登場人物
千太キュンです。
山田さんです。
「はぁーい」
名前を呼ばれた僕は満面の笑みで振り返る。
「何やってんだ山田、変なもんでも食べたか?」
「・・ですよね」
ちょっと千太の真似をしてみたけど、所詮周りのリアクションはこんなもんだ。
僕は漁太、山田漁太。実家は漁師。
先代の707に引き続きこの新造潜水艦707に搭乗している。
でも名前を聞いて僕の顔が思い浮かぶ人は一体どれだけいるだろう。
本編でのカット数はそこそこある。
台詞だってある。
−海の竹下通りは大賑わいですよ−なんて気の利いたことだって言える。
なのに如何せん僕は存在感が薄い、千太はあんなに人気があるのに・・一体どこが違うんだろう、まあ真似してみても結果は散々だったけどさ。
あれ?本編?台詞?僕は何を言っているんだろう。
そんなことより、いま一番の問題はその千太だ。
千太は鈴木さんがソナー員としてスカウトしてきた子だから鈴木さんはこのところずっと千太につきっきり。
それまでは僕のところへ来ておしゃべりしたり僕の仕事っぷりを見守ってくれていたりしてたのに・・・。
それに変なうわさも耳にする、千太は速水艦長や炊事班の後藤さんとできてるって。
まさか鈴木さんもその一人に加わってしまわないかと心配でたまらない。
もちろん僕と鈴木さんはそんな仲じゃない、僕が一方的に慕っているだけ。
でもここはひとつ千太に釘を刺しておくべきだな。
「千太」
あれ、呼んでも返事しないや。
「千太くん、・・千太くん、・・千太!、・・・・千太きゅん★」
ええっ、千太きゅんで反応かい、くっ可愛いじゃないか。自分の可愛さを自覚しているな、君。
「・・です、山賀さん」
うわっ、山田って言ったそばから間違えるとはなんてお約束な!それとも僕を試しているのかい?
うーん、ここは「こいつぅ」とか言いながらおでこをつつくか・・それともほっぺた・・
はたまた鼻をブタっ鼻にしようか・・えぇー
い、いっそのことぎゅむって抱きしめてやろうか。
くっ、いけない僕は何を考えてるんだ。これは千太の魅力のなせる業?
結局デコピン。
とにかく呼び出すのは鈴木さんの・・僕の鈴木さんのため。
それ以外のやましい気持ちなんてないから、絶対・・・