ゴウザウラーって意外と終盤は話が重いので、こんなのもアリなのかなぁ・・・と自己満小説になってきました。
登場人物
白金太郎。愛称「金太」。
水原結花。金太のことを気にかけているようだが・・。
電気王。機械化帝国四天王の1人。力こそすべてと考える実力主義者。
エルドラン。地球を守る謎の戦士。金太にマグナザウラーに授けた。
マグナザウラー。金太が6400万年前から持ち帰ったロボット。金太の愛機。
金太は、マグナザウラーに近づき、頬に涙を流す。
<男は人前では涙をみせない>
それが金太の信条だったが、もはや感情をコントロールする術はなかった。
マグナザウラーの機体にそっと触ってみる。
頬を擦り寄せてみる。
マグナザウラーの機体は決して暖かくはなかったが、金太は何度も何度も、頬をすり寄せる。
「うっ・・うっ・・ずっと会いたかったよ・・マグナザウラー・・・」
<私も会いたかったぞ>
低音で勇ましい男の声。
「ええっ!? マグナザウラー、言葉が喋れるようになったの!?」
<あぁ。そうだ>
マグナザウラーと初めて会話ができて、金太は涙が出るほどうれしかった。
金太は上方を向いて、マグナザウラーの顔を見つめる。
そして真剣な顔つきで、話しかける。
「お願いだ! もう一度、俺に力を貸してくれ。俺と一緒に戦ってくれ!
このままじゃ、俺は電気王に殺されちまう! 頼むよ!」
金太はギュッと拳を握り締め、マグナザウラーに懇願する。
<・・・・>
「ど、どうして黙ってるんだ・・」
<お前は、本当にすべての力を出し切ったのか?>
「えっ・・?」
<お前の"心の力"は、それっぽっちのものなのか?>
「な、なに言ってるんだよ・・・相手は機械化帝国なんだぞ!
人間が機械化帝国に素手で勝てるわけないじゃないかっ。またお前の力が必要なんだよ!」
<・・・・>
「マグナザウラー、どうして何も答えてくれないんだ!」
しばらく沈黙していたマグナザウラー。
すると突然、マグナザウラーは空高くに飛び上がった。
「な、なんだ!?」
上空へと飛び上がったマグナザウラーは、金太の元から離れていく。
「おい、待ってくれ! マグナザウラー! 頼む、待ってくれよ!」
金太は必死にマグナザウラーを追いかけていった。
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「行かないでくれ! マグナザウラーーーッ!!」
金太は大声を張り上げていた。
『フハハハ。なにか悪い夢でも見ていたのか、白金太郎?』
そこには、地面を這いつくばる金太の背中を、踏みつける電気王の姿。
突然、現実に戻された金太は、混乱した。
電気王は、金太の背中を踏み続ける。
「うぐっ!」
金太は意識を朦朧とさせながら、何かを求めるように天に向かって手を伸ばす。
そして、叫んでいた。
「マグナザウラー、どうして現れてくれないんだ・・・俺に力を貸してくれ!
俺は結花を守るために、必死に戦っているじゃないかっ。
頼むから、俺に"心の力"があることを証明させてくれ!」
『何も出来ない虫ケラが、たわ言を言うな!』
電気王は、さらに金太の背中を踏み潰した。
「ゲハッ!」
金太の口から、数滴の血が床に吐き出される。
「うっ・・うっ・・エルドランは勝手じゃないか・・。
地球が危機のときは、都合よく俺にロボットを押し付けて、
機械化帝国から地球を守らせておいて・・。俺が死ぬときは何もしてくれないのか・・・。
頼む、エルドラン。俺にもう一度マグナザウラーを託してくれ!」
建物の中で、虚しく響き渡る金太の叫び声。
必死にマグナザウラーを求める金太を見て、電気王は攻撃するのを止めた。
そして、束縛していたコードをスルスルと解く。
金太の場所から、コツコツと数歩の距離を歩いた。
そして、金太に対して背を向けたまま話す。
『フッフフフフ・・・アーハハハハッ!』
「な、なにがおかしい・・」
『貴様には失望したぞ、白金太郎』
「なにっ・・」
『所詮、貴様はマグナザウラーがなければ、何もできないではないか』
「・・・・」
『"人間の心の力"だと・・。笑わせてくれる。
所詮、人間の力など、弱者が強者に憐れみを求める程度のものだ。
心の力など、初めから無きに等しいものだったのだ』
「ち、違う・・」
『貴様が私に勝利したのは、"心の力"ではない。"機械の力"だ。
お前が"心の力"だと信じていたものは、エルドランが次々に与えてくれる"新しい機械の力"だったのだ』
「そんなことあるもんか・・」
『ではどうして、お前はマグナザウラーに頼っているのだ?
