「もえタイ」の亀山太一を主人公にしてエロ小説書いてみました。シチュとしては、ボクシングの試合に負けた日の続きの話です。原作では翌日にジムに復帰していますが、それはナシということで(^^;
登場人物
──いつもと変わらぬ自分の部屋。
しわくちゃになった、ベッドの白いシーツ。
電源をつけっぱなしにしたゲーム機。
その前に散乱したポテトチップの袋。
ダイエットに良さそうだからと、飲みはじめたスポーツドリンクのペットボトル。
少し前までは、この部屋で寝転がって、テレビゲームをする自分が当たり前だと思っていた。
でも、僕は少し変わったような気がする。
(疲れた・・・もう寝よう・・)
太一は、部屋に入ってすぐに、吸い込まれるようにベッドに横になった。
寝るにはまだ早い夕刻の時間。
しかし、体が悲鳴をあげていた。
太一の顔は、アザだらけで、あちこちにバンソウコウが貼られている。
あちこちの関節が痛い。
(ふぅ・・なにもかも、終わっちゃったのかな・・)
太一は額の汗を拭いながら、寝返りをうつ。
天井を見上げながら、ぼんやりとボクシングのことを考えていた。
←それっぽい絵があったので入れてみました(以下同w)
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人より目立たなくていい。
つまらない人間だって言われてもかまわない。
クラスに友達がいないのは寂しいけど、
イジメられなければ、それでいい。
デブとか、メタボだって陰口を叩かれても、自分が苦笑いするだけでいい。
ただ平穏に生きていたい。
僕は毎日、そう願って生きてきた。
そんな僕が、ボクシングジムに入ったのは、ちょうど一ヶ月くらい前。
ボクササイズがダイエットに良いという理由で、妹の美香にムリヤリ連れて行かされたんだ。
ジムは、汗くさくて、狭くて、野蛮で、みんなの目つきが怖くて、まるで異世界。
僕はボクシングなんて絶対にできないと思った。
でも、たった一人だけ僕に優しく指導してくれる先輩がいたんだ。
──蔵田(くらた)さん。
彼はプロボクサーなんだけど・・。
蔵田さんは、僕に手取り足取り、ボクシングならぬ、ボクササイズのことを教えてくれた。
ボクササイズってのは、ボクシングの運動を取り入れた、いま流行のダイエット方法のことだ。
蔵田さんは、たまたま足をケガしていて、時間があったのかな。
僕なんかのために、練習に付き合ってくれた。
パンチの打ち方を丁寧に教えてくれたし、ミット打ちもさせてくれた。
そういえば、初めてジムに行ったときに、蔵田さんはボクシング流の縄跳びのやり方を教えてくれたっけ。
ドスンドスンと地響きを鳴らしていた僕の縄跳び。
でも、蔵田さんのアドバイスで、トットッという軽快なリズムに変わっていったんだ。
初めて3分間の縄跳びをしたとき、
腹の肉が千切れるかと思ったし、息が苦しくて死ぬかと思った。
逃げ出したかったけど、縄跳びをやり遂げたとき、なんとなく充実した感じがした。
だから、僕はボクササイズを続けることにしたんだ。
その後は、毎日ジムに通うのが楽しくなった。
以前は、運動なんて疲れるだけで嫌だったし、
ボクササイズのあとのシャワーは爽快だし、ご飯はおいしくたべられるし、
夜は3秒で寝ちゃうし、朝寝坊するくらいまでぐっすり眠れて、
僕はすっかりボクササイズのとりこになってしまった。
だから、どんなに練習がハードでも、不思議とかんばれたんだ。
たった一ヶ月だったけど、いままでの人生で一番充実していた気がする。
今日、僕は生まれて初めて人と殴りあった。
ボクシングの試合のことだ。
まさか自分がリングで誰かを殴ったり、殴られたりするなんて、いままで考えたこともなかった。
学校の不良に絡まれたら、すぐに逃げ出していた。
そんな自分が当たり前だと思っていた。
でも僕は今日、たしかにボクシングの試合をしたんだ。
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僕がボクシングの試合をした理由──。
きっかけは、蔵田さんの試合のビデオテープだった。
