(6)の続きです。自分の言いたいことが少しでも伝わるといいんですけどね・・。
登場人物
千太キュンです。超聴力の能力の持ち主です。
千太の親友の皆早賢次です。ジュニアのパイロットです。
UXの艦長、レッド提督です。遠隔透視能力を持ちます。
次の日、快晴の朝・・・
波も穏やかの中、UXと707Rは海上で、おのおの浮上して姿をあらわした。
千太がUXから船外をみると、懐かしい707Rが船体の半分を海上に出し、停留していた。
おそらく、現在世界で最強の2つの潜水艦。
戦う日はそう遠くないだろう。
そんなピリピリとした雰囲気が漂う中、速水艦長と南郷副長は、707RからUXをみていた。
「UXか・・こうして見るのは初めてだが、この潜水艦がいまや世界を恐怖に陥れているとはな・・」
「はい・・」
速水と南郷は、707Rからボートを降ろし、UXに向かって接近した。
「あいつら、まさか707Rを攻撃してこないでしょうか?」
「レッドがそんなくだらん真似をするとは思えんがね」
話しているうちに、ボートはUXに接近した。
「707Rか・・・いい船だな、速水洋平!!」
そう叫んだのはレッド提督。
速水は、UX上部にある甲板のような部分に立っているレッドをじっと睨んだ。
「お前がレッドか?」
「そう、私がUXのレッドだ。初めて会えて感激の極みだよ。速水艦長・・」
「最近、随分と派手にやってくれているじゃないか」
「ははは・・君の707Rと対決する日も近いだろうね・・」
「お前さんにはまだまだ負けんよ・・」
「さて、次はどうかな?」
「・・・・」
速水とレッドの間に緊張が走る。
「さて、人質の2人を返してもらおうか」
「2人?1人だ」
「水早賢次、海野千太の2名だ」
「返すさ・・・さぁ、受け取りなさい」
そういうと、手首を縛られた賢次が甲板に現れた。
賢次はゆっくりと、ゴンドラで海上に降ろされ、速水のボートに移動した。
「うっうっ・・・速水艦長、ご迷惑をかけました・・」
「賢次、なにを泣いている。よかった、本当に無事でな」
「・・はい・・うっ・・」
賢次は1ヶ月ぶりに解放され、少し放心状態となっていた。
「全く、レッドのやつめ、賢次をえげつなく虐待したんだろう・・」
速水の怒りの矛先はレッドに向けられる。
「さぁ、海野千太も返してもらおうか」
「残念だが、それはない」
「捕虜を返さないつもりかね?」
「いいや、彼は残念だがもう捕虜ではない」
「まさか、千太を殺したのではないのだろうな!?」
「いや、ここにいる」
そういうと、レッドの後ろに隠れるように立っていた千太を、レッドは前に突き出した。
その姿に驚く速水、南郷。
レッドと同じ服をきた千太。
「千太、何だその格好は?早く戻らんか!」
速水は大声で叫ぶ。
千太は、久しぶりにみた優しい速水艦長をみて、思わず目をそらした。
自分のいまの立場を、とても速水艦長や賢次に言うことはできなかった。
「海野千太は、UXの乗員となった!」
レッドの声だった。
「な、なにをバカな・・」
驚く、速水、そして賢次・・。
「これは海野千太の意思だ。これが君たちとの最後の対面になると思ってね・・」
「バカなことを言うな。千太、なにをしているんだ!」
「は、速水艦長・・・・あの・・その・・・・僕は・・このまま残ります・・・」
「な、なんだと!?」
「ご、ごめんなさい・・」
「レッド!貴様、千太になにをした!!」
速水はパイプを投げ捨て、怒りの形相でレッドを見上げた。
「ははは、別に何もしていないさ。さっきも言っただろう?これは海野千太の意思なのだ」
「そんなことがあるか!」
「速水・・・私はお前を艦長として一流と認めるさ。だがな、お前には千太の父親にはなれんさ」
「言っている意味がわからんな。早く千太を返せ」
すると、千太は蚊の泣くような声で速水艦長に話した。
「艦長・・ごめんなさい・・僕はもう707Rには戻りません」
「千太!」