それこそ、お前の"心の力"が無力である何よりの証ではないか!』
「・・・・」
『私もおとなげなかった。人間ごとき虫けらに、もはやムキになる必要もない。
やはり"力こそすべてを支配する"という、私の考えは正しかった。
エルドランのロボットを持たないザウラーズなど、もはや取るに足らぬ存在だ』
金太はその言葉を聞いて、唇を噛み締めた。
自分の無力さに・・。
『さて、そろそろ終わりにしようか・・・』
電気王はゆっくりと、金太の方を振り向く。
そして、片手を振り上げ、腕をピタリと空中で停止させる。
その先にはうつ伏せに倒れている、惨めな金太の姿。
電気王は、腕の先端から稲妻のような火花をバシバシと散らす。
『つまらない戦いだったぞ、白金太郎!』
(俺は死ぬのか・・・なにもできずに・・・。
俺の力なんか・・心の力なんか、何の役にも立たないじゃないか・・)
金太はその場から逃げようと、必死に立ち上がろうとしたが、体が痺れて動くことすらままならなかった。
(いまさら起き上がったところで、痛い思いをするだけじゃないか・・。もう充分戦ったじゃないか・・・)
金太が諦めて、ゆっくりと目を瞑った瞬間。
──きゃああああ!
建物の中に、結花の悲鳴が響き渡った。
金太の目の前で、結花は電撃を浴びて床に倒れていた。
「あっ・・ああっ・・・」
一瞬の出来事に、金太は言葉がでなかった。
まさか、自分に向けられた電撃に飛び込んだというのか・・。
「結花ーーーっ!!」
金太は動かない体を無理矢理起こし、急いで結花のもとに駆け寄る。
結花の顔は埃にまみれ、電撃のショックなのか、全身が痙攣していた。
「結花・・・どうして・・・」
「金太くん・・・死んじゃいやだ・・」
「おい、結花、しっかりしろ!」
金太は涙を堪えながら結花を両手で抱きあげ、そのまま工場の奥まで全速力で走った。
そして、無我夢中で柱の影に隠れる。
その姿を見て、電気王は感嘆の声をあげる。
『ほう・・これは驚いた。あの少女が白金太郎をかばうとは・・。
それに白金太郎に、まだあれだけ動く力が残っていたとはな。まさか、あれが"人間の心の力"なのか?』
しばし、いぶかしげな表情で考える電気王。
すると、柱の影に隠れた金太から、大きな声がする。
「電気王! 頼む、少しだけ時間をくれ!」
『なに?』
「俺はどうなっても構わない。だけど、結花だけは・・・」
『フフフッ。まぁよかろう。辞世の句を読む時間を与えてやる。最後の別れとやらを済ませるがいい』
人間とは実に往生際が悪い生き物だと、余裕の電気王は心の中で冷笑する。
←なんとなく雰囲気で描いて見ました。
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(結花・・・)
金太は結花を自分の胸に抱き、必死に涙を堪えていた。
結花は、金太の腕の中でグッタリとしたままだ。
小さな結花の体。
その小さな体を守ってあげられなかったことに、金太は自分自身を諌めていた。
結花の顔に手を伸ばし、そっと頬についたほこりを取ってあげる。
「ちくしょう・・・うっ・・うっ・・」
金太は、肩を震わせながら、何度も手で結花の顔を綺麗に拭いてあげる。
まさか自分の犠牲になって、死んでしまったのではないかと涙が零れてくる。
「金太くん・・・大丈夫だよ・・・」
結花はいつの間にか、薄っすらと目をあけていた。
しかし、電撃のショックなのか、まだ動くこともままならないようだ。
「結花、気がついたか? よかった・・本当によかった・・」
「金太くん・・」
「意識はしっかりしてきたか?」
「うん。大丈夫だよ・・。金太くんに比べたら、結花はまだ元気だもん」
「ごめん・・・俺は結花を守らなくちゃいけないのに、なにやってたんだ・・」
「そんなことないよ。金太くんは、ずっと結花を守るために戦っていたんだもん。結花は何もしてないよ」
