金太郎 in MonsterHunterPortable2ndG (4)



登場人物

金太郎。足柄山で育った怪力少年で、モンスターと戦う見習いハンター。

ジライヤ。アイルーというネコ獣人で金太郎のサポート役。

ドドブランゴ。雪獅子と異名をとる牙獣種で、雪山のボス。


「とりゃーーっ!」
ドドブランゴの真上から、マサカリを振り下ろす金太郎。
先ほどのドドブランゴのタックルを、金太郎は瞬時にジャンプをして避けていた。
ドドブランゴは、完全に不意をつかれた形となった。
まさか人間が数メートルもジャンプして、攻撃を避けるとは思わなかったのだ。
『そんなバカな!』
「子供だからって、なめるんじゃねぇぞぉ!」
金太郎はえびぞりになって勢いをつけて、マサカリを思いっきり振り下ろす。
マサカリの刃がドドブランゴの脳天に突き刺ささろうとした、その瞬間・・。
ドドブランゴは自分の腕を頭上にあげてガードし、最悪の事態をまぬがれた。
『ギャアアア!!』
しかし、金太郎のマサカリは、容赦なくドドブランゴの腕に突き刺さる。
ドドブランゴは即死を免れたものの、一気に大ダメージを喰らってしまった。


『ググッ・・、貴様、本当に人間か・・?』
ドドブランゴは金太郎にやられた腕をかばいながら、その場にガクリと肩膝をついた。
一方の金太郎は、空中で綺麗に一回転すると、そのままドドブランゴの正面に着地する。
金太郎は「えへん」と笑みを浮かべて、ドドブランゴに向かって話しかけた。
「おいらは人間に決まってるぞ。おめー、口ほど強くねぇな」
『くっ・・・。小僧のくせに、もう勝ったつもりか?』
「もう悪いことはやめて、おとなしく降参したほうがいいぞ!」
『・・・』
ドドブランゴはダメージを追った腕をかばいながら、金太郎のスキを伺う。
しかし、金太郎の眼光は鋭く、スキらしいスキは見つからなかった。
それどころか、金太郎の闘気はドドブランゴに大きなプレッシャーをかけていたのだ。
(クソッ、人間のガキのくせに・・・強さは本物だ・・)


金太郎はマサカリを正面に構えて、ジリジリと詰め寄っていく。
ドドブランゴは、わずかではあるがズルズルと後退を始めていた。
(クソッ、なんということだ。雪獅子と異名をとる俺様が、人間のガキ相手に・・)
さらに一歩、また一歩と迫る金太郎。
ドドブランゴは額に汗が流しながら、この危機をどう乗り越えようか考えていた。
(こんなガキに負けては、俺様を雪山のボスに任命してくれたラージャンの兄貴に合わせる顔がない。
  しかし、このガキは強い・・。スキらしいスキが全くない・・なにか手を打たなければ負けてしまう・・)
ドドブランゴはなにかを思案したのか、突然に大きな体を縮めて、へいこらと頭をさげる。
突然の豹変ぶりに、金太郎は驚いたような声を上げた。
「な、なんだぁ!?」
『スマン、俺が悪かった。だから許してくれ』
「えーっ、これから本気でやろうと思ったのに。つまんねぇぞ!」
『頼むから、命だけは助けてくれ』
許しを乞うように、必死に頭をさげるドドブランゴ。


ドドブランゴの拍子抜けするような発言に、金太郎は呆れてため息をついた。
マサカリを肩に乗せて、きっぱりと言い放つ。
「じゃ、おめーの負けでいいな?」
『あぁ、構わん』
「本当はおめーを殺さないとクエストが成功にならないんだけど・・。この場合どうなるのかな? ねぇジライヤ?」
金太郎がドドブランゴの処遇について尋ねようと、ふと後ろを向いた瞬間・・・。
『このバカめが〜!!!』
ドドブランゴは大きく息を吸って、冷気を集めて一気に放出した。
──『氷殺弾ブリザードブレス!』
それはドドブランゴが前方広範囲に吐いた、必殺技の冷気ブレス。
「うわぁあああ、なんだこれ!?」
金太郎がびっくりして自分の体を見ると、首から下は氷で固められて自由が利かない。
まるで雪ダルマから人間の首だけが出ているような、なんともマヌケな格好だ。
「おいら、雪ダルマみたいになっちまった!」
『ハーハハッ、油断したな。金太郎ダルマの一丁上がりだ。手も足も出ないだろう。ゆっくり料理してやる』
「く、くそっ! きたねーぞ!」



金太郎は手足に懸命に力をいれて、体を拘束する氷を砕こうとする。
しかし、氷は金太郎の力をしても、簡単には破壊できなかった。
どうやらドドブランゴのブレスは、ただの氷ではなく、もっと硬い物質で作られているらしい。
『ハーハハ、もう貴様は終わりだ!』
ドドブランゴは、必死にもがく金太郎にスキを与えなかった。
片手のツメを伸ばし、金太郎の体を引き裂くように攻撃を加える。
金太郎はまともに走ることもできず、その場で地面に回転して避ける以外に方法がない。
「おわっ!」
「ありゃりゃ」
「わちゃちゃ!!」
ドドブランゴの爪の猛攻は凄まじく、金太郎は避けるのに精一杯だ。
『アーハハッ、踊れ踊れ! 貴様にはそのヌマケな格好がお似合いだ!』
ゴロンゴロンと回転して避ける金太郎の行動が、
  まるで曲芸のようであり、ドドブランゴは思わず吹き出しそうになってしまう。
『ホラホラ、どうした!』
「ちくしょう、正々堂々と勝負しやがれ!」


