千太SS(1)


小説仲間のりんとさんに千太キュンのSチックな小説いただきました〜。独特なコンセプトで描かれている世界をお楽しみください。


登場人物

千太キュンです。


錆びた金属の上を水が伝い、滑り、空中に投げ出される。

落下し、着地した先は人肌。瑞々しさを十分に蓄えた、張りの有る肌。
ぴちゃり、と。水の玉が弾けて首筋から胸元へと消えて行った。

「あ…っん…」

前後不覚の中で千太は目覚めた。

「ぐっ…ん…っ…」

猿轡のせいで、声を出そうにも出せない。

「ぎっ…ん…っ…!」

後ろ手に縛られ、思うように身動きも取れない。
薄ら射し込む光で、今の時間を推察する。少なくとも、夕方より前。いや、夜明け頃だろうか。
此処はどこだろう。どこか倉庫に似た何処かだろうか。裸電球の光は弱弱しく、余計不安を掻き立てる。
ゆらゆら揺れる様はまるで地獄に垂れる蜘蛛の糸に見えた。

「よーやく起きたか」

有る程度観察を始めた頃、急に声がした。
声の方向には暗闇。故に誰がそこに居るかは分からない。

「ン…っ…!!!」
「あー…そんな動き回るともっと汚れんぞ?」

地べたに放り出された千太は、それでも必死に動いた。這ってでも逃げようとする。
その度に自慢の白い水兵服は茶色で汚れていった。

「んー…!!!っ!!!」

暗闇からぬーっと出てきた。千太を掴もうと、這う虫の様に気持ち悪さを携え。
逃げる。殺されてしまんじゃないかって恐怖から逃げる。
逃げて、逃げて、どこまでも逃げて。遂に、壁に行き当たった。

「大丈夫だよ、別に痛い目に合わせ様って訳じゃないんだからさ…」

涙で濡れた千太の柔らかい頬を五本の指が這う。

「ね?怖くないから」

震える千太を優しく撫でると、その手は器用に猿轡を外し始めた。

「大丈夫?痛くなかった?」
「………」

口は自由になった。それでも声を出す事が出来ない。
張り詰めたままの緊張。依然拭えない恐怖。

「大丈夫だって。痛い事はしないから」
「…どうして、こんな事を…?」

最初の疑問としては、とても当たり前の事。

「どうして…って…。僕はさ、君の事、ずーっと欲しかったんだよ…」
「え…?そんな事の為に…?」

けれども、やはり聞いてはいけない事だったのかもしれない。
同時に、言ってはいけない事でもあったのかもしれない。

「そんな事って…」
「いっ…たっ!」

乱暴に掴んで、部屋の中央にまで引っ張った。

「僕は…僕は…ずっとキミだけを見てたのにっ!!!!!!!」


次回に続きます。

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