金太郎 in MonsterHunterPortable2ndG (10)



登場人物

金太郎。足柄山で育った怪力少年で、モンスターと戦う見習いハンター。


金太郎がポッケ村の入り口に到着すると、多くの建物が瓦礫と化していた。
賑わいを見せていたお店は、壁や屋根が破壊され、商品があちこちに転がっている。
その光景を見て、金太郎は怒りがこみ上げてきた。
(ちくしょう、ポッケ村をめちゃくちゃにしやがって・・!)
近くではブランゴ軍団が所狭しと暴れ周り、逃げ回る村人たちを襲っていた。
爪で村人を一突きして、次々に惨殺していく。
その光景に、金太郎は髪が逆立つような声をあげた。
「やめろーっ!!」
金太郎はマサカリを振りかざして、村人を襲うモンスターの前に両手を広げて立ちふさがる。
すると、モンスターに命令をしている男、いやニセモノのハンターが現れた。


男は、くくっと笑いを押し殺すように金太郎に話しかけた。
<フフフッ、金太郎。やっと来たか>
「おめー、モンスターの仲間だったのか!?」
<そうだ。ようやくババコンガ様のお役に立てるときがきたのだ。
  モンスターに転生できず、ただ生きながらえてきた俺の悔しさを晴らしてやる>
「ハンターが人間を襲うなんて、おかしいぞぉ! おいらがやっつける!」
金太郎はマサカリを両手で構え、早くも戦闘態勢に入る。
しかし、男は冷静に笑みを浮かべた。
<お前のことを調べたが、分からないことが多くてな。お前は自分の過去を、一切話していないらしいな。
  金太郎、お前はどこから来た? どうやってその力を身につけた? まさか生まれ持っての力なのか?>
「うっ・・」
男の質問に、金太郎は横に視線をずらした。
<ほほう。過去に何かがあったのだな? 
  では1つ聞こう。お前は"転生の血"という言葉を聞いたことがあるか?>
「てんせい・・? なに言ってんだ?」
<フフフッ、所詮子供には知らぬことか。ならばいい。
  お前のことで、わずかだが分かったことがある。お前は金色に輝く伝説のハンターに憧れているらしいな?
  そのハンターが使っていた武器を、偶然この村の鍛冶屋で見つけた。"炎剣リオレウス"、この剣だ!>
そういうと、男は背中に背負っていた巨大な剣を抜いて、構える。
その剣は黒光りをして、剣先は尖っているというよりは龍の鱗で堅く覆われており、真っ赤な色をしていた。
なにか寒気がするような雰囲気だ。
「な、なんだよ・・その剣は・・」
<この剣は、その昔にお前の憧れる伝説のハンターが、轟竜ティガレックスを倒したときのものだ。
  なぜかババコンガ様がこの伝説の剣を探しておられてな。これはいい土産ができた>
その言葉を聞いて、金太郎は額にうっすらと汗を流した。
(轟竜ティガレックス・・母ちゃんが話してくれたモンスターと同じ名前だ・・)


金太郎は呆然と炎剣リオレウスを見入っていたが、すぐに切り返した。
「伝説のハンターとか、伝説の剣とか、でたらめを言うな!」
<フフフ、お前の憧れる伝説のハンターの剣がここにあるのだ。俺と手を組めば、少しだけ使わせてやってもいい>
「おいらはそんなの興味ねぇ!!」
<まぁいいさ。この剣でお前をひざまずかせてやろう。力ずくも悪くない。
  炎剣リオレウスはモンスターに転生できる資質のある者しか使えないという。俺は使いこなしてみせる>
「おめーのいってること、意味わかんねーぞ」
男は炎剣リオレウスを両手で持ち、ゆっくりと振りあげる。
金太郎も同時にマサカリを構えるが、剣の大きさがあまりに違いすぎる。
<死ねぇい! 金太郎!>
男が剣を振るうと、大きな剣、いや鉄のかたまりが地面に地響きを鳴らして穴をあけた。


地面に煙をあげて突き刺さった炎剣リオレウス。
<ハーハハッ! 金太郎め、剣の威力に跡形もなく吹き飛んだか!>
地面には、剣先を中心に数メートルの穴が円形に空き、金太郎は下でペシャンコになってしまったのだろう。
男はその場で豪快に笑い、勝利の余韻に浸る。
しかし、その笑は長くは続かなかった。
「おめー、変なヤツだな。ただの鉄のかたまりを振ってそんなに嬉しいのかぁ?」
<なんだと!>
男が慌てて声の方向に振り向くと、そこには離れた木の枝に飛び乗った金太郎の姿があった。
「おめーと同じで、その剣もニセモノみてーだぞぉ!」
<クソ生意気な小僧が!>
「だってさ、そんなに重い剣を振っても、絶対に当たるわけないもんね」
<・・・なめたことを!>
しかし、男は金太郎の身体能力を間近に見て、驚かずにはいられなかった。
剣を振り下ろした一瞬のスキに、金太郎は宙を浮くようにジャンプして、
  剣とその風圧をあっという間にかわし、そのまま遠くの木まで飛び移ったとしか考えられない。
本当に人間が動けるスピードなのか・・?


