電気王の猛攻に対し、金太の策は?
登場人物
白金太郎。愛称「金太」。
水原結花です。
電気王。機械化帝国四天王の1人。力こそすべてと考える実力主義者。
電気王から、凄まじい爆音と共に放たれた電撃。
金太は、右手に持っていた鏡を心臓に位置に当てた。
『な、なに!』
電撃は、金太の持つ鏡に正確に命中し、反射して別の方向へと飛んでいく。
その様子をみて、焦りの表情を隠せない電気王。
『き、貴様っ、死ぬなどと言いおって・・・だましおったな! 卑怯者め!』
「電撃みたいな飛び道具持っているヤツに、言われたくないぜ!」
『なにをっ』
自慢の攻撃をかわされて動揺する電気王に、金太はすぐさま畳み掛ける。
「お前はいまの一撃で、ほとんどエネルギーを使っちまっただろ! もう一度俺を電撃で打ち抜いてみろよ!」
『なんだと!?』
金太は電気王を執拗に挑発する。
「どうした? もうエネルギーが尽きたんじゃないのか?」
『き、貴様・・・』
電気王は金太の言葉にプライドが傷つけられたのか、怒りで拳が震える。
一方、金太は電気王に初めて一矢報いたことに、「ヘヘッ」と笑みを浮かべる。
しかし、すぐに電気王は片手をあげて、電撃を発射する態勢に入る。
『フン、バカめが・・。これで地獄に落ちろ!』
そう電気王が叫んだ瞬間、手から再び稲妻のような電撃が放出された。
「ぎゃあああ!」
金太には予想外の出来事だったのか、一歩も動けずに電撃をまともに浴びてしまった。
そのまま、電撃の帯に包まれて、後方に吹っ飛ばされる。
金太は胸を押さえながら、地面にバッタリと倒れてしまった。
「うぐぐっ・・・まだエネルギーが残っていたのか・・」
『愚か者め。貴様の考えなどお見通しだ。私に最大の電撃を打たせて、エネルギーを尽かせようという作戦なのだろう?』
「ううっ・・・」
『正直、驚いたぞ。まさか私のエネルギー源を電気と考えて、わざと自分を攻撃させるように仕向けるとはな』
「・・・・」
『捨て身の覚悟ということか・・・。あの短時間で考えたのか? 私のエネルギー源と、私を倒す方法を?』
「そうだ・・・」
『ほほう。少しは楽しませてくれるではないか。
だが、詰めが甘かったな。私はそんな稚拙な作戦に引っかかるほど愚か者ではないわ。
貴様のせっかくのアイデアもこれで水の泡というわけだ。フハハハ!』
高笑いをする電気王に対し、金太は仰向けに倒れたまま、少しだけ頬を緩めた。
「へへっ。そうでもないぜ。お前は俺の心臓を、正確に狙ってくれた。だから、反射した角度もバッチリだぜ」
『なんだと!?』
「本当の目的はこっちさ・・」
金太の言葉が終わらなぬうちに、柱の横に止まっていたフォークリフトが、電気王に向かって突進を始めた。
突然、ウィーンという機械音とともに、突進を始めたフォークリフト。
『バ、バカな・・。どうして勝手に動いているんだ!』
「お前自身が言ってたじゃないか。電気で動くものは、自分の電気を与えることで、動かすことが出来るって。
このフォークリフトは、さっきお前が放った最大の電撃を、鏡で反射させて当てたんだ!」
『まさか・・・』
音をあげて突き進む巨大なフォークリフトは、電気王に向かって突進し続けた。
『おのれ・・・こんなもので私が倒せるか!』
一瞬、フォークリフトに向かって電撃を放そうとした電気王。
しかし、すぐにそれをやめて、間一髪、横にくるりと回転をしながら避けた。
『白金太郎・・・なかなか味な真似をしてくれるではないか・・。
だが、こんなものは避けてしまえば、何も意味はないわ』
「別に、お前に当てるために、動かしたんじゃない。それにお前が避けることも、なんとなく分かっていたさ・・」
『なんだと!』
金太の意味ありげなセリフに、電気王は慌てて後ろを振り向いた。
ドタガシャン!!
