金太×結花。くっつかず、離れもせずw
登場人物
白金太郎。愛称「金太」。結花をデートに誘ってみたが・・?
水原結花。金太に好意を持っているようだ。
峰崎拳一。金太のクラスメートで、ゴウザウラーの元メインパイロット。快活な少年。
──春風山の湖畔。
金太と結花は、1時間ほどかけて、この場所にやってきた。
春風山といっても、富士山のような勾配を登るわけではない。
小高い丘になっているハイキングコースで、ここから春風町を一望できる。
人もあまり通らない、いわゆる隠れたデートスポットなのだ。
ここに来る人間は、ほとんどが恋人同士だ。
金太は、実はこの場所を提案することを、かなり躊躇していたのだ。
この場所に2人で来るということが、何を意味するのか。
それは、結花にも当然分かっているはずだ。
「うわぁー! 町があんなに小さく見えるよ。金太くんも見てみて〜っ」
しかし、1人ではしゃぐ結花の姿を見ていると、結花には"恋人"という意識はないように見える。
金太にとって、女の子の気持ちは謎そのものだ。
どうやって、会話すればよいのか・・。
何を話せば、笑ってもらえるのか・・。
手をつないでも、嫌われないのか・・。
──でも、金太が一番知りたいことは
"結花は自分のことをどう思っているのか?"
これに尽きるのだ。
(この場所に来ることをOKしたってことは、ひょっとして結花も俺のことを・・・。
でも、途中で手を握って歩くこともしなかったし、相変わらず、たいして会話も弾まなかったしなぁ・・・。
あ〜、結花の気持ちが全然わかんねーよ・・)
金太は腕を組みながら、「ウーム」と悩む。
「ねぇ、金太くん?」
「・・・」
「金太くんってば!」
「あ・・あぁ、結花?」
「どうしたの?ボケッとして?」
「いやその・・・な、なんでもないよ」
「変な金太くん。あっちの湖でお昼食べようよ」
「そ、そうだな。食べるとするか」
「良かった。ねぇ、早く行こうよ!」
そういうと、結花は金太の腕をギュッと掴む。
(ひぃえええ!)
その行為に、金太は全身が硬直するのを感じた。
汗が滴り落ちる。
しかし、結花はそんなことはおかまいなしだ。
(ゆ、結花、ダメだ・・・俺、女の子に触られると、どうにかなっちまう・・)
自分が女の子に対してアレルギーがあることを、結花は忘れているのか。
天真爛漫な少女は、そのまま強引に金太を引っ張って、湖の畔へと駆け始めた。
←すげーラフですけど、ちょっと雰囲気で描いてみましたw
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「ふぅ・・・」
金太は湖畔に座って、びっしょり掻いた額の汗を拭っていた。
結花に握られた左腕に、まだ温もりを感じる。
(いきなり俺と腕を組んだりして、一体どういうつもりなんだよ・・・)
全く結花の気持ちを理解できない金太。
うれしいやら、恥ずかしいやら。
(でも、腕を握られたってことは、ちょっと進展した・・・のかな?)
金太は1人で頬を赤く染めながら、鼻の下を伸ばしていた。
「金太くん。ハイ、これ」
小綺麗な長方形に整えられたサンドイッチ。
一つ一つのサンドイッチは、中身の色が違う。
それだけで、結花が自分のために一生懸命作ってくれたことは、容易に想像できた。
「結花・・・いつもありがとな」
「うん。食べてみて」
「でもさ、これ作るのは大変だったろ?」
「結花が勝手に作ったんだもん。気にすることないよ」
「そ、それならいいんだけど・・・」
もうちょっと気の利いたことが言えると、さぞ会話も弾むのだろうが。
そういう不器用なところが金太らしい。
金太は結花と並んで、サンドイッチを頬張る。
(おいしいなぁ・・結花の手作りだもんな・・)
食べながら、チラッと結花の方を見る。
結花は、金太のサンドイッチよりも小さめのサイズのものを、食べているようだった。
どうやら、金太のものとは、大きさを変えて作っているらしい。
金太なら、一口でペロッと食べてしまうサンドイッチも、
結花にとっては、自分の口のサイズには合わないのだろう。
(結花・・。今日こそ、俺の気持ち・・言っちまおうかな・・・いや、やっぱりダメだ。そんなことできねぇ・・)
結花の横顔を見ながら、金太は1人であれこれと悩む。
(結花がせっかくおいしいサンドイッチを作ってくれたんだ。まずはこの場をなんとか盛り上げなきゃ!)
