いつも通り、俺の痛いテイストに入ってきました・・・。
登場人物
白金太郎。愛称「金太」。結花を思い切ってデートに誘ってみたが・・。
水原結花。金太のことを気にかけているようだが・・。ザウラーズでは泣き虫トリオの一人。
電気王。機械化帝国四天王の1人。力こそすべてと考える実力主義者。
金太が必死に走った先には、信じられない光景が広がっていた。
「うっ・・うっ・・・金太・・くん・・」
「結花っ!」
結花は、大きな人型の機械に片手で抱えられていた。
恐怖のあまり、声がでない結花。
しかし、それは金太も同じだった。
「お、お前は・・・」
『ハハハ。久しぶりだな』
血のかけらもない感じない冷徹な声。
数ヶ月前に激闘を繰り広げた声の主に、金太は震え、恐怖した。
「ウ、ウソだ・・。お前が生きているはずがない・・・」
『フフフ。私は幽霊ではないぞ。もっとも、機械に幽霊などありはしないが』
「電気王・・・!」
目の前にいるのは、間違いなく電気王。
電球のような胴体に、薄気味悪く光る目、そして黒いマント。
中世の騎士を彷彿とさせるような、力強い井手達。
"力こそがすべて"という信念を持つ鋼鉄の魔人。
ザウラーズが一丸となって、この強敵を倒したはずなのに・・。
いや、そもそも機械神が滅んだ時点で、機械化帝国はすべて消滅したはずだ。
『随分と探したぞ。マグナザウラーのパイロット。いや白金太郎!』
「な、なに・・・」
『こうして直接話をするのは、北極以来だな』
「どうしてお前がここにいるのか知らないけど、結花を放せ!」
『ほう、この人間は貴様にとって大事なものなのか?』
「そ、そうだ・・・結花は・・結花は俺の"大切な仲間"だ」
『大切な仲間か・・。では、こんなことをしたらどうする?』
そういうと、電気王は抱えている結花をギュッと締め上げる。
「きゃああああ! 金太くん!!」
小動物のように、簡単につぶれそうな結花の体。
結花から漏れる悲鳴に、金太は全身から怒気を発した。
←それらしい場面があったので、つなげてみました。
「て、てめー!!ふざけんなぁぁ!」
金太は電気王に向かって、殴りかかる。
『フフフ。愚かな・・・』
拳を握り締めて立ち向かう金太に対し、電気王は片手をあげる。
そして、腕からバチバチと電気の火花を散らした。
『バカめ!』
電気王は、稲妻のように光る電撃を放射する。
その電気の帯は、正確に金太の胸の中心を貫いた。
「うぎゃああああっ!」
金太は、あっという間に数メートル吹っ飛ばされる。
「金太くん!!」
「あがっ・・うぐっ・・」
地面に叩きつけられる金太。
全身に痺れが回る。
痛いとか、そういうレベルではない。
痛さを通り越して、動けない。
以前、北極で電気王と戦ったときの激痛を、金太はこのとき思い出した。
「この痛さ・・・間違いない、本物の電気王・・」
金太は必死に体を動かして、立ち上がろうとする。
『どうした?もう終わりか?』
「クソッ、動け・・俺の体・・」
『ハーハハッ、このまま終わってはおもしろくないぞ。ん・・・こ、これは・・?』
電気王はなにやら、独り言をブツブツと言っている。
『なるほど・・・。白金太郎、貴様は少しだけ運がいいようだ』
「な、なに・・?」
『生きる時間が少しだけ延びたのだ。仲間を返して欲しければ、私についてくるがいい』
「どういうことだ・・?」
そういうと、電気王は結花を抱えたまま、フワッと浮かび上がる。
そして、猛スピードで空を飛んでいった。
──電気王。
機械化帝国の四天王の1人。
「力こそがすべて」という頑なな信念を持つ、実力主義者。
プライドも高く、卑怯な手はあまり使わない。
騎士のような井手達から、正々堂々とした威厳に満ちている。
だが、その残虐ぶりは、戦った金太が一番良く知っていた。
人間を"虫ケラ"と常に笑い、弱きものと見下している。
それが電気王・・。
デスボルトというロボットに乗り込み、ゴウザウラーを苦しめた。
電気王は、最後にデスボルト自体と融合したが、ゴウザウラーとの戦いで死んだはずだった。
たしか一度復活したが、あの電気王は機械神が作り出した別物だろう。
目の前に現れたのは、北極であった最初の電気王なのではないかと、金太は感じていた。
・
・
いつのまにか、空には暗雲が立ち込め、ポツポツと雨が降り出していた。
(ハァハァ・・・結花・・・)
金太は急いで、電気王の後を追っていた。
(ちくしょう、どうして・・どうしてこんなことに・・)
3日間も待ち続けた楽しいピクニックは、一瞬して悪夢に変わったのだ。
金太の顔はグシャグシャに濡れていた。
これは雨なのだろうか、それとも金太が流した涙なのだろうか。
(一体何が起こったんだ・・・機械化帝国は滅びたんじゃないのか・・。
早くしないと結花が、殺されちまうかもしれねぇ・・)
突然の出来事に、金太は混乱しながらも、出来る限りの状況を考えた。
──どうして、電気王が蘇ったのか?