「そんなニセモノの剣よりも、おいらのマサカリのほうが強ぇぞぉ!」
金太郎は木から飛び降りるとそのまま着地し、一気にダッシュする。
<速い・・!>
男の目に見えぬ速さで、あっという間にみね打ちにした。
<げはっ・・このガキ、とんでもない強さだ・・・>
「ただのみね打ちだぁ。おいらは人間は殺さないもんね。安心して眠っちまえ!」
男はビクビクと震えながら、膝から地面に崩れる。
男の手から"炎剣リオレウス"がガシャンと音を立てて、鉛のように地面に落ちた。
金太郎は、倒れた男のそばにある剣に、ゆっくりと近づいてみる。
「しかし、この剣、本当にでけーなぁ・・」
そのときだった。
「あうっ!」
金太郎の動きが止まった。
地面に伏したはずの男が、腕を伸ばして金太郎の股ぐらから、おちんちんをギュッと摘んでいたのだ。


虫の息になりながら、金太郎のおちんちんを摘んだニセモノのハンター。
「ううううっ・・なにを・・!」
<フフフッ、どうした? これくらいで動けないのか?>
「そんなこと・・ある・・もんか・・」
<小さい玉っころだぜ・・>
男は最後の力を振り絞り、金太郎の睾丸をギュッと掴む。
「うがぁ!!」
全身から冷や汗を吹き出して、ヨロヨロと倒れそうになる金太郎をみて、男はあざけり笑った。
<やはりお前の弱点はここか。ババコンガ様に報告しなければ・>
「な、なんだとぉ・・」
さらに、おちんちんを摘むニセモノのハンター。
「ううっ・・おいらのパワーが・・」
金太郎は生気を失ったように、ヨレヨレになり地面にバタリと倒れた。
・・・。
金太郎がようやく動けるようになったのは、数分しておちんちんの痛みがなくなったときだった。
ハンターがそのまま気絶して、金太郎のおちんちんは解放していたのだ。
「ハァハァ、危ねぇ・・しかし、おいらの弱点をコイツがどうして・・・」
金太郎は吹き出した汗を拭いながら、男が動けなくなったのを確認する。


「ハァハァ・・だいぶ体力を奪われちまったけど、急がなきゃ!」
男の攻撃に動揺したものの、すぐに気合を入れなおした。
なぜなら、すぐ近くで手下のブランゴが村人を襲っていたからだ。
金太郎は「とりゃーっ!」っとマサカリを振るい、その場のブランゴたちを殴り倒した。
しかし、金太郎の脳裏には、釈然としないものがあった。
(ニセモノのハンターが言ったことが気になるぞ・・・。
  伝説のハンターが使っていた武器が、あの"炎剣リオレウス"だとしたら、どうしてポッケ村にあるんだ?
  いや、あれはニセモノに決まってらぁ。あんな剣、単なるなまくらだもん。でも・・)
金太郎はモヤモヤとした気持ちを振り払うように、両手で顔を叩いて気合を入れなおす。
村人を襲うブランゴを倒しながら、村の奥へ奥へと進んでいった。


次回、第11話「金太郎生け捕りゲーム」をお楽しみに。次の話を読む


おまけコーナー

炎剣リオレウス

リオレウスという火竜の素材から作られた特別な剣で、黒光りをしてして、剣先はリオレウスの鱗で堅く覆われている。先端にうっすらと炎が纏う。実際のゲーム中では、中級の武器として登場し、上位には「煌剣リオレウス」という武器も存在する。小説内ではポッケ村の鍛冶屋がなぜか修復を試みており、ニセモノのハンターがババコンガに献上しようと盗み出した。

今回登場したモンスター

このコーナーは小説に登場したモンスターが、ゲーム中では実際にどんな姿なのかを紹介します。

ティガレックス
恐ろしい風貌を持つ轟竜。攻撃範囲の広さや、怒り時の爆発力が他のモンスターよりも群を抜いており、序盤から終盤までプレイヤーを苦しめる難敵。怒ると肌が真っ赤になり、圧倒的な突進力でハンターを即死に追い込む。小説本編ではプロローグに登場し、金太郎が憧れている"伝説のハンター"に一刀両断にされた。

リオレウス
空の王者と呼ばれる飛竜で、咆哮をあげながら火球を吐き、さらに突進してハンターを即死に追い込む。モンスターハンターに登場するモンスターの中で、いかにも"ドラゴン"らしい姿をしているためか、格好がよくて人気がある。小説本編には直接登場しないが、金太郎が憧れる"伝説のハンター"が100年前の戦いに倒し、リオレウスの素材から"炎剣リオレウス"を作っている。


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