金太は、懸命に話題を探す。
ふと周りを見渡すと、高い木々が茂り、湖畔に日陰を作っている。
「き、綺麗な湖だよな・・(って何言ってるんだ、俺!)」
「うん」
「少し曇ってきたけど、大丈夫かな・・?(ってそんなこと気にしてどうする!)」
「結花は傘持ってきたから、大丈夫だよ」
「そ、そうか・・・」
そこでプツリと途切れる会話。
話題の振り方がまずかったかなと、金太はすぐに下を向いて落ち込む。
(あー、どうして俺って、こう女の子とうまく話ができないんだっ)
自分自身に苛立ちを感じてしまう。
フウッと息をついた金太は、とあることに気がついた。
「あ、そうそう・・結花」
「なぁに、金太くん?」
「これ、持ってきたぜ」
そういうと、金太はポケットの中から小型のトランシーバを取り出す。
「うん。結花も持ってきたよ。なんかこれがあると、まだ私たちはザウラーズって感じがするよね」
ニコッと金太に微笑みかける結花。
2人で、ポケットからトランシーバを取り出す。
──最新式のトランシーバ。
俺たちザウラーズは解散したあと、なにか手持ちぶたさを感じていた。
簡単にいえば、なにか寂しかったんだ。
もろちん、ゴウザウラーがいなくなってしまったのが、直接の原因なんだけど・・。
別の要因に気がついたのは、拳一だった。
突然、アイツが夜に電話かけてきやがった。
「金太、分かったぜ!」
「拳一・・・こんな夜遅くに電話してくんなよ・・・それでなにが分かったんだ?」
「ザウラーブレスだよ!ザウラーブレス!」
「へっ?」
「俺たち、ブレスでいつでも連絡取り合っていただろ?」
「それはそうだけど・・」
「あれがないから違和感を感じるんだよ。何か俺たちを1つに結ぶものを買おうぜ!」
「あのな・・・」
そのときは、いつもの拳一のたわ言だと思っていたのだが・・・。
次の日、防衛隊の武田長官から、いきなり最新式のトランシーバが家に届けられた。
どうやら拳一が、口八丁手八丁で、武田長官をうまく丸め込んだらしい。
そんなこんなで、元ザウラーズ全員に、この最新トランシーバが行き届いたってわけだ。
それにしても、このトランシーバはけっこう優秀で、半径1kmくらいならば相手を指定して自由に会話できる。
さらに、本当に相手と話しているかのように、音もかなりリアルに出力される。
こんな高価なもの、もらっちゃっていいのかよ・・。
「ここから、クーコに連絡できるかなぁ?」
結花はなにやらトランシーバをいじり始めた。
「ゆ、結花!それはいま使っちゃダメだ!」
「金太くん、どうして?」
「だって、あの・・その・・・(2人でここにいるのがバレちゃう)」
「えっ?」
金太はしどろもどろになりながら、必死になにか理由を考える。
「と、ともかく、いまはハイキングを楽しもうぜ。それにここからじゃ届かないよ!」
「うん。金太くんがそう言うなら、あとにしようかな」
そういうと、結花はトランシーバをポケットにしまった。
(ふぅ・・危ない・・危ない・・)
とりあえず、クーコに連絡することは避けられたようだ。
サンドイッチを食べ終わった後、金太はゴロンと寝転がった。
ふと横をみると、結花は湖の近くまでいって、なにやら水遊びをしているようだ。
(平和だなぁ・・)
金太はそよ風を感じながら、結花と一緒にいられるこの瞬間を幸せに感じていた。
つい一週間前までは、地球は戦いの火の海だったというのに。
平和なときは、そのありがたみを感じないもんだな・・と金太は思った。
それから少し時間が経っただろうか・・。
金太は、心地よい開放感にウトウトと眠り始めていた。
そのときだった。
「きゃあああ! 金太くんっ!!」
「なっ・・!」
いままで聞いたことがない、結花の大きな悲鳴。
一体なにが起こった・・・?
金太は、すぐさま飛び起きると、結花の声がした方向へと全速力で駆け走る。
結花の尋常ではない叫びに、背筋が寒くなるような嫌な予感がする。
「結花っ!」
金太が懸命に走ったその先は・・・。
信じられない光景が広がっていた。
なんか物語の動き方が変かも<俺