登場人物

金太郎。足柄山で育った怪力少年で、モンスターと戦う見習いハンター。

ジライヤ。アイルーというネコ獣人で金太郎のサポート役。


──遠い遠い世界でのお話。
"伝説のハンター"と呼ばれる男がいた。
その男は、身の丈を裕に超える真っ赤な大剣を背負い、鋼の鎧に身をまとっていた。
目の前には、ティガレックスという巨大な轟竜。
体長が10m以上あり、茶色とオレンジをまだらにしたような独特の硬い皮膚を持つモンスターだ。
トグロを巻くように、雪山にドッサリと横たわっている。
男は、悠然と剣を背中から抜いて、構える。
「ハァッ」と気合を入れると、全身から金色の光が放たれた。
その輝きは、人間から発しているのだろうか?
『グォーーッ!!』
ティガレックスは男の殺気を感じたのか、大地を揺るがすような雄たけびをあげて、男を威嚇した。
しかし、男の気迫とその輝きは、モンスターを後退させるほどの威圧感があった。
男は、剣を後ろに構え、そのまま正面に横一文字に振るう。
すると剣から炎が放たれて、まるで一本の火の刀を形作り、ティガレックスを一刀両断にしたのだ。
・・・・。
・・・。


「ねぇ、母ちゃん? それで伝説のハンターはどうなったの?」
<まだ起きていたのかい?>
1人の少年が布団の中から顔を出して、母親に尋ねた。
「だって、おいらハンターの話が大好きだもん。それで金色のハンターはどうなったんだ!?」
<この話はこれでおしまい>
「えー、母ちゃんが話してくれるハンターの話って、全部途中で終わってるぞぉ」
<金太郎も、伝説のハンターさんみたいに強くなれるかしら?>
「うん。おいら足柄山じゃ、まだ一度も負けたことないんだから」
少年は眠る前に、ハンターの伝説を母親から聞くのを楽しみにしていた。
そして自分もいつか、光り輝くハンターになりたいと思っていた。
この世界には、モンスターとハンターの伝説がたくさんある。
ある日突然、この世界にモンスターが現れて、人間を襲うというのだ。
そして、人間の中にモンスターに対抗する者、つまりハンターが現れる。
ハンターとモンスターは死闘を繰り広げ、モンスターを倒したハンターは村の英雄となる。
しかし平和なったはずの村と、英雄となったハンターが、その後どうなったのかは語られない。
どの言い伝えも、なぜかモンスターとハンターの戦いの記録だけで、その先は途絶えているのだ。


時は流れて5年後──。
「とりゃ〜!!」
一面が白銀に覆われた雪山で、1人の太った少年とモンスターたちが対峙していた。
その少年は、赤い前掛け一枚の格好で、ほとんど素っ裸に近い。
普通の人間ならば、寒さで凍ってしまいそうな格好だ。
しかし、その少年は裸足のまま、元気に大地を駆けていた。
手足は短いが、丸太のように太くて逞しい。
腕には、自分の身長よりも大きなマサカリ。
ブルンブルンと頭の上で振り回す。
「行っくぞ〜! ブランゴども!」
少年は大声で気合を入れて、取り囲むモンスター軍団に立ち向かう。
まだ変声期を迎えていない、あどけない声だ。
しかし、可愛らしい声や太った体からは想像もできないスピードで、一匹のモンスターに急接近し、
 数メートルは飛び上がったかと思うと、担いだマサカリを一気に振り下ろした。
「まずは1匹目だぁ!」
<フギャアア!>


モンスターの脳天に、少年のマサカリが鈍い音を立てて命中する。
モンスターは悲鳴をあげながら、失神したように倒れこんだ。
「おめーらなんか、おいらの敵じゃねぇ!」


その少年が"ブランゴ"と呼んだモンスターたちは、
  雪山をねじろとする猛獣で四つ足で歩き、真っ白な毛で覆われたマントヒヒのような格好をしていた。
数は6匹もおり、物々しく少年をぐるりと円形に取り囲んでいる。
フーッと鼻から白い息を吐きながら、集団で少年の隙をうかがっていた。
傍からみれば、ブランゴ軍団が圧倒的に有利な体勢なのだが、たった1人の少年が気迫で圧倒していた。
少年は、前後左右をキョロキョロと見渡して、ありったけの声で叫んだ。
「さぁ、次はどいつだ!? かかってきやがれ!」
少年はニッと笑みを浮かべると、マサカリを両手で持って構えた。
<グォオオオ!>
ブランゴ軍団は、ノシリノシリと少年の周りを時計回りに走り始める。
やがてスピードを増すと、地響きを立てるように少年を囲んでぐるぐると駆ける。
「うわっ、目が回っちまう!」
残像を残すような速さで、目を眩ますブランゴ軍団。


