エロなしだと、やっぱいまひとつスパイスが効かないですかね?w
登場人物
白金太郎。愛称「金太」。
水原結花です。金太の恋人にようやくなりました。
電気王。機械化帝国四天王の1人。力こそすべてと考える実力主義者。
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── 一方、湖畔では・・・。
ハァハァと、息を切らせる結花と金太。
電気王に見つからないように細心の注意を払って移動してきたためか、さすがに疲れた様子だ。
金太は息が落ち着いたところで、結花に話しかける。
「結花、さっき言ったこと、本当に大丈夫だよな?」
「うん。大丈夫だと思う・・」
「"思う"って・・。もし間違っていたら、俺は死んじゃうんだぞ」
「だって、中島先生がそういってたんだもん・・・」
そういうと、結花はすぐに泣きそうな顔になる。
そんな結花の表情を見て、金太は慌てて返事をした。
「ご、ごめん。別に俺は結花のことを責めてるんじゃなくて・・」
「金太くん・・やっぱりその作戦はやめようよ・・・」
視線を落とす結花に対し、金太はキッパリと断言した。
「どっちにしろ、やらなきゃやられるんだ。俺はもう覚悟決めてるからさ。結花の作戦にすべてを賭けてみるぜ!」
金太は自分自身にもう一度気合を入れなおす。
(よーし、ここが正念場だぞ・・・がんばらなくちゃ・・)
湖から少し離れて立った金太。
「結花は、あっちの木陰に隠れてるんだ」
「でも、金太くん・・・」
「アイツはすぐにここにやってくるさ・・。
しかも相当頭に血が上ってるぜ。いきなり電撃を撃ってくる可能性も高いしな!」
「結花も一緒に戦う!」
「バカヤロウ! 結花は邪魔なんだ。あっちに隠れてろ!」
「そんな、金太くんー・・・」
結花は寂しそうな顔をしながら、木の影に歩いていった。
(結花、ごめんな・・・だけど、こうでも言わないと、俺の言うこと聞いてくれないしな・・)
金太は結花に対して、すまなそうな顔をする。
しかし、そんな金太に対して、木の影から結花の声が聞こえた。
「金太くん、絶対に死んじゃ嫌だよ! 約束だからね!」
「結花・・・。あぁ、まかせとけって!」
結花はどうやら、自分の言いたいことを理解してくれたようだ。
「あのさ・・結花・・?」
「金太くん、どうしたの?」
「もし電気王を倒せたら・・・もう一度、2人だけで春風山にハイキングに行こうな。約束だぜ」
「うん」
「ありがとうな」
そういうと、金太は結花に向かって、親指を立てて精一杯の笑顔をみせる。
しかし、そんな金太の作り笑いに、結花は一抹の不安を覚えた。
雨は一層激しさを増していた。
金太は拳を握り締めて、その瞬間が来るのを待っていた。
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←それっぽい場面があったのでつなげてみましたw
『見つけたぞ、白金太郎!!』
しばらくして、電気王は金太の上空に現れた。
「来やがったか・・・!」
電気王は雨に濡れながら、電気を空中にバチバチと飛ばしている。
どうやら、水滴が電気を奪い、それが地面に滴り落ちているらしい。
それは、雨が電気王のエネルギーを、刻一刻と消費させていることを意味していた。
しかし、電気王は雨に全く動じない様子で、ゆっくりと金太から数メートル離れたところに、降り立った。
『この卑怯者め!』
「・・・・」
『力もない下等な生物のくせに、コソコソと逃げ回りおって。このネズミが!』
金太を執拗に罵る電気王。
『どうした? 何も言えないのか、白金太郎!』
「・・・別に何を言われようが構やしねぇ」
『なに?』
「いまの俺の決意は、結花を守ることだ。そのためなら、お前に罵られようが笑われようが関係ない」
そういうと金太は、キッと電気王を睨みつける。
その姿をみて、電気王は感じ取った。
金太から出る、並々ならぬ気迫のようなものを。
『なるほど・・。お前の目は死んでいないようだ・・』
静粛の中、雨が降る音だけが聞こえる。
電気王は金太の目を見ながら、話し始めた。
『私はこうしている間にも、己の電気エネルギーを雨に奪われている。
人間ごときが、私をここまで追い詰めたことを褒めてやるぞ』
金太はその言葉に、厳しい顔つきをする。