「僕は見つけちゃったから・・」
「見つけただと?」
「その・・・・僕がいるべき場所を・・・」
「お前がいるべき場所だと?」
「はい・・・。だから、これでお別れです・・。本当にお世話になりました」
そういうと、千太は速水に向かって敬礼をした。
「バカな・・・、一体なにがあったというんだ・・」
速水と南郷は千太の言う意味がわからなかった。
「千太・・・それがお前の本当の意思なんだな?」
「・・・はい・・ごめんなさい・・・速水艦長・・・」
千太は、速水と南郷をみて泣きそうになった。
そのときだった。
「千太!!早く戻っておいでよ!!」
賢次だった。
「なにやってんだよ!千太! 早くそんな船から下りて俺とまた遊ぼうぜ!」
「け、、、賢ちゃん・・・・」
「千太!!」
「うっ・・」
「千太ってば!!」
千太は両手を胸に当てて、急にうずくまってしまった。
「千太!どうしたんだよ!!」
(け、賢ちゃん・・・うぅ・・)
千太は思い出していた。初めて賢次と話したときのことを・・・。
(おいしいね、このコロッケ。どうやったらこんなおいしいコロッケが作れるの?)
(コロッケはね・・歌うんだよ・・)
(千太!俺がジュニアのパイロット、それでお前が炊事班。一緒に707Rに乗れることになったね!)
(うん、僕も賢ちゃんと一緒に707Rに乗れることになって、うれしいよ!)
(千太・・俺、千太になら、なんでも話せるような気がするよ・・・)
(け、賢ちゃん・・・僕なんか・・・)
(ううん、俺分かってるんだぜ!千太はとってもいいヤツだって。友達だろ?)
(ありがとう・・賢ちゃん・・)
訓練学校に入って、生まれて初めてできた友達・・。
千太の目からいつのまにか涙がこぼれていた。
「千太、なにをしている。もう艦に入るぞ」
「レッドさん・・レッドさんの初めての友達ってどういう人でしたか・・」
「千太・・?」
「友達・・いたんですよね・・?」
「いたさ。でもすぐに裏切ったさ」
「裏切った?」
「そうだ。俺が友達だと思っていたやつはみんな裏切ったさ。俺を化け物扱いしてな」
「・・・・・」
「選ばれた人間に友達など必要ない。所詮、同じ能力を持つもの同士しか分かり合えないのだ」
「その人たちは・・本当に友達だったんですか・・」
「どういう意味だ」
「僕には居たんです・・いま分かりました。レッドさんと出会う前から・・分かり合える友達がいたんです・・」
「なにを言っているんだ。一時の感情に惑わされるな。あんなガキはお前の友達にはなれない。いままでの苦しみを忘れたのか?」
「忘れちゃいません・・でも、違うんです・・僕はレッドさんみたいに、世界なんか欲しくない・・ただ本当の友達が欲しいだけなんです!」
そういうと、千太は服を脱ぎ捨て、そのまま海に飛び込んだ。
「ば・・ばかな・・・・死ぬ気か!千太!!」
海に落ちた千太を助けようと、レッドは海に飛び込んだ。
「千太!」
同時に速水も海に飛び込む。
千太は体を強く水面に打ち付け、海水を飲み込んで、窒息しそうになっていた。
そこへレッドが急いでかけよる。
「千太!しっかりしろ!」
レッドは溺れかかった千太を抱き上げた。
「あ・・レッドさん・・・」
千太は朦朧としながら、レッドに答えた。
「なんてバカなことを・・死んだら・・なにもかも終わりだぞ!」
「ごめんなさい・・レッドさん・・やっぱり自分の居場所は自分で探さないとダメだと思うんです・・」
「これからも苦しむことになるんだぞ」
「ええ・・わかってます・・僕の一生のわがままを許してください・・」
「千太・・私は・・・私はお前を放したくない!」
「ありがとう・・・僕の・・もう一人のお父さん・・・」
千太はレッドにニコッと微笑み、そのまま気を失い、ガクッと首を落とした。
(千太・・・・)
そこへ、ようやく速水艦長が泳いできた。
「レッド、千太は大丈夫なのか?」
「気を失っているだけだ。さぁ、連れて行け!」
