電気王が金太の前に現れた目的とは? 今回の小説は暴力表現多いです。ダメな方はご遠慮ください。
登場人物
白金太郎。愛称「金太」。
水原結花。金太のことを気にかけているようだが・・。
電気王。機械化帝国四天王の1人。力こそすべてと考える実力主義者。
デスボルト。電気王が操る巨大ロボットだったが、ゴウザウラーとマグナザウラーによって破壊された。
電気王は、重そうな足取りで、ゆっくり金太に近づいた。
目に火花のような閃光が、時折ビリビリッと走るのが不気味だ。
電気王は金太と数メートルの距離を取り、立ち止まる。
『白金太郎、貴様を地獄に送る前に、聞きたいことがある』
「俺も、お前に聞きたいことがあるぜ・・」
『ほう・・では貴様の質問から先に聞こうではないか』
意外と素直な返答に対し、金太は額に汗を垂らしながら尋ねた。
「どうしてお前は蘇ったんだ?」
『さぁな。私にも分からん。デスボルトとの融合が解けた後、奇跡的に一命は取り留めたらしい』
「機械神はどうした?」
『フン。機械神など、私の知るところではないわ』
「お前は知らないようだから教えてやる。機械神は俺たちが倒したんだ!」
『ほう・・・そうだとは推測していたぞ。火星や金星が元に戻っていたからな。
ゴウザウラーに・・・いや、"人間の心の強さ"に倒されたのか?』
「そうだ。もう機械化帝国は滅びたんだ。そんな世界で、お前は一体何をしようというんだ?」
『ハーハハハッ。私だけが生き延びたことが、何を意味するか分かるか?』
「そ、そんなこと、知るもんか!」
『私が機械神に変わって、全宇宙を鋼鉄の秩序で制圧するのだ。これからは私が宇宙の支配者となるのだ。フハハハ!』
「何をバカなことを・・」
機械化帝国を、もう一度復活させようという電気王の答えに、金太は困惑した。
金太は背中に汗をびっしょり掻きながら、さらに質問する。
「まだ、聞きたいことかある・・」
『なんだ?』
「どうして俺の名前を知っているんだ? なぜ俺の前に現れたんだ?」
『フハハ。そんなことが知りたいか』
「悪いか!」
『教えてやろう。貴様とマグナザウラーに借りを返すためだ』
「な、なんだって・・」
『私の支配者としての第一歩は、貴様らザウラーズを根絶やしにすることから始まるのだ。
私からすべてを奪った、憎きザウラーズをな。
お前も含めて、1人1人確実に葬ってやる。
ちなみにザウラーズのデータは、すべて私の頭にインプットされているぞ。
峰崎拳一、ゴウザウラーのメインパイロット。身長144cm、体重は38キロ。
白金太郎、マグナザウラーのパイロット。身長は150cm、体重 44キロ。
全員の細かいデータを言ってやろうか?』
電気王の言葉を聞きながら、冷や汗を流す金太。
「・・・宇宙の支配者になるってわりには、随分小さなことにこだわってるじゃないか」
『ハハハッ。その通りだ。小さなことかもしれん。だが、私はこだわっているのだ。
私を死地に追い込んだザウラーズだけは、1人残らずじっくり殺してやるわ』
「くっ・・・」
あまりに衝撃的な事実に、金太は動揺を隠せない。
電気王は、不気味な笑みを浮かべながら、金太に話を続ける。
『しかし、私の野望を打ち砕いた一番の元凶は・・・』
「えっ・・」
そういうと、電気王は金太を指差した。
『貴様だ!!』
「なに!?」
『貴様とマグナザウラーだ。
いま考えてみれば、貴様がいなければ、私は北極でゴウザウラーに勝利していた。
それを邪魔しおって・・・貴様が操るマグナザウラーに私の機械化獣はすべて倒されたのだぞ。
まず初めに葬る相手は、マグナザウラーと、それを操るお前、つまり白金太郎と決めたのだ』
「俺と・・・マグナザウラーだと!?」
『そうだ。では今度は私から質問をさせてもらおう。
マグナザウラーはどこにいる? 私はデスボルトなしでも、勝ってみせるぞ』
マグナザウラーのことを聞かれると、金太は目線を落とし、声が小さくなった。
「マグナザウラーは・・・」
『どこにいる?早く呼んでもらおうか』
「マグナザウラーも、ゴウザウラーも、もうこの世界にいない・・」
『・・・なるほど・・・噂は本当だったか』
「知っていたのか!?」
『まぁな。マグナザウラーが、もはやこの世界に存在しないというのならば・・』
「・・・!?」
『すべての責任を貴様に取ってもらおう。
私が過去に失ったものを清算させてもらうぞ。たっぷり苦しみながら死ぬがいい』
「な、なんだって・・!」
金太は電気王の言葉に、足がすくんだ。
いままで機械化帝国と戦ってこられたのは、すべてマグナザウラーの力があってこそだ。
(生身で戦えるわけねぇ・・・こんな化け物相手に・・・)
焦りの表情を隠しきれない金太に対し、電気王は無表情のまま話しかける。
『どうした? 顔色が悪いぞ』
「だ、黙れ!」
『実はな、初めからマグナザウラーと戦えなくてもよかったのだ。
私は知りたい・・・人間ごときに虫けらに、私が負けた理由を。
お前は言ったな。"人間の心の力"が機械神を倒したと。
私は、"人間の心の力"がなにかを知りたいのだ。
もし、本当にそんな力が存在するならば、いまここで、貴様が私を倒して証明してみせろ!』
「なにを・・!」
『私は決して人間に負けたのではないと信じている。エルドランのロボットに負けたのだ。
人間など、力もない下等な生物ではないか・・』
「だ、黙って聞いてりゃいい気になりやがって! 人間をバカにすんな!」
そのまま、金太は電気王に正面から、拳を振りかざして突っ込んでいく。
「うおおおーーーっ!」
金太は雄たけびとともに、電気王に殴りかかる。
『バカめ!』
電気王は、拳を振りかざして接近する金太の顔面を、腕で払うかのように殴りつけた。
同時に、電気王は腕からバチバチとした金色の稲妻を、金太に直撃させる。
←それっぽい場面があったので入れてみましたw 自分で描け?