「どこかで電気エネルギーを補充すれば、お前は回復できたんじゃないのか?」
『フン。そんなことをするものか。
人間ごときに、エネルギーを回復して勝利するなど、私にとっては負けに等しいことだ』
「そう言うと思ったぜ・・。お互い、あとがないってことだな」
電気王はゆっくりと周りを見渡す。
『雨に、湖か・・・。なるほど、今度は地の利は貴様にあるというわけか』
「地の利なんて関係ない。要は使いようさ。あの工場の中は、初めはお前に有利かと思っていたが、
考えれば役に立つものが、たくさんあったしな!」
その言葉を聞いて、満足そうな笑みを浮かべる電気王。
『フフフ、まるで別人だな』
「どういう意味だ?」
電気王の言葉に、金太は不審な顔つきをする。
『最初に貴様とこの場所で対峙したとき、私はお前など虫ケラ同然に考えていた。
しかし、いまは違う。貴様がとても大きく見える。そして、底知れぬ恐ろしささえ感じる』
「・・・・」
『"人間の心の力"とやらが、本当に存在するのかもしれんな・・・』
「電気王・・!」
いままで"人間の心の力"を絶対に認めようとしなかった、電気王のまさかの言葉。
金太は、その言葉に驚きながらも、
このとき初めて、電気王にも人間と同じ感情があるのではないかと、感じ始めた。
「電気王・・・お前には仲間がいなかったのか?」
『なに・・?』
「もし、お前にも信じあえる仲間がいれば、"心の力"を理解できるはずだ」
『・・・』
「お前は、デスボルトに何の感情も持っていなかったのか?
本当は、デスボルトはお前の心に応えてくれていたんじゃないのか!」
金太の言葉に電気王は暫し沈黙していたが、突然、力強い口調で切り返した。
『デスボルトは単なるロボットだ。ロボットに"心"や"感情"があるわけがなかろう!』
「そんなことあるもんか! 俺が操縦していたマグナザウラーは、優しい心をもっていたんだ。
苦しいときも、悲しいときも、俺の心に共感して、一緒に戦ってくれたんだ」
『それは貴様の幻想にすぎん! ロボットに感情などあるはずがない。そんなものは、己を弱くするだけだ』
「違う! お前は本当は分かってるんじゃないのか!?」
『ええい、黙れ!』
電気王は金太の言葉を遮って、拳を強く握り締める。
『調子に乗るなよ、白金太郎。
たかが人間ごときに、崇高なる機械王であるこの私を理解できるはずがない!』
「くっ・・・」
『これから貴様にトドメを刺してやる。しかし万が一、私を倒すことができたら、
そのときは潔く貴様のいうことが認めようではないか。貴様の言うことが正しかったことをな!』
「ダメだ・・それじゃ、遅いんだ・・・」
金太は、もしかしたらこの鋼鉄の魔人が、人間の心を理解できるのではないかと思った。
しかし、それが電気王に受け入れられることはなかったのだ。
電気王はゆっくりと右腕をあげる。
そして、バチバチと稲妻をその腕に集中し始める。
電気王が電撃を発射する態勢を見て、金太は後ろに隠していた鏡を、サッと取り出した。
そして、電撃をガードするかのように、鏡を自分の胸の前にかざす。
その様子を見た電気王は、ふと腕の動きを停止した。
『なるほど・・・電撃を放出しても、その鏡で反射させるということか』
「人間には学習能力があるんだぜ。同じ攻撃に何度もやられるもんか!」
『だが、今度はお前の心臓を狙うとは限らんぞ。高速な電撃を、そんな鏡一枚では防ぎきれまい』
電気王の脅しともとれる言葉。
しかし、金太はその言葉に冷静に切り返す。
「お前のエネルギーから考えて、何発も電撃を撃てないはずだ。
だから、お前がどこに電撃を撃つか、だいたい見当がつくぜ」
『なにっ!?』
「俺の心臓か、頭を狙っているんだろ! もし一撃で致命傷を負わすとしたら、そこしかないもんな!」
『貴様・・そこまで・・』
「それにこの雨じゃ、電撃も空中で拡散しちまうだろ!」
金太の的を射た言葉に、電気王は「アーハハッ」と高笑いを始めた。
電気王は、なにやら満足気な笑みを浮かべる。
『フフフッ。驚いたぞ、白金太郎。まさかそこまで先を読んでいたとはな』
「俺だって、死ぬのはいやだからな! ちなみに、いまのは全部結花が考えたんだぜ。
結花は小さいけど、頭はいいんだからなっ」
『フン。くだらないことをぬかしおって!
