにいる全員が、お前に一目置くようになるさ・・」
「あの・・1ついいですか?」
「なんだ?」
「賢ちゃんは・・・どうなったんでしようか?」
「あぁ、もう一人の彼か」
「ええ。僕の友達なんです。いまどうしているんですか?会わせてもらえませんか?」
「わかった。いいだろう」
レッドは、クルーを一人呼んで、千太を賢次のところへ案内するように言った。
千太はクルーに連れられて、賢次がいる部屋の前まできた。
「ここがお前の友達の部屋だ。面会は5分だけだ」
「わ、わかりました・・」
千太は、小さな窓から部屋の中をみた。
・・・・!!
そこには、昨日の自分と同じような格好をした賢次がいた。
鎖はつながれていなかったが、服はボロボロに破られ、ぐったりとして動かない。
「け、賢ちゃん!!僕だよ、千太だよ!」
「う・・うぅ・・・・」
「賢ちゃん!!しっかりして!」
千太は賢次の傷つきように動揺した。
千太は、クルーを睨みつけ、叫んだ。
「まさか、賢ちゃんにも、僕と同じことをしたんですか!」
「俺は知らないよ。拷問官じゃないし。でも、あの姿じゃヤラレたんだろうな。かわいそうに」
「そ、そんな・・・」
千太は再び、窓を覗いて叫ぶ。
「賢ちゃん、賢ちゃん!」
「せ、千太・・」
賢次はヨロヨロとしながらも、なんとか立ち上がり、窓のところまで歩いてきた。
「賢ちゃん・・・」
「千太・・・無事だったんだな・・よかった・・」
千太は、賢次が自分のことを心配していてくれたことに驚いた。
「賢ちゃん、僕の心配なんかしなくても・・それより賢ちゃんは大丈夫なの?どこか痛いところはない?」
「うん、俺は・・だ・・だいじょうぶ・・」
しかし、千太が見る限り、どうみても賢次は傷だらけだった。
いまにも倒れそうだ。
「看守さん、すぐに賢ちゃんをここから出してあげてください!」
「それはダメだよ。こいつは捕虜なんだ」
「そ、そんな・・・」
賢次はウツロな目をしていたが、千太に話し掛ける。
「千太・・・お前、その服・・・どうしたんだ?」
「え・・、い、いや・・これは・・。ともかく賢ちゃん待ってて。いますぐにここから出してあげるから」
フォーーーーン フォーーーーーン!!
そのとき、突然サイレンが艦内に響き渡った。
「あれ・・・何の音ですか?」
「警戒態勢に入った音だ。どうも敵戦艦と交戦になるかもな・・」
「敵って・・・」
「国連軍に決まっているだろ」
「こ、国連・・・」
千太はいままで707Rの乗員として戦ってきた。
しかし、今は立場が逆転したことに戸惑った。
レッドの元に身を寄せるということは、国連を・・いや、707Rをも敵に回すということになるのだ。
「さぁ、海野君は早くレッド提督のところ戻りなさい」
クルーは千太の手を引っ張って、賢次の部屋から引き戻そうとした。
「け、賢ちゃん・・ちょっと待っててね。すぐに助けに戻ってくるから・・」
「せ、千太!」
「賢ちゃん・・いまは・・ごめん・・・」
千太はクルーに連れられて、司令室へと戻った。
司令室では、敵戦艦の攻撃に対する警戒態勢に入っていた。
「どうやら、敵の巡洋艦と潜水艦が数隻接近している模様です」
「うるさい蝿め・・数で勝負というわけか・・」
どうやら、国連軍はUXに対して複数の戦艦による包囲を開始したらしい。
「レッド提督、どうなさいます? まずは敵の数を正確に把握しませんと・・」
「私の能力を使っても構わんが、今日はここにいる全員に新しい力を見せたいと思ってな」
すると、そこへクルーに連れられた千太が入ってきた。
「レッドさん・・すみません、遅れました」
「千太遅いぞ」
「す、すみません」
レッドはそういうと、すぐ隣にあるソナー室に指を向けた。
「さぁ、お前の居るべき場所へ」
「ぼ、僕の場所・・」
「そう・・誰もがお前を認める場所だ。いままで707Rでも封印していた、すべての力を使ってみろ!」
「で・・でも・・・・」
「誰もお前を気味悪がったりしない・・・お前には私がついることを忘れるな」
「・・・・・わ、わかりました」
千太はそういうと、ソナーの席についた。
ソナー班にはすでにベテランのソナー員がいた。
軍人気質の、おっかない感じのおじさんだった。
「レッド提督から聞いている。君が海野千太君だね。UXのソナー班はそんなに甘くないよ」
「わ、わかってます」
「では、君のソナー員としての腕をみせてもらおうか」
千太は急いで、耳に音波探知用のヘッドホンをつける。
「ふぅ・・・・・」
千太は深呼吸をして、目を閉じた。
・・・・・・・・
千太の集中力はどんどん高まっていく。
もう一人のベテランソナー員もヘッドホンをつけて、音に集中する。
「現在のところ、なにも音はありませんな・・敵はまだ相当遠くらしいです」
「そうか・・・」
レッドはソナー員のいうことに、うなずく。
しかし、そのとき千太が叫んだ。
「聞こえます・・・スクリューの音です。3隻・・・えっと・・・・」
そういいながら、千太は音紋データの本をペラペラとめくりながら話をすすめる。
「前方、7kmに一隻・・・右舷45度、6.7kmに一隻・・・左舷33度、9kmに一隻・・UXに向けて進行しています・・・」
「海上には前方12kmに駆逐艦らしきスクリュー音が聞こえます・・」
千太の発言に耳を疑う、ベテランのソナー員。
「なっ・・・バカな・・・そんな一度に遠くの音が聞こえるわけがない」
「いえ、間違いありません。僕にははっきりと"分かります"・・」
「わ、分かるだって?」
「はい、僕にははっきりと分かります・・」
あまりの千太の唐突な意見に、ざわめく艦内。
「提督!子供の遊びに付き合っていられません。正確な位置を探るため、もう少しお待ちください」
「黙らんか! 全員、攻撃態勢に入れ」
「提督!このガキのいうことを信じるのですか?」
「お前には一生かかっても、海野の能力を超えることはできない・・わからんのか・・」
「こ、こんな子供が・・まさか・・・」
レッドは、空間透視能力で、千太の指示した地点をさぐる。
「なるほど・・・これは探す手間が省けるというものだ・・・」
レッドは空間透視能力を使い、敵を発見し、レーダーをかいくぐって接近していく。
UXは千太の耳と、レッドの目で、潜水艦を各個撃破していく・・・。
これだけの敵艦に囲まれながら、1時間もかからずに無傷ですべての敵を沈めた。
国連軍はあっという間に壊滅。
艦内にざわめきとも取れる驚きの声があがる。
「こんな簡単に勝つことができるなんて・・・」
「あの海野っていう子供、レッド提督の秘蔵っ子だったらしいぜ・・」
「おいおい・・こりゃ、UXが世界の海を統治する日も近いかもしれないぞ・・」
傍から冷静にみれば、なんと恐ろしい出来事であろうか。
潜水艦は"いかに敵戦艦を先に発見するか"にすべてがかかっている。
千太とレッドの能力が組み合わさったUXは、いままさに無敵の潜水艦となった。
もうちょっと自分の趣味に付き合ってやってください・・・