登場人物
千太キュンです。
山田さんです。
あれから数日経っていた
今日は山田さんが職場復帰する日なんだ
ボクはどんな顔すればいいんだろう
あ、山田さんが来た
みんながねぎらいの言葉をかけてる
そう言えばあの日、山田さんの病室を出たあと・・
「鈴木さん、ボク山田さんが大丈夫だって分かりました」
「そうかい?」
「はい、どんなに傷ついて見失いそうになっても、鈴木さんに見守られているからそのまま突き進めるんだなって」
「あれ、どうしたんだい千太、そんな難しいセリフなんて、らしくないじゃないか」
「鈴木さん! あの・・その・・山田さんと同じようになんて言いません、その何分の一でもいいんで・・ボクのことも見ていてくれませんか!」
うわー言っちゃった、緊張でドキがムネムネだよぅ
「・・・」
沈黙が長いよぅ
「千太」
「はい」
顔を上げると、鈴木さんはにっこり微笑んでくれていた
あぁ、うれしい
今ようやく分かった
笑顔は作るものじゃないって
うれしい気持ちがあふれて、自然になっているものなんだって
今、ボクの顔はいままでで一番の・・
笑顔なんだろうな
あ、山田さんがこっちに来る
ついうつむいてしまう
どうしよう、どんな顔して話せばいいんだろう
ふっと顔を上げると、そこには山田さんの顔のアップ
「うわぁっ」
鼻と鼻、頬と頬、唇と唇が触れそうなくらいの距離
ドキドキした
「今夜、千太のコロッケが食べたい」
「え?」
山田さんは瞳をそらさずじっとボクを見ている
あぁ、山田さんはボクを、海野千太そのものを見てくれているんだ
「はいっ!」
うれしさがあふれてきた
あっ! でも!
「あっ! でも今夜は・・」
「?」
「その・・鈴木さんがボクのコロッケを食べに・・」
まずい
「でも、その、山田さんを出し抜こうとかそんなんじゃなくて」
「・・分かってるよ」
「え?」
そう言って山田さんは鈴木さんの方に振り向く
「鈴木さーん、今夜僕も千太のコロッケ食べに行ってもいいですよねー?」
鈴木さんはちょっとおどろいた顔をしたあとにっこり微笑んだ
「そうだね、千太のコロッケはみんなで食べたほうが楽しいもんな」
と、パクリってかぶりつくジェスチャー
山田さんが突っ込む
「鈴木さん、そのジェスチャー、コロッケじゃなくて・・」
ボクも続く
「フランクフルトでしょ〜?」
「ん?・・ポークビッツ」
ニコッと鈴木さん
「・・・」
「・・・」
「・・・」
顔を見合わせるボクら
その一瞬の沈黙のあと・・
大爆笑!
ボクは笑った、満面の笑みで
山田さんも笑った、笑いすぎで泣き笑いだ
あぁ、ボクは想う
この瞬間は続くんだって
いつまでも
★おわり★
わー太さん、ありがとうございました。またよろしくです。(^^)