いい加減に遊びは終わりにしよう。私にはあまり時間がないのでな。お前の体に直接電流を流してやる!』
「なにっ!?」
そういうと、電気王は自分の体から、突然電気コードを金太に発射した。
薄気味悪いヘビのようなコードは、まるで生きているかのように物凄いスピードで、金太の胴体をぐるぐる巻きにする。
「し、しまった!!」
『ハーハハハッ。また同じ手に引っかかるとは。意外と単純な作戦にハマリおったな』
「ク、クソッ! 放しやがれ!」
得意満面の電気王に対し、金太は絡まったコードを外そうと必死にもがく。
『さぁ、これで終わりにしよう・・貴様はよく戦った。敬意を込めて一瞬で殺してやるぞ!』
電気王は、ありったけの電流を、一気に金太の体に流し込んだ。
「ぎゃあああああ!」
森に響き渡る、金太の断末魔。
金太に絡まるコードに、大量の電流が流れる。
黒い稲光をあげながら、あちこちに火花を散らす。
『フフフッ。一瞬にして終わったか』
そういうと、電気王は電流を流すのを止めた。
金太は立ったまま動かない。
洋服からは、焼け焦げたような匂いがしている。
『ほう、死んでも倒れないとは・・。白金太郎、見上げた根性だぞ。さて、もう一匹のネズミをしとめるとするか・・・』
電気王は、金太に巻きつけていた電気コードをゆっくりと解いていく。
そして電気コードが、金太から完全に離れた瞬間・・・。
──なんだ?
妙な違和感に、電気王は驚く。
電気コードがピンと張ったまま、自分のところへ戻ってこなかったのだ。
電気王がその先端を注意深くみると・・・。
そこには、電気コードを逃すまいと、その先端をしっかりと握り締めた金太の姿があった。
電気王が戻そうとしたコードを、しっかりと握り締める金太。
その姿を見て、電気王は寒気を覚えた。
『バ、バカな・・・生きているはずがない・・』
「ヘヘッ。かろうじて生き延びたみたいだな・・。でも死ぬほど痛かったぜ」
『どうして貴様が生きている、説明しろ!』
混乱する電気王は、金太にその答えを求めるしかなかった。
金太はヘヘッと鼻をこすりながら、答えた。
「電気王、俺の足元をよく見てみろよ!」
『なんだと・・!』
電気王が金太の足元を見てみると、金太は黒いブーツのようなものを履いている。
それ以外に、特に変わったところはなにもない。
『なんだ、それは・・。まさか、そんなもので電撃を防いだというのか!?』
「あぁ。イチかバチかの賭けみたいなもんだったけどさ。
これは"長靴"っていう道具でさ、素材はゴムでできているんだ。
さっき結花が工場で見つけたんだ」
『ゴムだと・・・』
「そうさ。ちなみにゴムってのは電気を通さない物質だぜ」
『しかし、そんなものを履いていても、貴様の体には直接電気コードが巻かれていたばずだ!』
「お前は、電気王のくせに、本当は電気のことを何にも知らないんだろ!」
『生意気な・・・こざかしい人間ごときが!』
金太の挑発的な言葉に、怒りで全身を震わせる電気王。
金太は苦しい表情をしながらも、わずかな笑みを浮かべる。
「俺は別に電気のことは詳しくないぜ。
だけど、結花が一生懸命教えてくれたから、短い時間で少しは理解できたんだ」
『理解しただと?』
電気王は苛立つような返事をする。
「電気が流れるっていう意味をさ」
『なにをっ!』
「電気が流れるのは、水が流れるのと同じことだ。高い所から低い所に向かって流れるんだ。
俺が工場でお前から直接電撃を受けたときは、高い所が電気コード・・つまりお前、そして低い所は地面だ。
お前が1万ボルトの電気を放てば、水が流れるように、0Vの地面にまで流れ落ちる。途中にあるものはすべて感電する」
『そんなことは、私にも分かるわ!』
「だけど、この長靴は電気を地面に通さねぇんだぜ。つまり地面に電流が届かないってことだ。低い所がないってことさ。
低い所がないってことは、電気は流れようがないんだぜ。
入口から流れた電気は、ただ電気コードの中をぐるぐる回るだけだ。