傷ついてもなお、戦う蔵田さんを見ているうちに、
僕もボクササイズではなくて、ボクシングをやりたくなった。
僕はデブだし、運動オンチだけど、少しでも蔵田さんに近づきたかった。
だから、僕はプロコースに転向するために、同い年の子と試合をしたんだ。
"負けたらジムを辞める"という約束で。
──痛かった。
──苦しかった。
僕は3ラウンド、精一杯リングの上で戦った。
たった1ラウンドの間に、僕はムチャクチャ殴られて、すごく苦しくて・・。
だけどそんなことを感じるヒマもないくらい、体も頭もフル回転してすごい難しくて、
なんて表現したらいいのか分からないんだけど、とにかく3分間がこんなに充実しているなんて思わなかった。
ボクシングってすごい難しいんだけど、おもしろい。
だから、勝ちたった。
ボクシングを続けるためにも。
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ちくしょう・・。
くやしい・・くやしいよ・・。
涙が止まらないよ・・。
だって、もう僕はジムには行けないんだ。
負けたら、ジムをやめるという約束で、試合をしたんだから。
僕はもっとボクシングのことを勉強して、蔵田さんと一緒に練習したかったのに。
ほんの少しだけ、変われたと思ったのに。
これじゃ、また元の生活に戻るだけじゃないか。
どうしてボクシングを続けられないんだよ・・。
ひどいよ・・。
うっ・・うっ・・。
──次の日の朝。
「痛ててて・・まだ腫れが引かないや・・」
ボクシングのパンチというのは、一日やそこらで治るものではない。
特に右目の腫れがひどく、視界もぼんやりしたままだ。
太一は、鏡を見ながらバンソウコウを貼りなおす。
このボコボコな顔を見られたら、クラスのみんなにどう反応されるのだろうか。
おそらく、後ろ指を差されて、爆笑されるに決まっている。
でも、グズでノロマな自分に友達なんか1人もいない。
笑われたところで、なにも気にせずに、黙っていれば済むことだ。
以前の太一ならば、憂鬱で学校を休んでいたかもしれない。
バンソウコウだらけの顔なんて、ちょっとしたお祭り騒ぎだ。
しかし、不思議なことに、そんな理由で学校を休もうとは思わなかった。
なぜなら、この顔のアザは、自分が一ヶ月がんばった証拠だ。
ボクシングをやったという証なのだ。
だから、太一は笑われても構わないと思った。
──ガラッ・・。
太一がクラスのドアを開けた途端、みんなが一斉にその顔に注目した。
注目というよりは、あ然とした表情で見つめている。
しかし、1人が笑い出すと、みんながせきを切って突っ込みをはじめる。
<ギャハハ、亀山、その顔なに?>
<また、どっかの不良に殴られたの?ダッセーの>
<体がデブなのに、顔も腫れてデブってるじゃん>
<家で一人でテレビゲームやってればいいのによ>
クラスの女子からは、ヒソヒソと嘲笑する声が聞こえる。
太一は真っ赤になりながら、「えへへっ」と愛想笑いをして席につこうとする。
しかし、イスに座った瞬間、後ろの女子から、足で蹴飛ばされた。
「な、なにするの!?」
「オメー、暑苦しいのに、さらに暑苦しい顔してんじゃねーよ」
「ご、ごめん・・」
「ちったぁ、痩せればぁ?」
「う、うん・・」
太一は「クソッ」と怒りを感じたが、それを押し殺した。
(僕だって、一ヶ月もボクシングして、努力したんだぞ・・!)
顔のアザが、ボクシングの試合で殴りあった跡だとは、クラスの誰も想像しないだろう。
(言われなくたって、痩せようとがんばったんだ)
太一は、クラスのみんなに向かって叫びたかった。
でも、それを心の奥にぐっとしまいこんだ。
恥ずかしかった。
自分がボクシングの試合をしたとを言うことが。
なぜなら、自分は試合で惨めに負けて、ジムをやめさせられたのだから。
顔のアザのことで、いくら笑われてもかまわない。
だけど、自分が負けて諦めたことを、クラスのみんなに笑われるのだけは嫌だった。
ボクシングに没頭した一ヶ月間を、すべて否定されるようで、我慢できなかったのだ。
相変わらずプロローグのような始まり方ですが。←ォィ