一瞬、少年が怯む。
そのスキをみて、背後にいる一匹のブランゴが飛び掛かった。
「金太郎、後ろだニャ!!」
その声は、か細いが冷たい雪の中ではよく響いた。
"金太郎"と呼ばれた少年は、声に反応してすぐに後ろを振り向く。
<グォオオオ!>
「後ろから不意打ちなんて、きったねーヤツめ!」
牙をむいて飛び掛かるブランゴに対し、少年はマサカリの頭の上に水平にかざしてガードの体制をとる。
空中で勢いをつけたブランゴは、そのまま少年めがけて飛び掛るが、
 マサカリで牙をしっかりと受け止められてしまい、ぶつかった反動で元にいた方向に押し戻された。


押し戻されたブランゴは、一回転して着地すると再び襲い掛かろうとする。
しかし、その背後の地中からヌーッとハンマーが伸びる。
そして、地面からネコのような動物が飛び出して、ブランゴの頭をポカン!と殴った。
<ピヨピヨ・・・>
よほど当たり所が良かったのか、悪かったのか。
まるで頭にいくつもの星が回るように、ブランゴはその場で千鳥足となる。
「いまだニャ、金太郎!」
「ジライヤ、よくやったぞ! とりゃ〜!」
少年は再び数メートルは飛び上がると、ブランゴに向かってマサカリを一気に振り下ろした。
「2匹目!」
<ギャアア!>
あっという間に2匹目のブランゴも撃沈した。


少年と小さな動物は、すぐさまお互いに駆け寄って背と背をぶつける。
「金太郎、大丈夫ニャ?」
「あったりめーだろ。ジライヤこそ、いままでどこに行ってたんだ?」
「このブランゴ軍団を操っている首謀者を探していたニャ」
驚いたことに、ネコのような動物は人の言葉を話していた。
──金太郎とジライヤ。
怪力少年の名前は『金太郎』。
ネコのような小さな獣人は『ジライヤ』。
金太郎が敵を一掃する戦士役、ジライヤは状況を冷静に分析する参謀役で、お互いが協力して戦っているのだ。


第2話「金太郎のノーコンピッチャー」をお楽しみに。次の話を読む


おまけコーナー

今回から始まった「金太郎 in MonsterHunter Portable 2ndG」はいかがでしょうか? ゲームを全く知らない人のためにマメ知識として、小説に登場するモンスターや武器、そして世界観の説明をできればいいなぁと思っています。これを見てモンスターハンターをプレーしたくなった方は、すぐに購入してやってみましょう〜! 楽しいですよ!

モンスターハンターの世界

プレイヤーがハンター(人間)となり、巨大なモンスターを狩る(倒す、罠にかけて捕獲する)ゲームです。モンスターに対抗するために、さまざまなアイテムを駆使したり、他のプレイヤーと協力して戦うことができます。また討伐したモンスターから武器や防具を作るのも楽しい要素の1つ。アクション性は要求されますが、慣れればモンスターの弱点を見つけて攻略することができ、ゲームバランスも優れていますヨ。
MonsterHunterは、PCゲーム、PSP、Wiiなどで発売されていますが、ファミレスなどで気軽に友達と出来るPSP用の"2ndG"がオススメです(あんまり長居すると追い出されますけどw)。2009/夏にはWii版のMonsterHunter3も登場する予定ですので、筆者はプレーしたいと思ってます!


今回登場したモンスター

このコーナーは小説に登場したモンスターが、ゲーム中では実際にどんな姿なのかを紹介します。

ティガレックス
恐ろしい風貌を持つ轟竜。攻撃範囲の広さや、怒り時の爆発力が他のモンスターよりも群を抜いており、序盤から終盤までプレイヤーを苦しめる難敵。怒ると肌が真っ赤になり、圧倒的な突進力でハンターを即死に追い込む。小説本編ではプロローグに登場し、金太郎が憧れている"伝説のハンター"に一刀両断にされた。

ブランゴ
雪山に生息する猿のようなモンスター。ザコモンスターだが、前後左右にステップを踏んでプレイヤーの攻撃を避ける技巧派。小説本編では集団で金太郎に襲い掛かり、連携攻撃もみせている。

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