半殺しにされることになったヤジロベーは?
登場人物
ヤジロベー。刀をもった大食漢で、ジャングルで風来坊な生活をしている。
シンバル。ピッコロ大魔王から生み出された魔族。太っているが動きは俊敏。
ドラム。ピッコロ大魔王から生み出された戦士タイプの魔族。怪力だが俊敏。
ヤジロベーは逃げようと、キョロキョロと隙を伺っていた。
『おい、ジンジロベー!』
話しかけてきたのはシンバルだった。
名前を訂正しようとしたが、もはやその気力もなくなってきた。
「な、なんですか?」
『お前まさか、トンズラしようなんて考えてるんじゃないだろうな?』
心を読んだようなシンバルの発言に、ヤジロベーは顔を引きつらせる。
「そ、そんなことあるわけないでしょー」
『そうかそうか。ではさっそく痛めつけるとしよう』
「その・・<恥辱のコース>で許してもらえねーだか?」
『ダメだな。もし嫌なら、いますぐピッコロ大魔王様にお越しいただこう。そのほうがいいか?』
「・・・・・・。死なない程度にお願いしますだ」
ヤジロベーは、観念した。
逃げることもできなくなった今、ここは耐えるしかない。
ピッコロ大魔王に殺されるくらいなら、シンバルの攻撃をなんとか耐え切って、生き延びるのが先決だと。
ヤジロベーがもっとも嫌いなことは、「死ぬこと」だ。
幸い、自分には超人的にタフな体がある。
シンバルに殴られたところで、死に至ることはないだろうと目算を立てたのだ。
「それでどうすれば・・?」
『抵抗するなよ、このデブが!!』
シンバルは、目にも留まらぬスピードで、ヤジロベーの眼前に現れる。
そのままヤジロベーのアゴを思いっきり、パンチで殴り飛ばした。
「うがっ!!」
アゴが砕かれるような苦痛が、ヤジロベーを襲った。
思わず、体が仰け反る。
必死に口元を手で覆い、なんとか踏みとどまる。
しかし、シンバルの容赦ない攻撃は続く。
『貴様はいい具合に太っているから、格好のサンドバッグだぜ』
シンバルの強烈な左右の連打攻撃。
その度にヤジロベーは首を左右に仰け反らせ、フラフラと倒れそうになる。
「はがっ、うげっ!」
『お寝んねするには、まだ早いんじゃねーか?』
「はわわっ、やめてくだせい・・」
『俺様の必殺技を受けてみろ!』
そういうと、シンバルはヤジロベーに背中を向けて、逞しい巨大な尻尾を一回転させる。
ぶるんと空を切る音がしたかと思うと、尻尾はヤジロベーの横腹に直撃した。
「はんが〜っ!!」
目から火花がでそうなほどの激痛が襲う。
『ヘヘッ。ストライクに決まったぜ!』
ヤジロベーは弾丸のようにはじかれて、一直線に岩に叩きつけらる。
──ドッカーン!
地響きの音とともに、岩はレンガのように崩れ落ちた。
「いででで・・・」
岩の瓦礫の中から、ヤジロベーはなんとか顔を出した。
周りの岩を振り払い、「はぁはぁ」と荒い呼吸をする。
痛みの走る横腹をかばいながら、ふらふらと立ち上がる。
そこに、薄ら笑いを浮かべたシンバルとドラムが近づいてきた。
『ムヒョヒョ。おもしろそうじゃねぇか。このドラム様もやりたくなってきたぜ』
『じゃ、一緒にやるか。ジンジロベーを半殺しだ』
「ぜえぜえ・・約束が違うだ!」
『ムヒョヒョ。殺さない程度にいたぶってやる。
そのあとにたっぷりと恥辱を与えてやるぜ。俺様もシンバルも、お前のようなデブが大好物だからな』
「じょ、冗談じゃねぇ!」
『頑丈そうな体だからな。殴りがいがあるぜ』
シンバルとドラムはヤジロベーを挟み撃ちにして、同時に襲い掛かる。
ヤジロベーは抵抗しようと試みるが、先ほどのシンバルの一撃でダメージからか、体の動きが鈍い。
シンバルが顔面を殴りつけ、ドラムがキックを浴びせる。
さすがのヤジロベーも、2匹に挟み撃ちにされては反撃の糸口もつかめない。
「がはっ! いで〜どっ!」
ヤジロベーは防戦一方で、ダメージを最小限にとどめようと、体を丸めて腹部などの急所をかばっていた。
ヤジロベーは、シンバルとドラムの間をピンボールのように弾かれた。
シンバルが殴り飛ばすと、それをドラムが受け止めて、そのまま蹴り返す。
「あへっ・・ほがっ・・」
何度も繰り返すうちに、ヤジロベーは足元がおぼつかなくなってきた。
そのうち、シンバルがヤジロベーの背後に回りこみ、羽交い絞めにした。
『どうした、どうした!? もうくたばっちまったのかい?』
「ううっ・・やり方がきたねーだ・・・」
『汚いだと? 俺様の顔に泥をぬった罰だぜ。おい、ジンジロベーのどてっ腹にパンチぶち込んでやれ』
シンバルは片目でドラムに軽く合図をする。
そして、ヤジロベーを羽交い絞めにしたまま、腹をドラムに突き出した。
『いい膨れ具合してるじゃねーか』
「や、やめれ・・」
ドラムは悪魔の笑みを浮かべながら、ヤジロベーの腹部にジロジロとみる。
そして、下腹部に強烈な腹パンチを加えた。
「げはっ、おえっ」
突き上げられるパンチに、思わず胃液を吐きそうになる。
ヤジロベーは奥歯をギュッと噛み締めて、腹筋にありったけの力を入れた。
『ほう、デブのくせに腹筋が強いじゃねーか。どこまで耐えられるかな?』
「げぼ、ごはっ」
ドスドスというドラムの重量級のパンチが、あたりに響き渡る。
ヤジロベーはギュッと目を瞑り、ただひたすらドラムのパンチを耐えぬいた。
『ハーハハッ、もう立っているのがやっとのようだな』
シンバルは、背後からの羽交い絞めをゆっくりと解いた。
「いでででで・・」
棒立ちになったヤジロベーは、痛めたお腹に両手を当ててうずくまる。
そんなヤジロベーをあざ笑うかのように、ドラムがトドメを差しに来る。
『ムヒョヒョ。これで終わりだぜ! タリャーッ!』
ドラムは、体を大きく一回転させて、遠心力をつける。
ヤジロベーの背中に向かって、強烈な後ろ回し蹴りを浴びせた。
「ほんげぇぇ!!」
ヤジロベーの体が丈夫だといっても、この一撃はさすがに堪えた。
超重量級のキックをまともに喰らい、ヤジロベーは、放物線を描くように大きく飛ばされる。
ボールのようにゴロンゴロンと地面を後ろ向きに転がる。
数十メートルは転がったのだろうか?
やがて岩にぶつかって停止する。
「あががが・・・」
ヤジロベーは気絶寸前となり、全身が痙攣していた。
大股を天に向かって広げ、ふんどしが丸見えになる。
魔族に無様な格好をさらすことになった。
次回予告
ヤジロベー「このままじゃ、ピッコロ大魔王が来る前に殺されちまうだ。なんとかしなくちゃ・・・」