建物が揺れるような凄まじい金属の轟音。
フォークリフトが、工場の入り口であるシャッターにぶち当たり、それを破壊していたのだ。
シャッターに大きな穴が開き、外の光が工場の中に差し込んだ。
『シャッターを破壊するとは・・。まさか、貴様ここまで計算していたのか』
「まぁな・・作戦大成功だぜ!」
金太はあらかじめ、簡単な工作していたのだ。
──電気王とシャッターの直線上にあるフォークリフトを選別する。
──フォークリフトが前進するように、レバーを入れておく。
──あとは電撃を反射させて、フォークリフトに当てれば、勝手にシャッターを壊しに直進してくれる。
『なんということだ・・・私の最大級の電撃が、シャッターを破壊することになるとは・・』
電気王は、金太の作戦にハマってしまったことに怒りを顕にする。
しかし、すぐに冷静に判断するのも、電気王の強さでもある。
『どうやら私は白金太郎を、何も出来ない虫けらと、なめすぎていたようだな。
これからは慎重に行動し、確実に殺さなければ・・・。
幸い、シャッターからはまだ外に出た様子はない。
この工場にいる限り、白金太郎に勝ち目がないことは確かだ・・』
そういうと、電気王は金太が倒れていた場所に視線を向ける。
『なに、ヤツはどこへ消えた・・・?』
先ほどまで床に倒れていた金太が、いつのまにか消えている。
『おのれ・・・こしゃくな真似を!』
電気王は、周りの鏡をキョロキョロと見渡しながら、必死に金太を探した。
しかし、どの鏡にも金太は映っていない。
『鏡からは見えない死角に隠れたというのか・・・小ざかしい人間ごときが!』
電気王は苛立ち始めたのか、すぐ横にある壁をバシンと叩きつける。
『クソ、どこへ行きおった・・?』
電気王が金太を探そうと、一歩足を踏み出したとき・・・。
バチバチと、足元から火花が散っているのに気がついた。
『こ、これは・・水か!?』
いつのまにかシャッターの穴から吹き込んだ雨が、電気王の周りを水浸しにしていたのだ。
(『なんということだ・・・』)
電気王はバチバチと足元に火花を散らしながら、スッと横に移動をする。
『ええい、白金太郎! 隠れてないでいさぎよく出て来い!』
電気王はキョロキョロと周りを注意深く観察する。
電気王が数歩、工場の奥に歩を進めたとき──。
工場の一番奥の柱の影から、大きな声がした。
「電気王、なにをそんなに焦ってるんだよ!」
『なにを!?』
「俺はここにいる。別に逃げてるわけじゃないぜ」
『フン。柱の影に隠れて逃げていないだと。笑わせるな』
そういうと、電気王は一歩前に踏み出そうとする。
「お前のエネルギー源がなんなのか、やっと確信したぜ」
金太の言葉を聞いた瞬間、電気王の足が止まる。
『なんだと?』
「お前のエネルギーは電気そのものだろう? 体に蓄えている電気がすべて無くなっちまえば、
お前は動けなくなる。つまりお前も死ぬってことだ」
『・・・・』
「そして、もう1つ分かったぜ。お前の電気エネルギーが、残り少ないってこともな!」
金太の自信ありげな発言に、電気王は目から一瞬火花を散らせたが、すぐに冷静な言葉で切り返す。
『フン、どうしてそんなことが分かる? 推測だけで物事を判断すると後悔することになるぞ』
「お前は自分自身で、それを証明したんだ」
『なに!?』
「さっきお前はフォークリフトが突撃したときに、それを必死に避けたじゃないか」
『それがどうした?』
「もし、お前のエネルギーが無限ならば、フォークリフトぐらい電撃で破壊するか、停止させたはずだ。
お前は機械王の中でも、最もプライドが高いからな! お前は電撃を使わなかったんじゃない。使えなかったんだ」
『うぬぅっ・・』
「それと、お前の弱点も分かったぜ!」
『なにをーーっ!』
「お前はさっき、床が雨で浸水した場所から、急いで移動しただろ?
