千太一夜物語(1)


賢次×千太のほのぼのエロを書いてみました。


登場人物

海野千太。炊事班でコロッケを作る太めな少年。

水早賢次。ジュニアのパイロットで、千太とは訓練学校からの親友。

(あれ、まだ朝の5時か・・)
寝ぼけ眼の賢次は、枕元に置かれたデジタル時計を見て、そう思った。
「ふぁ〜っ」と大きなあくびをする。
(う〜ん、あと点呼まで1時間あるし・・もう一眠りしようかな・・)
軽く目を擦りながら、ふとんをスッポリと頭までかぶる。
すると、ベッドの下のほうで、かすかな寝言が聞こえてきた。
「・・ムニュ・・・賢ちゃん・・」
(ん・・なんだろう・・?)
不審に思った賢次は、ベッドから顔を出して下をのぞいてみる。


賢次、五郎、千太の見習い3人組は、同じ部屋の3段ベッドで寝食を共にしていた。
賢次たちにとって、この3段ベッドは窮屈以外の何物でもなかったが、
 見習いたちには、この程度の居住スペースで十分だという艦長の判断なのだろう。
一番下に千太、真ん中に五郎、最上段に賢次。
初めは、誰がベッドの一番上になるのか、3人でかなりもめた。
3段ベッドの場合、上のほうがなんとなく気分がいい。
下のベッドだと、上の人間が昇降するたびに、ギーッとハシゴの軋む音がしてうるさいからだ。
<最初はグー。ジャンケンポン!>
結局、壮絶なジャンゲンを制したのは賢次だった。
もし千太が勝っていたら、ハシゴを昇るたびに、体重でハシゴが毎日悲鳴をあげていただろう。
そういう意味では、千太が一番下なのは、落ち着いた配置かもしれない。


賢次がベッドの外に顔だけ出していると、なにやら寝言のようなものが聞こえる。
「ふうっ・・はむっ・・・」
(なんだいまの? 千太の声?)
まだ変声期を迎えて間もないような、甲高い声。
五郎は低音で落ち着いた声だから、明らかに千太の声だ。
(ったく・・アイツ、また変な夢見ているのかな・・)
賢次は再び「ふぁ〜っ」と大きなあくびをかいた。
(まぁいいや・・もう一時間寝ようっと・・・)
ふとんを頭までスッポリとかぶる。


「ムニュムニュ・・」
(また千太か・・? なんか気になるな・・)
「ふあっ」
(な、な、なんだ・・?)
──まさか、いまのは千太の喘ぎ声?
普段の千太の声よりも、1オクターブは高かっただろうか。
賢次の記憶でも、こんな千太の声は、いままで聞いたことがない。
しばらく布団をかぶっていた賢次だが、先ほどの声が気になって仕方がない。
(千太のヤツ、どういう夢見ているんだ?)
もう一度、ふとんから頭を出して、階下を見てみる。
「ムニュー・・・はむ・・」
相変わらず、千太の寝言は続いているようだ。
(ちょっとだけ、様子をみてみようかな・・・)
賢次は、そのまま暖かい布団から出る。
そして、音を立てないように、そーっとハシゴを降りていった。


賢次はハシゴが軋む音がしないように、ゆっくりと慎重に床まで降りた。
──千太のベッド。
3段ベッドの一番下で、天井が低い。
立ち上がろうすれば、頭をぶつけてしまうだろう。
千太のベッドは、水色のカーテンでしっかりと閉じられていた。
カーテンは、潜水艦で唯一プライベートな空間を作ることができる魔法のアイテム。
とはいっても、鍵がかけられるわけではない。
誰かが故意に開けてしまえばそれまでだが、水色のカーテンは勝手に開かないのがルールだ。
潜水艦は、男同士が狭い中に居住する空間だ。
航海が始まって一週間くらいは、ある程度の節度というものがあるのだが、
 だんだんと男だらけの空間に慣れてしまうのか、みな平然と裸になってベッドの周辺を歩き回ったりする。
ちなみに、裸で歩き回ることは艦内規則で禁止されているのだが、黙認されている状態だ。
男の裸を見たところで、みな違和感も感じなくなっていた。


しかし、賢次と千太は違った。
とにかく恥ずかしいのだ。
裸をみせるということが。
だから、航海が始まってもう1ヵ月が経つというのに、カーテンを閉めて寝ているのは、千太と賢次くらいだった。
ちなみに、五郎はキザのようでいて、意外と裸に抵抗はないらしい。
最近はカーテンもせずに、ガーガーと平然と眠っている。
だが、千太はプライベートに関しては過剰なくらい敏感であり、寝るとき以外でもカーテンを閉めている。
果たして、千太は中でなにをしているのか?
それは誰も知らないことだった。
他の乗組員たちは、千太がカーテンの中でエッチなことをしているのではないかと、
 噂をしてからかってはいたが、実のところはよく分からない。
賢次も千太のプライベートな空間を見てみたいとは思っていたが、その大切な空間を壊すことは失礼だ。
個人の大切な空間を奪う権利など、誰にもないのだから。


「はむ・・んあ・・」
カーテンの奥から聞こえる千太の寝言。
一体、カーテンの中で、千太はどういう格好をしているのか?
(たしか、千太って白いパジャマを着ていたような・・)
航海の初めのころ、千太はよく寝る前にパジャマ姿で、重い体を揺らしてベッドのハシゴを昇ってきていた。
太った体で、高いハシゴを昇るのは一苦労のようだったが、
 千太はベッドの上で、今日あった出来事を笑いながら話すのが大好きだった。
<今日は僕の作ったコロッケを、鈴木さんがおいしいって言ってくれたんだ>
<コロッケを作りすぎて、後藤さんに怒られちゃった・・>
まるで、訓練学校時代を思い起こさせるような空間・・・それがベッドの上だったのだ。
千太はジャンケンに負けたあとも、
 『やっぱり一番下は嫌だから、賢ちゃんのベッドと交替して』と笑顔を交えて話していた。
最上段を取られたのがそんなに悔しいのかなと賢次は思ったが、千太なりの精一杯の皮肉だったらしい。
最近はUXとの戦闘もあり、千太は疲弊してしまったのか、
 部屋につくなり、カーテンを閉めて寝てしまうことが多かった。


(ちょっとだけなら、いいよね・・)
賢次は、水色のカーテンにそっと手をかける。
そのままカーテンのレースの音がしないように、1cmずつゆっくりとカーテンをまくっていく。
徐々にあらわになる千太の寝姿。
なぜか心臓がドキドキする。
千太はパジャマを着て、ただ眠っているだけのはずなのに。
ずっと密閉されていた千太だけの空間を垣間見ることに、賢次は興味があったのだ。


ジィィィ・・。
静かな部屋に僅かに響く、金属がこすれるような音。
賢次は、慎重にカーテンを半分くらいまで開いてみる。
(千太のヤツ、どんな寝相してるんだろ?)
賢次はニンマリと笑うと、そっと中を覗いてみる。
(ん・・千太・・!?)
そこにはパジャマを着た千太の姿がある・・はずだったのだが、どうも様子が違う。
(そんな格好で寝てるのかよ・・)
賢次は思わず唾をゴクリと飲み込んだ。


ネタがありふれすぎですが・・。

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