ホァン×ズオウ小説(2)


今回は俺らしくない、ほのぼの系ですw


登場人物

ホァンです。中国の山奥で、ひっそりとミニ四駆を楽しむ12歳の少年。

ズオウです。白い毛で覆われたビッグフット。


心地よい風を切って走るホァン。
太った体からは、想像もつかない俊敏さだ。
(今日は東から気持ちいい風が吹いているアル! きっと会える・・)
ホァンは小さい頃から、爽やかな風が大好きだった。
自然を肌で感じ取る感覚と、その清々しさを楽しむ心を持っていた。
東からの風が吹く快晴の日は、ホァンにとって大切な日。
友達に会えるのは、決まってこの風が吹いていた。
ホァンの表情は自然と柔らかいものになる。
あっという間に、村の外れを通り過ぎたかと思うと、隣の山をピョンピョンと登っていく。
大きな体躯を揺らしながらも、かろやかなステップを踏む。
疲れというものを知らないのであろうか。
1時間ほど野山を駆け回ると、すでに山を越えて、「迷いの森」と呼ばれる深い森の入口に差し掛かった。


──迷いの森。
村人たちは、勝手にそう呼んでいる。
無数の樹木が行く手を遮り、しばらく中を進めば陽の光も届かない。
<決して、この森に入ってはいけない>
ホァンは小さい頃に、祖父にそう厳しく言われた記憶がある。
以前、どこかの国のよそ者が、珍しい動物を捕獲するといって、物々しい装備で「迷いの森」に侵入したことがあった。
しかし、誰も帰って来るものはいなかった。
「死の森」。
これこそが、この森の本当の名前だろう。
だから、この森に近づく者は誰もいなかった。


往々と茂る緑の大樹。
吹きつける風に、枝が擦りあう音だけが周りを支配する、不思議な空間。
ホァンは目の前に生い茂った大樹を見上げ、フウッとお腹に緑の空気を吸い込む。
爽やかな空気の味が、全身に染み渡るようだ。
そして、ゆっくりと息を吐きながら呟いた。
「ボクには見えるアル・・。あの大樹へ辿りつく道が・・。導いてくれ・・」
ホァンは精神を統一させるように、心を落ち着かせる。
ホァンが、再び森に視線を向けると・・。
暗がりの森に光る、一本の小道。
まるで、ホァンを導くスポットライトのようだ。
その光は、森の奥へ奥へと続いている。
「久しぶりに会いたいアル・・・ボクの大切な友達・・」
ホァンは、太った体を揺らしながら、小道が示すとおりに歩を進めていった。


森の小道を、両手を振って、ゆっくりと歩いていくホァン。
いつのまにか、ひらひらと舞う蝶が、肩の上に乗っている。
ウサギやリスといった小動物が、ホァンの姿を物珍しげにジッとみつめている。
小さな侵入者を歓迎しているのだろうか?
しばらく歩くと、光の道は徐々に細くなり、森も一層深くなっていく。
もし、小道から外れれば、漆黒の森に漂流してしまうだろう。
光の道の終点には、周りの木とは明らかに大きさの違う、巨樹がそびえていた。
風が吹くと、巨樹はゴゴゴッ・・と地響きするような枝が擦りあう音を奏でる。
巨樹の真上から、太陽の光が差し込んでおり、地面は真っ白に輝いている。


巨樹の根元に歩を進めたホァンは、キョロキョロと周りを見渡す。
そして、両手を口に添えながら、大きな声で叫んだ。
「ズオウー! ボクだよーっ、遊びに来たアル!!」
変声期を迎えて間もない、ホァンの声。
まだあどけなさの残る、可愛らしい声が、森の中に響き渡る。
「ズオウーッ、いないアルか!?」
ホァンは、しばらく周囲を見渡しながら、その場に立っていた。
風で枝が揺れる音だけが、周りをこだまする。
しばらく時が経っても、天から暖かい陽が差すだけで、何も変化はない。
(今日は会えると思ったのに・・・寂しいアル・・)
ずっと楽しみにしていた、久しぶりのズオウとの対面。
期待していただけに、ホァンはため息をつきながら、視線を落とした。


──ホァンがフッとうつむいた瞬間。
背後にドシーンッ!という、けたたましい轟音が響く同時に、地面が揺れた。
「わあっ!」
あまりに大きな音に、背中を丸め、耳を塞いだホァン。
大きな物体が、巨樹の上から飛び降りてきたことは容易に想像できた。