電気は水に接触すれば、そこから漏れ出す。つまり、お前の弱点は"水"だ!」
『フン、それも推測の域ではないか・・』
「じゃあ、1つ質問するぜ。お前はどうしてこの工場にきたんだ?」
『そ、それは・・』
「お前は、この工場に俺を誘い出したんじゃない。
お前は自分の弱点である"雨を避けるため"に、この工場に逃げ込んだんだ!」
金太の核心をつくような会話に、電気王は怒りで全身に電気をバチバチと放出させた。
『フフフフッ・・・ハーハハハハッ!!』
突然、電気王は高々と笑い声をあげた。
『白金太郎、貴様はたいしたヤツだ。たしかに貴様の言っていることはすべて正しい。
私にはそう多くはエネルギーは残っていないし、水に弱いのも正解だ。
しかし逆に言えば、この工場にいる限り、貴様が死ぬことには変わりない』
「・・・・」
『さぁ、柱に隠れていないで、正々堂々と出て来い!』
「・・・・」
『出てこんか。いや、出てこられないのが正解だろうな。では、いまからネズミをいぶりだしてやるわ!』
そういうと、電気王はバチバチと両腕に電気を集める。
そして、その電撃を柱に向かって放出した。
電撃が柱にぶち当たると、その周辺はガタガタと崩れだした。
柱の壁が次々に崩れだし、ボロボロと落ちていく。
『ハハハ! 早く出てこなければ、貴様は壁の下敷きになるぞ!』
しかし、柱の後ろからは何も返事がない。
『どうした、白金太郎! そのまま無駄死する気か!?』
なにも応答がない金太に対し、電気王は不審感を募らせる。
『ま、まさか・・!』
電気王が猛然と柱の影に移動したとき・・・。
そこに存在するのは、一台のトランシーバだけだった。
電気王は、床に落ちているトランシーバを拾い上げる。
『なんだ、これは・・?』
すると、そのトランシーバから金太の声がした。
<おい、電気王!>
『この機械は・・!?』
<やっと気がついたみたいだな。随分と時間を稼がせてもらったぜ!
このトランシーバから俺の声を最大音量で出せば、柱の影に俺がいるように見えただろ?>
『き、貴様ーーーっ!!!』
<俺はいま、最初にいた春風山の湖にいるぜ。
さぁ、ここまで来てみろ! 最後の決着をつけようじゃないか!>
『いつのまに・・工場の外に出たというのか!』
<あぁ。お前が雨の浸水に気を取られている隙に、シャッターから外に出たんだよ>
その言葉に電気王は呆然とする。
『バカな・・・鏡には貴様の姿はなかったぞ。外に出る前に、私に見つかるはずだ・・』
<あぁ、それな・・・。シャッターに到達するまでの鏡がないルートを、結花が見つけちゃってさ。
結花は泣き虫けど、けっこう賢いところがあるだろ?>
その言葉を聴いた途端、電気王はトランシーバを片手で握りつぶした。
怒りで全身に火花が散る。
『おのれーーーっ! 白金太郎!! 正々堂々と戦わない卑怯者め! すぐに始末してやるわ!!』
──拳一が元ザウラーズのメンバーに配ったトランシーバ。
金太は、自分のトランシーバのスイッチを通話状態にしたまま、柱の影に置いていた。
そして、結花と合流し、浸水に気を取られている電気王の後ろから、シャッターを抜け出した。
そのあとの電気王との会話はすべて、湖の方向へ走りながら、結花のトランシーバを使って送信していたのだ。
もうちょっとで終わりです。