「ぎゃああああ!」
あっという間に、金太は後方に数メートル吹っ飛ばされた。
「うぐっ・・痛てぇ」
『フン。所詮はこんなものか』
「うるさい! まだまだこれからだ!」
そういうと、金太は憤然として立ち上がる。
「とりゃーーーーっ!」
そのまま気合を入れて、電気王に肩から体当たりをする。
柔道をするかのように、電気王の体に組み付いた。
『ほう、やるな。これが心の力か?』
金太は、そのまま得意の柔道で電気王の体制を崩そうとする。
『バカめ! これっぽっちの力で、私を倒せるものか!』
電気王は、不気味な笑みを浮かべながら、金太の太い首根っこを引っつかんだ。
そのままグイッと金太の頚動脈も締め上げながら、片手で高々と持ち上げる。
金太の足は、地面から数十センチ浮き上がってしまった。
「うぐっ・・苦しい・・・放せ!」
『なぶり殺しにしてやる!』
電気王は、金太の無防備な腹に、強烈なボディブローを叩き込んだ。
「ぐはっ!」
たった一撃のパンチで、金太の目は瞳孔が開き、焦点が合わなくなる。
そのまま金太の腹に、立て続けに数発のパンチをぶち込む電気王。
「がはっ・・あう・・・」
電気王に数発のパンチを食らっただけで、金太は全身に激痛が走り、嘔吐しそうになった。
口をあけて、必死に呼吸しようとする。
目の前が真っ暗になり、意識が遠のいていく。
電気王に首を握られたまま、金太はグッタリとなる。
『なんだ、もう終わりか?』
そういうと、電気王は片手にメラメラとした電撃の閃光を宿す。
そして、金太の胸の中心に手を当て、稲妻のような電撃を一気に放射した。
「うぎゃああああ!」
金太は、電気の帯に包まれながら、放物線を描くように後ろに何メールか吹っ飛ばされる。
ガシャン!と物凄い音を立てて、金太はベルトコンベアに背中を叩きつけらた。
「ぐはっ!」
そのままガックリとうなだれる。
「ハァハァ・・・うぐっ・・がはっ・・・」
金太は何度もゲホゲホと咳き込みながら、必死に痛みに耐えた。
そして、激痛の走る体に鞭打ち、必死に地べたを這いつくばる。
無我夢中で、ベルトコンベアの裏側に隠れた。
(なんだ、この力の差は・・・電気王の前では、俺はこんなにも無力なのか・・)
金太は、気を失いそうになりながら、背中をベルトコンベアにもたれかけ、激痛に耐えていた。
骨がバラバラになりそうな全身の痛み。
(くそっ・・あばらが2,3本逝っちまった・・・。
このままじゃ殺されちまう・・・は、早く逃げなくちゃ・・・)
つい先ほどまでは、根性があれば電気王に立ち向かえると思っていた金太。
しかし、たった一度の攻防で、自分と電気王の圧倒的な力の差を感じ取った。
そして、"死"という暗い現実が、じわじわと金太の心を覆いはじめていた。
足がブルブルと震える。
電撃に貫かれた胸を、片手でギュッと押さえる。
(ううっ・・胸が苦しい・・。一体、どうすりゃいいんだ・・・)
金太はいまさら、後悔した。
この工場の中に入ったことを。
脱出することもできない死地に、自ら踏み込んでしまったことを。
かなり痛いシチュになってきました・・。