そろそろハカイダーの片鱗が見えてきました。ヤバイです。
登場人物
海野千太です。金太郎コスに困惑気味。
速水洋平。707Rの艦長で、千太の憧れの存在でもある。
「まーさかーりかーついで、金太郎〜〜〜」
突然童謡を歌いだした速水に、千太はビクッと反応した。
速水はビール瓶を振りながら、なにやら上機嫌で歌っている。
低音でなかなかの美声だ。
もしかして酔っ払っているのかな?と、千太は内心思った。
「なぁ、千太?」
「は、はい・・」
「金太郎の話は知っとるか?」
速水の質問に、千太は下を向いて自分が着ている赤い前掛けを指差す。
「たしかこんな格好して・・・怪力の子供の話ですよね?」
「そうだ。お前は"金太郎そっくり"のいい体をしとるな」
「そ、そうなんですか・・」
艦長は本物の金太郎を見たことがあるのだろうか?と千太は内心思った。
「しかし、可愛い金太郎じゃのう」
「・・・」
「その前掛けは大人用だから、お前が着るとエプロンみたいになっとるな。はーははっ」
「大人用って・・?」
「実はな、わしが宴会で使う衣装じゃ」
「ええっ!?」
まさか、速水艦長がこんな恥ずかしい衣装を着るなんて。
どうりでサイズが大きいはずだ。
速水艦長が金太郎のコスプレをしている姿を、フッと頭の中で想像してみる。
思わず、「ププッ」と吹き出しそうになる。
「あ〜しがる〜やま〜の〜や〜まおくで〜」
速水の歌声に、再びビクッとする千太。
「なぁ千太? 金太郎は何が得意だか知っておるか?」
「えっと・・・たしか相撲です。熊と相撲して勝ったとか・・」
「では、これから熊と相撲をするとしよう」
「は・・はぁ?」
艦長が何を言おうとしているのか意味が分からず、千太は困惑気味だ。
「あの、でも・・熊といっても・・・」
「ここにおるではないか」
「ここって?」
速水は、はにかんだ顔でウインクをしながら、親指で自分を指している。
「ま、まさか・・・?」
「実はな、わしは潜水艦仲間では、"深海のあばれ熊"と言われとるんじゃ!(なーんてウソじゃ)」
「ええーっ!?」
「その証拠にこれを見てみろ!」
速水は千太の目の前で、着ていた浴衣をバッと脱ぎ捨てる。
先ほどまでの酔っ払いオヤジが、あっという間にフンドシ一枚に変身だ。
(ヒ、ヒェ・・・)
あまりに突然の出来事に、千太は反射的に両手で顔を隠してしまった。
目の前に憧れの速水艦長の裸。
夢ではない本物の体。
それが目の前にあると認識したとき、千太は自然と目を瞑り、両手で顔を隠していたのだ。
「どうした、千太? 人と会話するときは、しっかり人の裸をみんかい!」
(それを言うなら"人の目を見ろ"ですぅ・・)
千太はしっかりと突っ込みを入れながらも、艦長を凝視できないでいた。
「どうじゃ?わしの体は熊みたいじゃろ?」
「そんなことありません・・・」
「さっきから目を瞑っているではないか。お前は男の裸を見るのが恥ずかしいのか?」
そういわれると、千太は恥ずかしさが洪水のように襲ってくる感覚を覚えた。
「図星じゃろう、千太?」
「ち、違いますぅ」
首を振って、速水艦長の言うことを必死に否定する。
千太にとって、大の大人の裸を見ることは恥ずかしかった。
しかし、それ以上に"速水艦長の裸"を見るのが恥ずかしかったのだ。
千太にとって、艦長が憧れの人だったから。
しばらくの間、千太は手で顔を覆っていたが、ゆっくりと指と指の間から艦長をみてみる。
生で見る速水艦長の裸。
──チラッと見える白いフンドシ。
──意外と毛深い胸。
──柔らかそうなお腹。
──ガッチリとした太腿。
体が毛深い以外は、夢で見た艦長の姿と同じだ。
自分のイメージとピッタリ。
もう少しだけ、指の間を広げて艦長の体を見てみる。
──胸と太ももに海の男らしく毛がモサッと生えている。
本当に熊みたいだと、正直に思った。
「さぁ千太。仕切りに入らんか」
千太がボケッとしていると、いつのまにか速水はちゃぶ台を片付けていた。
部屋は畳だけとなり、四隅の壁以外、障害物になるようなものは見当たらない。
押し相撲ぐらいならば、簡単にできそうだ。
「あ、あの・・仕切りって?」
「腰を半分落として、両方の拳を畳につけるんだ」
「えっと・・こうですか?」
千太はぎこちない格好で、中腰になる。
お尻を後ろに突き出す。
そのまま両方の拳を畳の上に置いた。
テレビでお相撲さんの立ちあいは見たことがあったが、
自分でやってみるとなにか不恰好で恥ずかしいポーズだ。
千太は両拳を畳につけて、そのまま顔をあげてみる。
すると、すぐ目の前に艦長の股間。
(うわぁっ)
いつのまに、接近していたのだろうか?