結花の健気な言葉に、金太の胸は締め付けらる思いだった。
「情けねぇ」
「金太くん・・?」
「本当に情けねぇ・・。俺は・・俺は結花1人守ることができねぇのか・・」
「・・・」
「なぁ結花? 俺がマグナザウラーを探しに、時空の穴に突入したときのことを覚えてるか?」
「うん・・」
「俺はそのときまで、勝負は力と力のぶつかり合いだと思っていた。
でも、それは間違いだった。本当に必要なのは"心の力"だったんだ。
俺は戦いの中で、"力"よりも"心"が大切なことを知ったんだ。
マグナザウラーが俺を選んでくれたのは、俺に"心の強さ"があったからだと思う・・」
「うん。結花もそう思ってるよ・・」
「でも、いまはどうだ・・・俺は完全にすくんじまってる・・。
"心では負けない"と思っても、電気王の圧倒的な力の前に、手も足もでないんだ。
結花が助けてくれるまで、俺は逃げることばかり考えていた」
「金太くん・・私たちはこのまま殺されちゃうの・・?」
「いや、このまま殺されるもんか・・・」
「・・・」
金太はキッと真剣な顔をして、結花に話し続ける。
「俺は間違っていた。
機械化帝国が相手なら・・・電気王が敵ならば、それを倒すのはエルドランのロボットだって。
もしかしたら、マグナザウラーが俺を助けに来てくれるんじゃないかって・・。
でも、そんなのは俺の勝手な思い込みだったんだ」
「どういう意味・・?」
「実はさ・・・さっきマグナザウラーに怒られちまった」
「え・・?」
「俺はまだすべての力を出し切っていないってさ」
「そんなことないよ・・」
「違うんだ。マグナザウラーはたぶん、俺にこう言いたかったんだ。
"未来は自分自身の力で切り開け"ってさ。
"奇跡が都合よく起こるのを待つな"ってさ。
マグナザウラーが俺の前に現れない理由はさ・・・俺の力でも、電気王から結花を守れるってことなんだ」
「で、でも・・・」
結花の顔は、いまにも泣きそうだった。
そんな結花に、金太は一瞬微笑み、話を続ける。
「いまの俺に必要なのは、"エルドランを呼ぶ奇跡の力"じゃない。
結花を絶対に守るという"強い意志"と、どんなことにも決して諦めずに戦い抜く"覚悟"だ。
俺は、人間が電気王に勝てっこないと決め込んでいた。
初めから、心のどこかでずっとエルドランに頼っていたんだ。すでに心が負けていたんだ」
「金太くん・・・」
金太は結花に、自分の気持ちを言葉につなげていく。
「俺はもうエルドランに頼らない。
もしここで頼ったら、俺は一生エルドランに頼っちまう」
「だ、だけどムリだよ・・電気王を人間が倒せっこないよ・・」
「ムリだと決めちゃダメなんだ。勝てるものも勝てなくなっちまう」
「金太くん・・まさか電気王に勝てると思っているの!?」
「わからねぇ。でも、俺たちは電気王を倒す方法を、まだ何も考えてないじゃないか」
「でも、そんなの考えたって・・うっうっ・・やっぱり私たち死んじゃうんだーっ」
突然泣き声をあげる結花に、金太は少しだけ声を荒げた。
「バカヤロウ、泣くんじゃない! 本当に死にたいのか!」
「うっ・・うっ・・だって・・」
「怒鳴ってごめんな、結花・・・。たしかに結花の言うとおり絶望的な状況だよ・・。
絶望を通り越して、笑っちゃうくらいにさ・・。だけど、それがなんだっていうんだ!」
「金太くん・・」
「結花だって、俺を電気王から助けようとした勇気があるじゃないか」
「うんっ・・あのときは、夢中で・・・」
ひっくひっくと泣く結花に対して、金太はニコッと微笑んだ。
「なぁ結花。頼むから、泣かないで黙って俺のいうことを聞いてくれ。
それから、この先どんなことがあっても、さっきみたいに俺をかばうような真似するんじゃねぇぞ」
「で、でも・・」
「結花・・・俺が時空の穴に入ったとき、俺は自分に"心の強さ"があるかを確かめただろ?