ホァンは、恐る恐る後ろを振り向き、土煙の中から現れた生物を確認しようとした。
しかし、それよりも早く、真っ白な毛むくじゃらの大きな腕が、ホァンを背後から包み込んでいた。
「ホァ〜ン、やっと会えた!」
まるで小さな女の子のような可愛い声。
巨体からは、想像もできない甲高さだ。
ホァンは、満面の笑みで振り向く。
「ズオウアルか?」
「ホァン〜! あーえた!」
ズオウと呼ばれるその生物は、ホァンを見て大きな口を広げ、「いひひ〜」と無邪気に笑う。
赤子のような笑顔とその声は、森中に響き渡り、すべてを和やかにするかのようだ。


ズオウは、雪のように白い毛並みを持ち、ホァンの3倍くらいの体躯の持ち主だった。
クマのような、大猿のような、人間のような、何者とも識別できぬ異形な生物。
しかし、ズオウはその巨体からは、想像もできないおちゃめな仕草をする。
ホァンを後ろから抱っこしたまま、ピョンピョンとステップを踏んで左右に飛び跳ねる。
「ホァンのこと、だ〜い好き! だ〜い好き!」
「わあ〜っ、ズオウ、放してアル〜」
ホァンの体は、12歳にしては大柄のはずなのだが、
  ズオウに抱きしめらると、まるでお人形さんのように、軽々と足は宙に浮いてしまう。
それにしても、「わーい、わーい」とはしゃぐズオウは、どうみても精神年齢は低い。
行動は幼児のように見えるが、ホァンに対する愛情は人一倍のようだ。


ズオウは、背後からゆっくりと、ホァンの耳に顔を近づける。
そして、耳元で囁く。
「ホァン〜、また会えてよかったー」
毛むくじゃらの顔を、ホァンの頬にすり寄せる。
フカフカの羽毛のような、心地よい感触。
「ズオウ、くすぐったいアル・・」
「ホァンの頬っぺた、とーってもあったかい!」
何度も何度も、顔を擦り付けてくるズオウ。
そのフワフワした感触に、、ホァンは目を閉じて、安堵の表情を浮かべた。
「ズオウ、ずっと会いたかったアルヨ」
「えへへ」
「1ヵ月ぶりのことヨ」
「あれ〜? ホァン、また太ったー!」
久しぶりの対面だというのに、コロッと話題を変えているズオウ。
相変わらず人の話を聞かないマイペースぶりだなぁと、ホァンは内心思った。
「ホァン、太ったー!」
その言葉を聞いて、ホァンは頬を赤らめる。
どうやら、体重のことを言われると、ホァンは少し恥ずかしいらしい。
「ふ、太ってないアルよ」
「そんなことないーっ!」
ズオウは、ホァンの太り具合を確認しようと、
 背後から、ホァンのまん丸と突き出たお腹を、ギュッと抱え上げる。
「あああっ、ズオウ、やめるアル!」
「ホァンのお腹、すごい大きくなったー!」
ぎゅうぎゅうとお腹を触ってくるズオウ。
「苦しいアル〜」
ホァンは、大きな太鼓腹をグイっと力任せに抱かれ、息を詰まらせた。


──ズオウと過ごす時間とき・・。
ボクとズオウが一緒にいるときは、いつもこんな感じアル。
ズオウのフカフカのお腹の中に包まれたり、密着したり、一緒に寝転んだり、昼寝したり。
じゃれあって、まるで相撲ように遊んだりすることもある。
なにか目的を持って遊ぶわけでもなく、なんとなくゴロゴロとしているほうが多いかもしれない。
ズオウと一緒にいること自体が、とても楽しいアル!
ボクは昼寝が大好きだし、ズオウも寝ることが大好きみたい。
お互い、似たもの同士なのかな・・。
ボクはズオウの胸に抱かれながら、いろんなことを話すんだ。
今日の天気や、ボクが興味があるモノや、村の出来事・・・何の変哲もない日常の話ばかりだけど・・。
でも、ズオウはボクの話に、「おもしろい〜」とか「よかったー」と、相槌を打ってくれる。
ボクの話には、なんでも興味があるみたいに見える。
ズオウと話していると、とっても楽しいアル!


ズオウが人間なのか、言葉を話すクマなのか、何者なのか全然分からない・・。
たしか、ズオウ自身が「僕はビッグフット」と言っていたけど・・・それってなんだろう?
──白い毛むくじゃらの、言葉を話す不思議な動物。
いまのボクには、そうとしかいいようがない。
「迷いの森」には昔から変わった動物がいるという話を、おじいちゃんから聞いていたから、
  ズオウみたいな動物もいるのかなと、何も考えずに受け入れてしまっていた。
ズオウが何者であろうと、そんなことはボクには関係ないんだ。
だって、友達なんだもの。
ボクのたった一人の大切な友達・・。


次回からエロいです。(←ォィ)

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