「・・・千太はさっき、UXに残るといっていたが?」
「私が"そう言わないと殺す"と脅していただけだ。とっとと連れて行け」
そういうと、レッドはゆっくりと千太を速水に渡した。
グッタリとしている千太をみた速水。
「おい、千太、しっかりしろ!」
「・・・・・」
「そっとしておいてやれ・・・その子にはしばらく休息が必要だろう」
「レッド!貴様やはり捕虜を虐待しおったな」
「なんとでもいうがいいさ・・・速水、おまえはとんでもないガキを拾ったな・・お前がうらやましいよ」
「どういう意味だ」
「まぁ分からなければ、それでいいさ・・戦う日を楽しみにしているよ・・」
そういうと、レッドはUXのボートに戻っていった。
速水も千太を連れて、707Rに戻っていく・・。
「レッド提督、ご無事で・・・」
レッドを迎えるクルーたち。
「あぁ、出立するぞ」
「しかし、海野少尉をあのまま渡してしまっていいのですか?」
「なぁに・・・あの子はいつか戻ってくるさ・・」
「ならばいいのですが・・」
「もしそれが叶わないときは・・・」
そういうと、レッドはフッと微笑んだ。
それから丸一日たった。
「ううん・・・」
「千太!?」
「あ・・・・ここは・・・・」
「千太、気分はどう?大丈夫?」
「け、賢ちゃん!?」
「よかった。千太がこのまま死んじゃうじゃないかと本当に心配したんだぜ」
千太は707Rの看護室で手当てを受け、眠っていたようだ。
賢次はずっと付き添っていてくれたのか目が腫れている。
「賢ちゃん・・・ごめん・・」
「なに?」
「だって、UXにいるとき、賢ちゃんのこと助けられなかったでしょ。怒ってないの?」
「怒るも何も・・・俺はちゃんとUXでも食事もできていたし、こうやって生きてるしね!」
「本当だ・・よかった・・」
そういうと、千太はホッとしたのか、また目を閉じた。
「千太、また寝ちゃったのかな・・・」
「ううん、寝てないよ。ただ目を閉じているだけ・・こうして707Rに乗っているとなんだか故郷に帰ってきたみたいで・・」
「そう。じゃ、俺はもうジュニアのところへ行くよ」
そう言うと、賢次はその場から立ち去ろうとした。
「まっ、待って賢ちゃん!」
千太は賢次の腕をギュッと握った。
「どうしたんだよ、千太?」
「その・・・・僕・・・賢ちゃんに話しておきたいことがあるんだ・・」
「今は疲れているだろ、今度でいいよ」
「今じゃなくちゃ、ダメなんだ!」
「千太・・・・・」
「話したいんだよ。僕の過去のこと・・いままで賢ちゃんには話していなかったでしょ」
賢次はハッという顔をする。そして千太の手をさらに強く握った。
「別に無理しなくていいんだよ。千太は千太だぜ。俺はお前が妖怪だって、別に驚きゃしないよ。最もお前みたいなマヌケな妖怪はいないと思うけどね・・ははは」
「け、賢ちゃん・・まさか・・・」
「UXの独房にいるときさ・・看守の人が千太のこと話しているの、いろいろ聞いちゃってさ・・・」
「・・・・・」
「だから、お前はお前だって。千太は俺にとっての一番の友達なのは変わらないんだぜ」
千太はその言葉を聞いて涙が出た。
(賢ちゃん、ありがとう。僕は賢ちゃんがいなかったら・・・本当に一人ぼっちだったかもしれない・・)
「千太? なに?泣いてるの?」
「そ、そんなことないよ。もう疲れたからしばらく一人にしておいてよ!」
「はいはい、じゃ俺はジュニアに戻ってるからね」
「うん・・・」
そういうと賢次は去っていった。
(ありがとう・・賢ちゃん・・)
千太は布団に大粒の涙をこぼしていた。
(レッドさん・・・僕はあなたとは違うみたいです・・。でも、レッドさんのおかげで、僕は自分の居るべき場所がいま分かりました・・)
(さようなら・・もう2度と遭うことは無いかもしれない僕のもう1人お父さん・・・)
そして千太は笑顔でゆっくりと眠りについた。
いちおう、完結です。ここまで読んでくださった方々、ありがとうございました。