電気は、わざわざ人間の体のような抵抗があるところに、流れようとはしないからな!」
『たしかに私から流れた電流は、地面がなければ、どこにも行き場がない・・。
しかし、そんな単純な方法で、この私の強力な電気が・・・』
「その証拠に、俺はこうして生きてるじゃないか!」
『・・・いや、その理論が分かったとしても、実行するなど・・・失敗すれば確実に死ぬんだぞ』
「あぁそうさ。俺はずっと足が震えてた。もしかしたら、俺の体に電流が流れて死ぬかもしれないってな!」
『うぬぅ・・』
死を覚悟していたという金太の言葉に、動揺を隠し切れない電気王。
「電気王! お前は人間をバカにしすぎだぜ。人間には知恵と勇気があるんだ」
『くっ・・』
「ちなみに電気の話は全部、結花の受け売りだから、俺が考えたわけじゃないぜ。
俺は中島先生の理科の授業聞いても、分からなかったけどさ。結花はちっちゃいけど、頭はいいだろ?」
その言葉を聞いて、電気王は憤然とする。
『き、貴様ーーっ! なめおってーーっ!』
「今度は、俺の番だぜ!!」
そういうと、金太は握っているコードにギュッと力を込めて、握りなおした。
「電気王! いまこそ俺のすべての力で、お前を倒してやる!!」
『なんだと!?』
「とおりゃああああーーーーーー!!!」
凄まじい金太の雄たけびが、木々を揺るがした。
電気王に繋がったコードを、金太は柔道の背負い投げをするかのように、勢いよく担ぎ上げる。
「毎日、伊達にドラム缶相手に鍛えてるわけじゃねーんだ!!」
『なにっ! ウワァァァ!』
そのままハンマー投げの要領で、一回転しながら遠心力をつける。
ピンと張った電気コードは、弧を描くように電気王を空中に投げ飛ばした。
金太のいま持てる、すべての力を込めて。
(『一体、白金太郎のどこに、こんな力があるのか・・』)
電気王がそんなことを考えたときには、すでに体は空中に数十メートルも投げ出され、湖の中にバシャン!と落ちていた。
『ウガアアアアアッ!』
電気王は断末魔とともに、湖の中に体中のすべての電気を放出していった。
電気エネルギーは、水の中で漏電し、勢いよく拡散していく。
もはや、それを止めることは、電気王自身にもできなかった。
湖には大きな波がうねり、水面には青白い電気の火花があちこちに散っていく。
「ハァハァ・・・やったのか・・・」
金太はすべての力を出し尽くしたのか、両膝を地面につけて、息を切らしていた。
そして、湖に苦しみながら沈んでいく電気王を、じっと見つめていた。
電気王は、次第に動きが停止していく。
(今度こそ、くたばりやがれ!! いや、絶対に死んでくれ!)
金太が祈るような気持ちで、水面をジッと見つめる。
『ウグッ・・・アガガ・・・』
電気王の最後の声・・。
やがて、水面から顔を出したまま動かなくなった。
(やった・・・ついにやったんだ・・・)
金太は安心したのか、ヘナヘナとその場に座り込んでしまった。
「金太くーんっ!」
木の影に隠れていた結花が、スキップをするように金太の元へ駆け寄る。
湖畔にいる金太に向かって、手を振りながら斜面を下りてきた。
金太は結花に向かって、片手をあげてガッツポーズをする。
そして、天に向かって叫んだ。
「結花っ! やったぜーーーーっ! 電気王を倒したぜっ!」
「金太くんーっ、やったネ!」
金太の目から、スッと自然と涙が零れ落ちる。
安堵の涙か、勝利の涙なのだろうか。
(やった・・本当に出来たんだ・・。
人間だって、強い意志と覚悟があれば、電気王を倒せるんだ・・なんだってできるんだ・・。
マグナザウラー、見ていてくれたか? 俺たちは自分たちの力だけで未来を切り開いたんだ)
金太は、頬を伝わる涙を手で拭いなから、近づいてくる結花に必死に笑顔を作ろうとする。
しかし、そのとき・・。
『貴様も道連れだ・・・白金太郎・・・』
湖から、まるで死神のような声がした。
次回最終回です。ブラスターベアさんに金太の縛り絵を描いていただきました! ありがとうございます!