『いい加減に鬼ごっこは終わりにしよう』
ドドブランゴは、チョロチョロと逃げ回る金太郎に業を煮やしてきたのか、腕を大きく振りかぶる。
地面を力まかせに叩きつけると、雪山全体が揺れるような、激しい振動が起こった。
「うわわ!」
金太郎はその場でよろめいて、ステンと尻餅をつく。
『フフフッ。これでもう後がないぞ。ペシャンコになって、あの世で後悔するがいい!』
ドドブランゴは金太郎にトドメを刺そうと、両手を結んで頭の上に大きく振りかぶった。
しかし、そのスキを待っていたかのように、地面に潜っていたジライヤがヒョイと現れた。
片手に持っていた薬品を金太郎に投げつけると、それが破裂して液体が零れて、
  金太郎をがんじがらめにしていた氷が、まるでガラスのように崩れていったのだ。
「解氷剤だニャー。持ってきてよかったニャ!」
「サンキュー、助かったよ!」
金太郎とジライヤは、目と目で合図をする。
息の合ったコンビプレーだ。
「金太郎、ドドブランゴの攻撃が来るニャ!」
「うん、分かってる!」
『おのれ・・もう遅いわ!!』
ドドブランゴの振り上げた豪腕が、金太郎の頭上から一気に下ろされた。


金太郎の頭上から振り下ろされた、ドドブランゴの豪腕。
しかし、その腕は金太郎をペシャンコにする前に、一本のマサカリに阻まれていた。
『な、なんだと!』
「えへへ。マサカリは、攻撃するだけのものじゃないもんね」
金太郎はマサカリをしっかりと両手で頭上に掲げ、ドドブランゴの腕をガードしていたのだ。
ドドブランゴは、額に血管を浮かせながら、金太郎をマサカリごと潰そうと上から力をいれる。
『ぬぬぬーっ! 潰れてしまえ!』
「力比べなら負けるかぁ!! とおりゃー!」
金太郎はドドブランゴにも負けない雄たけびをあげて、マサカリを一気に押し戻す。
圧倒的なパワーに、さすがのドドブランゴも押し戻されて、ドッシンと腰を地面につけた。


『この俺様のパワーを跳ね返すとは・・・まさかお前は・・・』
ドドブランゴは、パワーでたかが子供に負けたことがショックだったのか、表情を凍らせた。
ふと正面に視線を向けると、先ほどまでそこにいたはずの金太郎がいなくなっている。
『なに・・どこへ行った・・?』
キョロキョロと周りを見渡すドドブランゴ。
「1・・2・・3・・」
わずかに聞こえる、カウントアップする声。
『ま、まさか・・』
「・・4・・5。おいらの力のすべてを溜めた、必殺技を受けてみろー!!」
ドドブランゴが後ろを振り返ると、
  そこにはマサカリを頭の上で大きく振りかぶり、パワーを溜め続けている金太郎の姿があった。
『まさか、その技は!?』
「受けてみろ。おいらの必殺技、マサカリストリーム!!」
金太郎は溜めに溜めたパワーをすべて解放するかのように、マサカリを縦一文字に振り下ろした。


『ぎゃああああ!!』
縦に振り下ろされたマサカリから、まるで竜巻のような強烈な空気のうねりが発生する。
その場に真空を作り出す。
パワーをすべてマサカリに伝達して一気に発射する、金太郎の必殺技。
それがマサカリストリーム。
『ひぃええ〜! ラージャンのアニキ〜!!』
マサカリストリームをまともに喰らい、ドドブランゴは遥か彼方に飛んでいった。
金太郎はおでこに手を当てながら、その様子を眺める。
「あれれ、マサカリが突き刺さらずに、弾き飛ばしちまった。ま、いいか」
「金太郎、わざと力を抜いたニャ!?」
「えへへ、バレちゃった?」
「真のマサカリストリームなら、ドドブランゴに突き刺さったはずニャ。
  力を抜けばマサカリからの突風で、向きがずれるニャ。だから弾き飛んでしまったニャ!」
「だっておいら、アイツとまた戦いたいもん」
「ドドブランゴを倒せば、貴重な"雪獅子の毛や牙"が手に入ったニャ! 村のみんなも必要だったニャ!」
「おいら、そんなの関係ねーもん」
「まぁいいニャ。あれだけ吹っ飛べば死んだニャ」
「えー、死んじゃったの!? また戦えると思ったのに。まぁいいか」
金太郎とジライヤは、お互いに顔を見合ってニコリと笑う。


「やっと終わったニャ。あとは村のために雪山草を採取してから帰るニャ」
「うん。じゃ、それはジライヤに任せるから、終わったら言ってくれ」
「金太郎も一緒に探すニャ!」
「ふぁ〜ああ・・その仕事はジライヤに任せるよ・・おいら疲れた・・」
そういうと、金太郎はその場であぐらを書いてコクリコクリとし始めた。
「金太郎、それじゃ一人前のハンターにはなれないニャ!」
「ムニュ・・おいらもう一人前だ・・・」
あっという間に眠ってしまったのだろうか?
ジライヤは、金太郎のあどけない寝顔を見ると、それ以上のことはなにも言えなかった。
(まだお母さんが恋しくなるような子供が、雪山のボスモンスターを倒したニャ・・。
  まだまだ半人前のハンターだけど、ボクかその分しっかりとサポートしてあげるニャ)
ジライヤは金太郎の頭をゆっくりと撫でると、一本の暖かい飲み物を金太郎のお腹の上に置く。
「寒くなったらホットドリンクをちゃんと飲むニャ」
「うん・・母ちゃん・・クマ五郎・・おいらやったよ・・」
ジライヤは、金太郎の体をそっと抱きしめると、そのまま草を探しに雪山の中に消えた。


第5話「ポッケ村の村長さん」をお楽しみに。次の話を読む



戻る