この後の顛末・・きちんと書こうかと思ったのですが、あまりに切なくなってきたので、書くのを止めました。
あとは、読者さんの想像におまかせ・・ということで。
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なんていうのも無責任なので、私がどういうことを考えていたか、大筋をを書きます。
読みたい人だけ、マウスでドラッグして下の文章を反転表示してみてください。
どっかで見たことあるようなかなーり陳腐な内容ですけど・・・。
千太は707Rに戻ったあと、ソナー班を辞め、炊事班に戻りますがその顔は冴えません。
USRは全世界に対して降伏を求めます。
そんなとき、UXは707Rに極限まで接近します。
レッドは千太に対し、透視能力を攻撃波長に変えて千太に送りつけます。
しかし、その後千太が目を開けたときには、千太はすべてを失っていました。
なんかエリア88の最後か、カミーユのようになってしまいました・・・・。
賢次という友達がいたこと再確認し、本来ならば笑顔が戻るはずだったのです。
しかし、千太が見たものは、世界がUXの恐怖に怯える現実でした。
たった1ヶ月の間に世界の半数の戦艦はUXによって撃沈され、もはや各国、国連にもまともに戦える戦艦は残っていませんでした。
その元凶を作ってしまったのは千太自身だったのです。
そのことに、千太は1人苦しむことになります。
そして、もうこの能力を2度と使わないことを決意するのです。
それに対し、707RはUXに対して、ついに戦闘を開始します。
しかし、レッドの透視能力は圧倒的な力を見せ、707Rは危機に陥ります。
もはやこれまでと思われた707R。
そんなとき、賢次は千太のところへ向かい、千太にもう一度ソナー班に戻り、能力を使うように説得します。
千太は自分の呪われた能力を使うことを拒絶しますが、賢次は千太の能力は決して人を不幸にするものではないと説得するのです。
賢次の言葉に、千太は自分の能力をもう一度使うことを決意し、UXのすべての攻撃を速水艦長に報告し、体制を立て直します。
千太の能力に速水艦長以下、誰もが驚き、千太から一歩引いてしまいます。
しかし、賢次だけは千太の横で必死に千太を支えます。
賢次が千太にしてあげられることは、千太に声をかけ、励ましてあげることだけでした。
レッドは千太を自分の子供のように愛していましたが、自分に抵抗することを知り、千太の能力を破壊することにしたのです。
それに千太の種はレッドの元にありました。
たとえ千太を壊しても、レッドには自分だけの千太をその種から作ることが可能だったのです。
尋常でない苦しみを見せる千太に、賢次は手を握り励まします。
賢次にだけは、レッドが千太になにかをしていることは分かっていました。
しかし、千太の意識はレッドに飲み込まれていきます。
意識を失いかける千太に、賢次は抱きつき、涙を流します。
千太は、賢次に「ありがとう」という言葉を残して、自分のすべての能力をレッドと同じ波長に変え、レッドにそのまま逆流させます。
千太もレッドが好きでした。
千太にとって、レッドと過ごした1ヶ月は本当に親子同然でした。
しかし、レッドと共に世界を恐怖に陥れた自分は、相応の責任を取らなければならないことは分かっていました。
レッドは自分の攻撃波と千太の攻撃波が加わった波長を脳に受け、そのまま能力が故か、失明します。
レッドを失ったUXは総崩れとなり、UXは敗れ去ります。
賢次の顔すら記憶からなくなりました。もちろん、あの能力も。
賢次は、千太のすべてを速水艦長に話し、千太とともにもう一度訓練学校に戻ることにしました。
そして賢次は、ずっと千太のそばにいてあげようと心に誓うのです。
千太にはあどけない笑顔が戻りました。
これは作った笑顔ではない、本当の笑顔でした。
でも、自分こういうの好きなんで、痛かったらごめんなさい。