──まさか、機械神が生きていたのか・・?
──俺の前に現れた理由は・・?
(ダメだ・・・いくら考えても分からねぇ・・)
頭を抱える金太。
突然起こった出来事を、すぐに整理しろというのがムリな話だろう。
金太は走りながら、トランシーバのスイッチを入れてみる。
そして、大声で叫ぶ。
「おい、拳一、拳一!」
「〜〜〜〜〜〜〜」
「拳一! 電気王が蘇ったんだ! 聞こえないのか!!」
「〜〜〜〜〜〜〜」
「ダメだ・・・ここからじゃ遠いのか・・雨のせいなのか・・・肝心なときに役に立たないじゃないか!」
金太は地団駄を踏んで悔しがったが、いまから春風町に戻って、みんなに知らせる余裕はない。
早くしないと結花が、殺されてしまうかもしれない。
(結花・・・頼む、俺が行くまで生きていてくれ!)
しばらく走り続けると、工場のような建物が見えた。
金太の記憶では、ここは自動車部品かなにかの工場だったはずだ。
現在は使われていない。
(あそこに入ったのか・・?)
金太はハァハァと息を切らせながら、ようやく建物の入り口の前に立った。
大きなシャッターが、あんぐりと口を開いている。
中は薄暗くて、どうなっているのか分からない。
(この中で、俺を待ち構えているのか・・・)
金太はブルッと武者震いをする。
心臓がドクンドクンと脈打ち、自分にも聴こえるほどだ。
この中に入ったが最後、自分は生きて戻れないかもしれない・・。
(クソッ、俺も男だ。こんなところでビクついちゃいられねぇ!)
まるで棺おけの蓋のような入り口に、金太は一歩足を踏み入れる。
そして、ゆっくりと工場の中に歩を進めていった。
「電気王! どこだ! 姿を見せろ!」
暗闇の中に響く、金太の勇敢な叫び声。
金太は、細心の注意を払って、キョロキョロと周りを見渡す。
すると、突然シャッターがゴォーっと唸りをあげて閉まっていく。
(ちくしょう、もう逃げ場はないってことか・・・)
シャッターが完全に閉まると、窓からの薄暗い光が差し込むだけとなった。
不気味な静寂だけが、辺りを支配する。
金太はその恐怖にいたたまれなくなり、声を大にして叫んだ。
「出てこい電気王! 早く結花を返せ!」
金太の声が、建物の中で反射してエコーのように響き渡る。
『フフフッ。威勢だけはいいようだな』
「どこだ!?」
『ハーハハッ』
笑い声がこだまする中、バチバチと稲妻のような光があちこちに放電される。
工場の天井にある照明が点灯し、中が明るくなった。
金太は明るくなった工場の中を見渡す。
工場の中は意外と広い。
周囲はベルトコンベアで、ぐるりと囲まれている。
フォークリフトのような乗り物や、大きなノキゴリやプレス機などいろいろな機械が散乱している。
(ひぇ・・こりゃ機械の巣窟だぜ・・・)
金太が周囲を見渡していると、正面に動く影が見えた。
「電気王か!」
影はその姿を、やがて電気王に変えていく。
正面から堂々と現れた電気王は、薄気味悪い笑みを浮かべているように見えた。
「てめぇ、結花を返せ!」
『フフフッ。真っ暗では貴様が不利だろう。少しは感謝しろ』
「バカにしやがって・・。結花はどこだ!」
『貴様のすぐ横にいるぞ』
「えっ!?」
金太が振り向くと、ベルトコンベアの上に結花が気を失って倒れている。
「結花は無事なんだろうな!」
『いまは生きている。まぁどちらにしろ、あとで始末するがな』
「な、なんだって・・!」
電気王の言葉に、金太は背筋が凍った。
(電気王は冗談なんか言うヤツじゃない・・・俺たちを始末するって・・・まさか・・)
え、展開が唐突すぎます?