ヤジロベーVSシンバルの決着はいかに?
登場人物
ヤジロベー。刀をもった大食漢で、ジャングルで風来坊な生活をしている。
シンバル。ピッコロ大魔王から生み出された魔族。太っているが動きは俊敏。手から雷を放出する。
「だぁ!」
ヤジロベーは気合の雄たけびとともに、シンバルの胸元に一気に飛び込んだ。
そして、短い足でシンバルのアゴに蹴りをぶち込む。
「とりゃ!」
『はんわーっ』
予想外の動きの早さに、シンバルは何も対応することができず、アゴにクリーンヒットを喰らってしまった。
(そんなバカな・・!)
そのまま後ろ向きに、ズドンと地響きを起こして倒れる。
ヤジロベーは、シンバルのアゴに一撃入れると、空中で一回転をし、体操選手のように見事に着地をした。
太った体からは想像もできない、しなやかな動きだ。
(このデブ、人間のパワーとスピードを超えてやがる・・)
シンバルは痛めたアゴをさすりながら、ゆっくりと立ち上がる。
額な薄っすらと汗を流しながら、ヤジロベーを睨みつけた。
『ううっ・・貴様・・!』
「やっぱり刺身じゃまずそうだから、焼いて食うか!」
『俺様を本気でおこらせたようだな』
シンバルは立ち上がると、片手をヤジロベーに向ける。
そして電気を集め始めた。
『フフフッ。魔族の力、みせてくれるわ!』
「ん? なんだ、あの光は・・?」
『フハハハ、死ねぇい!』
シンバルの手から、雷のような電撃が一気に放出された。
シンバルの手から放出された雷は、青白いビームとなってヤジロベーを襲う。
ヤジロベーは、それを間一髪、俊敏な動きでかわす。
「おわっ!」
「うりゃりゃ」
「あちゃちゃ!!」
電撃のスピードは凄まじく、ヤジロベーは避けるのに精一杯だ。
シンバルは薄ら笑いを浮かべながら、なおも電撃を放出し続ける。
『ワハハ、踊れ踊れ、もっと踊れ!』
ヤジロベーの電撃を避ける行動が、まるで曲芸のようであり、シンバルは思わず吹き出しそうになってしまう。
『ホラホラ、どうした!』
「あわっ、なんだコイツ、おかしな雷を出しやがる!」
『黒こげになって、あの世で後悔するがいい!』
形勢はシンバルに圧倒的に有利だ。
『トドメをさしてやる!』
シンバルは、さらに強力な雷を作り出そうと、手にパワーを集中しはじめた。
一瞬、電撃の放出が止まる。
ヤジロベーは、ほんのわずかな隙も見逃さない。
動きの止まったシンバルを牽制しながら、高速でジグザグに移動する。
そして片足を踏み込んで、数メートルはジャンプしたかと思うと、シンバルの眼前に現れた。
「このバケモンがー!!!」
『な、なんだと!』
手に電撃を集中していたシンバルは、油断していた。
普通の人間ならば、電撃が怖くて逃げるはずだ。
しかしヤジロベーは、電撃を充電するほんのわずかな隙に、攻撃をしかけてきたのである。
「てーりゃ!」
『フゴゲッ!!』
ヤジロベーの渾身のパンチが、シンバルのアゴを再びとらえた。
シンバルの顔が苦痛にゆがむ。
ヤジロベーの強力なパンチに、シンバルの巨体はフワッと浮きあがる。
「もういっちょ!」
ヤジロベーは、さらに加速する。
浮き上がったシンバルの背後に先回りして、シンバルの後頭部をサッカーボールのように蹴りつけたのだ。
──グジャン!!
シンバルの巨体は地面にもんどりうち、数回バウンドした。
ヤジロベーはドスリと地面に伏したシンバルの尻尾を握る。
「とおりゃー!!」
500kgはあろうかというシンハルの巨体を引きずる。
そのままジャイアントスイングするように、尻尾を持ってシンバルを宙でぐるぐると振り回す。
『そんなバカな!』
ヤジロベーは怪力で、シンバルを岩に叩き付けた。
あっという間の出来事だった。
グッタリと動かなくなったシンバルのお腹に、ヤジロベーはまたがる。
マウントポジションを取るような格好だ。
『ううっ・・バカな・・人間がこんな力を・・』
「おめゃ〜なんか、ヤジロベー様の敵じゃないでしょー!」
『ちくしょう、こんなデブに・・』
「デブ? あー頭くるだー。デブじゃねぇ! ヤんジロベー様だ」
──ドスドスッ!
ヤジロベーはシンバルのお腹に乗ったまま、どてっ腹にパンチを叩き込む。
『ふんぎゃああ!』
シンバルは抵抗することもできず、徐々にも虫の息となっていく。
『お、おのれ・・』
「このまま朝飯にして食ってやる。うまそうじゃないけどな」
『魔族の誇りにキズをつけおって・・許せん』
「許すも何も、俺のほうが強かったってことでしょ〜」
『ぬぬぬっ・・』
シンバルは口をすぼめ、まるで口笛を吹くように、ピューッと高音の波長を発した。
ヤジロベーは、頭痛がするような周波数の音に、思わず耳を塞ぐ。
「な、なんだぎゃ!?」
『フヘヘヘ。いまのうちに俺を食っておくんだな。そうしないと後悔することになるぜ』
シンバルは、くけけっと笑いをこぼす。
(な、なして余裕なんだ・・コイツ・・)
シンバルの意味深な発言が、ヤジロベーの心に妙にひっかかった。
死に際に吐くセリフとしては、まだ自分に勝ち目があるような言葉だ。
なにか危険な感じがする。
長年ジャングルで生死をくぐりぬけてきた、ヤジロベーの勘とでもいおうか。
しばらく考えこんだあと、ヤジロベーはシンバルの首根っこを掴んで、怒鳴りつける。
「後悔するってどういう意味だで!?」
『フフフッ。そのうち分かるさ』
「いま言え!」
『ホラ、お前があれこれ考えているうちに、もう背後に来ているぞ』
「な、なんだど!?」
ヤジロベーが慌てて後ろを振り向くと、そこにはシンバルと似たような緑色をした化け物が立っていた。
次回予告
ヤジロベー「一匹ぶっ殺したのに、またドラムとかいう魔族が現れやがった。俺様の敵じゃねぇと思うだけんど、コイツはかなり強そうに見えるだ。コイツも焼いて食ってやるだ」