でも、今度は違うんだ。俺が持っている"すべての力"を出し切る番なんだ。
俺さ・・・やっと分かったよ。
"心の力"は、都合よく奇跡を起こす力じゃない。
"心の力"ってのさは・・・たぶん、人間が未来を切り開くために使う、あらゆる力のことを指しているんだ。
ただ、仲間を想って漠然と戦っていても、それだけじゃダメなんだ。
どうすれば状況を変えられるか考えるんだ。そして、勇気を持って行動するんだ」
「金太くん・・・」
「俺はこれから、命をかけて電気王と戦うぜ。俺が持つすべての力をぶつけてやる」
「命をかけるって・・・金太くん、死ぬ気なの? そんな嫌だよ・・うっ・・うっ・・」
「そんなに心配するなよ・・・結花だけは絶対に守ってみせる。だから泣かないでくれ・・頼むからさ」
「そ、そんな・・金太くんーっ・・」
結花は両手で瞼を押さえながら、涙を必死に堪えている。
そんな結花に、金太はやんわりと話しかけた。
「なぁ、結花・・・。いまだから言っちまうな。これが最後かもしれないから・・」
「な、なに・・?」
金太は一瞬、結花の顔から視線をずらしたが、すぐに思い詰めたように見つめなおす。
「あのさ・・その・・・俺は・・・。
俺は・・結花のことが好きだ! 大好きだ!! だから、この命に代えても結花を守る!」
「金太くん・・」
金太は真っ赤な顔をしながら、照れくさそうに結花の顔をみる。
「へへっ。言っちまった。格好悪いな・・こんな場所で言うなんてさ・・」
「・・・私も好きだよ。金太くんのこと大好きだよ!」
「・・・・」
金太は結花の言葉を聞いて、目をパチクリとさせる。
もし、これが学校で告白されていたら、金太は気絶していただろう。
しかし、いまはなぜか恥ずかしいと思わなかった。
ぎこちなさそうに、結花の肩に手を乗せる。
「あの・・そのさ・・・ありがとう」
「金太くん、結花もがんはる・・・。結花にだって心の力はあるはずでしょ。
結花はずっと金太くんのそばにいたい・・・。それが結花の意志だもん。結花の願いだもん。
だから、金太くんがやろうとしていることを手伝わせて!」
「結花・・・。ありがとうな。
じゃあ、2人で最後まで諦めずにあがいてみようぜ。俺たちの未来は、俺たちで切り開くんだ!」
「うん!」
そういうと、金太と結花はガッチリと手を握り合った。
今回のは陵辱がねーのかって突っ込みがきそうな・・・。金太と結花を動かすと、話が純愛になるなぁw
↑今回の小説は分かりにくいかもしれないので、金太と結花の行動パターンと、イメージを図にしてみました。