こんもりとした、白いふんどし。
きっと、このふんどしの中に、大きな竿と玉が・・。
千太は"いかんいかん"と首を振って、妄想を振り払おうとする。
しかし、あまりに間近なところで股間を見てしまい、脳裏から離れることがなかった。
ゴクリと唾を飲む。
その音は、艦長にも聞こえるほど大きかった。
「なにを緊張しているんじゃ?」
「い、いえ・・」
千太の生唾の音が聞こえたのか、速水は笑いを押し殺すような口調で話している。
「さぁ、わしの体にぶつかってこんか!」
「でも・・」
「お前は熊さえ倒せる金太郎なんだぞ!」
(だから、自分は金太郎のコスプレしてるだけなんですぅ!)
反論したかったが、そんなことを言っても無意味なことは分かっている。
「早くせんか!」
速水の焦れるような掛け声に、千太は思いきって体をぶつけた。
千太は、速水艦長に向かって突進した。
大きなお腹に、顔からドスンと体当たり。
お腹の反動で、少し戻される。
無理矢理、お腹にギュッと抱きついてみる。
大きな樽を担ぐかのように、両手を艦長の背中に回す。
(あ・・・思っていた感触と同じだ・・・)
千太は、顔を速水のお腹にこすりつけるようにして、感触を確かめた。
筋肉もあるが、それ以上に弾力のある速水艦長のお腹。
ちょっと汗くさい。
でも、こうしていると、久しぶりにお父さんに抱きついたような懐かしい感じがする。
大好きな艦長のお腹の感触に、妙に幸せな気分になる千太。
「どうした?それで精一杯か?」
「は・・はい」
そういえば相撲をしていたんだっけ、と千太は我に返る。
千太は必死に艦長を押してみるが、体はビクともしなかった。
「千太、わしを一歩でも動かしてみんかい!」
「押してます!で、でもっ・・」
「それでも金太郎か!もっと力を入れんか!」
「ハイ・・(だから金太郎じゃないのに・・)」
「わしに勝ったら、金太郎の家来になってやるぞ!」
「そんなのムリですぅ」
千太は、いま自分が持てるあらん限りの力で、速水の体を押し続けた。
「ハァ・・ハァ・・・」
数分も全力で相撲をすれば、自然と息があがる。
千太の顔は紅潮し、疲れからか全身が痙攣しだす。
しかし、相変わらず速水の体は動かない。
「ハハハ。随分と弱い金太郎さんだな」
「ハァハァ・・・もうムリです・・」
これが本物の海の男の力なのだと、千太は格の違いを見せ付けられた。
「こんな弱い金太郎では、熊に負けてしまうぞ」
「そんな・・」
千太は口を尖がらせて反論する。
「では、熊も反撃するとしよう」
「ええっ!?」
速水は、背中にある千太の手首をしっかりと握りしめた。
そのまま力ずくで、千太の両手を背中からお腹の前に移動させる。
(うぐぐっ・・・艦長すごい力だ・・・僕の何倍の力があるんだろう・・)
千太は、速水に両腕を握られたまま、直立して立ち尽くすしかなかった。
「ホラ、どうしたんじゃ?このままでは熊に襲われてしまうぞ」
「襲われるっていっても・・」
腕を動かそうと最後の力を振り絞ってみるが、ビクともしない。
「そろそろ、熊も本気を出すぞい」
速水は強引に、千太の豊満な体を、腕ごとギュッと抱きしめた。
まるで正面から恋人が抱き合うような格好。
「あぎゃ!」
プレス機のように、速水の腕とお腹で、顔と体が潰されてしまった。
(これが速水艦長の体の感触・・・苦しいけど・・・悪い気持ちでもないかな・・)
汗臭い艦長のお腹の匂い。
このまま苦しくても悪くないかなと、千太にしては大胆なことを考える。
しかし次の瞬間、そんな淡い感情は消し飛ばされた。
速水は千太の体をさらにギュッと抱きしめる。
「げほっ!」
背骨が反って折れそうだ。
千太は必死にもがいて、訴えかける。
「く、苦しいですっ!」
「なんじゃ、もうギブアップか?」
速水はそのまま、柔道のように千太の足を引っ掛ける。
そしてヒョイっと千太を畳に押し倒してしまった。
「痛ててて・・」
畳の上に、大の字に倒された千太。
ふと目線を上にあげると、四つん這いで体に乗っかっている速水の姿がある。
視界には速水艦長の顔だけ。
「わーははははっ」
目の前で突然大声で笑いだす速水に、千太は耳を塞ぎたくなる。
「はははっ。千太、この勝負はお前の負けじゃな」
「艦長に相撲で勝てるわけないですぅ」
「あーははははっ!」
「艦長、唾が飛んでますぅ」
「うるさい!昔話では、熊は金太郎に負けて子分になったらしいが・・・。
金太郎が負けた場合は、どうなるか知っとるか?」
「そんなの知りません・・」
一体、速水が何を言おうとしているのか、千太にはさっぱりわからない。
「教えてやろう。金太郎は熊の言いなりになるんじゃ」
「ええっ!?」
そもそも艦長と相撲で勝負して、勝てるわけが無い。
全くもって不条理な発言に、千太は困惑したが、
楽しい罰ゲームでもするのかなと、呑気なことを考えはじめた。
次回サラリと陵辱です。