金太郎 in MonsterHunterPortable2ndG (9)



登場人物

金太郎。足柄山で育った怪力少年で、モンスターと戦う見習いハンター。

ジライヤ。アイルーというネコ獣人で金太郎のサポート役。

ポッケ村の村長。クエストをハンターに依頼する。


村長の説明は、次のようなものだった。
ニセモノのハンターがクエストを受けてから、たしかに雪山のモンスターは出没しなくなった。
しかし、村長は雪山のモンスターの気配を、依然として感じていたのだという。
つまり、あのハンターが本当にモンスターを倒したのかは、誰にも分からなかったのだ。
それに、奇怪な点が多かったという。
彼は、なぜか金太郎のことをしきりに村人に聞いていたというのだ。
まるで、金太郎の弱点を探るかのように。
さらに、村のあちこちを見回り、何かを探していたらしい。
それが村を守護する"黒いかけら"だったとすれば、彼は村を襲う準備をしていたことになる。


村長は言葉を詰まらせながら、金太郎に話しかけた。
「あのハンターが、まさか我らを裏切るとはのう・・」
「婆ちゃん、あのハンターはモンスターと仲間なんじゃねーのか!?」
「この婆にも分からん・・。人間とモンスターが手を組むなど・・・信じられんことじゃ」
村長の厳しい顔つきに、金太郎はゴクリと唾を飲み込む。
しかし、すぐに拳をギュッと握り締めて、叫んだ。
「ちくしょう、あのニセモノハンターめ! おいらが全員まとめてぶっ飛ばしてやる!」
「村を襲ってきたモンスターは、"ババコンガ"という桃毛色の牙獣じゃ。
  もう村はめちゃくちゃじゃ。それにババコンガは金太郎の名前をしきりに叫んでおった。おぬしを探しておる」
「えー、おいらに挑戦してきのたか?」
「今回のポッケ村襲撃は、以前におぬしが仕留めそこなったドドブランゴが絡んでおる。
  おそらくヤツはまだ生きていて、金太郎を倒すために村に偵察を入れてきたのじゃ。
  だから、十分に気をつけるのじゃ。金太郎、おぬしは研究されているかもしれんぞ」
「おいら、そんなの平気だもん」
金太郎は両腕を頭の後ろに回し、余裕の表情を見せた。
「ならばまずババコンガとニセモノのハンターを倒すのじゃ。
  そして、すぐに沼地に潜んでいると思われるドドブランゴも討伐して欲しい。
  さらにニセモノのハンターから、黒いかけらを取り戻すのも任務じゃ。
  ババコンガとドドブランゴ、ニセモノのハンターと、手ごわい敵が多いが、やってくれるか?」
村長の言葉に、金太郎はニッと笑顔を浮かべる。
「やったー! ドドブランゴとはもう一度戦いたいと思っていたんだ。嬉しい!
  それにあのニセモノハンターもぶっ飛ばせるし、ババコンガってヤツも!」
わーいわーいと、両手をあげる金太郎。


──ビシッ!
あっけらかんと笑う金太郎に対し、ジライヤは金太郎の頬をバシッと平手打ちにした。
「このバカ金太郎!!」
「痛てて、ジライヤ、何するんだ!」
金太郎はヒリヒリとする頬を擦りながら、ジライヤを睨み付ける。
いつもは冷静なジライヤが、なぜか顔が赤黒く染めて怒りをあらわにしていた。
「いま言ったことを取り消すニャ。村長に謝るニャー!!」
「な、なして謝るんだ!? おいら、またドドブランゴと戦えると思うと、嬉しくてうずうずしてくるんだぞ」
「そういう問題じゃないニャ。金太郎がドドブランゴにトドメを刺さなかったのが悪いニャ。
  だからポッケ村が大変なことになったニャ。多くの村の人たちが死んだニャ!
  それを"また戦えて嬉しい"なんて、不謹慎にもほどがあるニャ!!」
「ふ、ふきんしん・・?」
「バカって意味ニャ!!」
「バカってなんだ!? おいらがドドブランゴを吹っ飛ばしたから村が平和になったんだぞ。おいらのおかげだろ!?」
「偉そうな口を叩くニャ! まだ一人前のハンターでもないくせに!」
「なんだとぉ!」
ジライヤの言葉に、金太郎も顔を紅潮させる。


金太郎は怒り心頭になり、ジライヤに怒鳴った。
「おいらがどうして一人前のハンターじゃないんだ!?」
「モンスターと戦うだけが、一人前のハンターじゃないニャ! 腹掛け一枚で戦っているハンターなんていないニャ!」
「この腹掛けは、おいらの大切なもんだ。なしてジライヤに文句言われなくちゃならねーんだ!」
「一流のハンターならちゃんと鎧を着て、武器もパワーアップさせるニャ! 
  敵に合わせた装備が必要ニャ! 調合も自分でするニャ! そして村の人たちを守るニャ!」
ジライヤの言葉に、金太郎はムツッとした顔で答えた。
「どーせ村の人たちはおいらをハンターと認めてないんだ。だから関係ないもん」
「いつまでも甘ったれたことを言ってるから、村人からもハンターと認められないニャ!
  金太郎は半人前のハンターだニャ! 金太郎はまだ一流のハンターにはなっていないニャ!」
「ううーっ、2回も同じこと言うな!」
「分からないから言ってるニャ。金太郎は1年前と何も変わってないニャ。ずっと子供のままだニャ!」
「うっ、うっ、なんだとー!!」
「村はちっとも平和になってないニャ。金太郎はただ自分のために戦っているだけだニャ!」
「い、いわせておけばー!」
金太郎はさらに怒気を漲らせる。
どうやら金太郎の自信、すなわち"自分が一人前のハンターである"という事実を否定され、頭に血が上ったらしい。
金太郎とジライヤは、しばらく睨みあって火花を散らせた。


険悪になった2人を取り持つように、村長があいだに割って入った。
「いい加減にするのじゃ! いまお前らがケンカをしてどうする?」
「でも、金太郎が悪いニャ!」
「そんなことあるもんかぁ! ジライヤが悪い!」
2人の言い合いに、村長はひとつ大きなため息をつき、冷静な声で続けた。
「とにかく、緊急クエストなんじゃ。これ以上はケンカは許さんぞ」
村長の言葉を聞いて、金太郎はプイと横を向いた。
「じゃあ、今回のクエストは、おいらが1人で全部やる!」
ジライヤはすぐに反論する。
「ムリするニャ。金太郎1人じゃ何もできないニャ」
「うっうっ、うるせー! ジライヤなんていなくても平気だ。
  1人でドドブランゴを倒せば、今度こそ村の人たちも信じてくれらぁ。だからおいらが1人でやる!」
「アイテムは何を持っていくつもりニャ? ドドブランゴがどこにいるのか分かるのかニャ?」
「アイテムなんかいらない! ドドブランゴは沼地を全部走って探す!」
金太郎はマサカリを握って肩に担ぐ。
そして、ヘソを曲げたように、1人でポッケ村に向かって走り出した。
「金太郎、待つニャ!」
「ジライヤは来るなよ! おいらが一人前のハンターだってことを証明するんだ!」
「1人じゃ危ないニャ! 金太郎!」
ジライヤは金太郎の後ろ姿を見て、嫌な予感がした。
すぐにジライヤも金太郎のあとを追ったが、彼の快足には到底ついていくことかできなかった。


次回、第10話「ババコンガ襲撃。金太郎VSニセモノのハンター」をお楽しみに。次の話を読む



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