金太郎 in MonsterHunterPortable2ndG (11)



登場人物

金太郎。足柄山で育った怪力少年で、モンスターと戦う見習いハンター。

ババコンガ。金太郎に倒されたドドブランゴの弟分で、悪知恵が働く。

フルフル。ババコンガとタッグを組んでいる飛竜で目と耳がない。強力な電撃を放つ。


金太郎が村の中を進んでいくと、村人が点在するように倒れている。
死んでいる者、ケガをして動けない者・・。
その中の一人に急いで駆け寄ってみると、彼は動くことができなかったが、まだ息があった。
「おい、しっかりしろ!」
<金太郎、逃げろ・・もうこの村は、お前を捕えるための・・・>
「聴こえねーぞ! なんだって?」
よく見ると、村人の首筋に気味の悪い生物がマフラーのように巻きつき、噛み付いているように見える。
白くてヌメッとして、まるでナメクジを大きくしたような、手のひらくらいの大きさの生物だ。
金太郎はゴクリと唾を飲み込んで、その気味の悪い生物をマサカリの柄で潰そうとしたとき、村人が話しかけた。
<この生物に触るな・・コイツは人間の体力を・・>
村人がそこまで言いかけたとき、ナメクジのような生物が村人の首筋からピョンと飛び跳ねる。
そして、金太郎の腕にガブッと噛み付いた。
「うわわっ! 気持ち悪りぃ!」
チクッとした痛みが走ると、噛み付かれた腕から一気に力が抜けるような感じがした。
金太郎は腕に噛み付いた小さな生物を、慌てて右手で追い払う。
「ハァハァ・・なんだか急に力が抜けて・・。
  手に力が入らねぇぞ・・。このちっこい生物みたいなのは、一体なんなんだ!?」
金太郎の肩膝が、自然と地面についていた。


正面から、嫌らしい笑い声がした。
『グヘヘヘーッ! お前が金太郎か? 随分と遅かったべな!』
前方を見ると、瓦礫の砂埃の中に大きなモンスターが一匹いた。
桃毛色の猿、いやゴリラのような風貌。
先に戦ったドドブランゴよりは小さいが、それでも立派な桃色の毛並みと逞しい筋肉を持つ、牙獣類のモンスターだ。
おそらく、ドドブランゴと同じ種族なのだろう。
そのモンスターは、一、二歩前に進むと、金太郎に話しかけてきた。
『俺はドドブランゴの弟分、沼地を支配しているババコンガだべ』
「ババコンガ? おめーが村を襲ったヤツだな! "おいらと戦いたい"って叫んでいたのはおめーか!?」
『そうとも。アニキの仇を討つために、じっくりとお前のことを研究させてもらっただ』
「研究・・? あのニセモノのハンターを使ってかぁ?
  そういえばドドブランゴはどこだ? おいら、アイツともう一回戦いてぇぞ』
『アニキは死んだ。最後は血をドバーッと吐いて、苦しそうだったべ。
  俺はアニキの姿を思い出すだけで、悲しくて胸が苦しくて・・ううっ・・アニキ・・・』
ババコンガはどこからか、ハンカチを取り出して涙を拭いている。
その姿を見て、金太郎はただポカンと口をあけた。
(なんだぁコイツ・・・めちゃくちゃ弱そうだぞ・・)


金太郎は気を取り直して、ハンカチで涙ぐむババコンガに呼びかけた。
「おめーが、ポッケ村をめちゃくちゃにしたモンスターのボスか?」
すると、ババコンガはゆっくりと顔をあげる。
持っていたハンカチを地面に捨てて、それを足でグシャッと潰した。
『そうだそうだ、もう泣いてくる場合じゃないだべ。
  金太郎、よく周りを見ろ。この村の建物は、ぜーんぶ破壊してやったべ。アニキの弔合戦だからな』
「おいらが来たからには、もう悪さはさせないぞ」
そういうと、金太郎は全身に力をみなぎらせ、手も持つマサカリを堂々と構える。
『元気な小僧だべ。しかし、お前は随分と可愛らしい格好をしているだなー。
  それに子供のくせに胸がこーんなにでっかくて、おちんちんがチラチラと見えとるしな』
ババコンガは金太郎の豊満な体を、ジロジロと舐め回すような目つきで見る。
金太郎はその視線にビクリと反応して赤くなり、慌てて怒鳴りつけた。
「おいらのチンチンみて、そんなに嬉しいか!」
『ちっちゃいチンチンだべな。そこが弱点だべ?』
「うっ、うるせー!」
『お前、いま顔が赤くなっただな? 興味深い反応だべ。
  俺の手下から報告が入ってるだべ。お前はキンタマを握られると動けなくなるって本当だか?』
「い、意味わからねーこと、いうな!」
「それにしてもいい体だべ・・可愛い顔してるし、ヨダレが出てきた。
  よし、決めた。このババコンガ様がお前をたっぷりと可愛がってやるべ。アニキの仏前でよがらせてやるだ』
金太郎はババコンガの言葉に、薄っすらと額に汗を流した。
(なしてアイツ、おいらの体ばかり見てるんだ・・。まさか・・おいらの体を・・。
  いや、そんなこと考えるモンスターがいるわけねぇ!)


果たして戦う気があるのか、掴みどころがないババコンガ。
金太郎は、そんな態度にどのタイミングで攻撃を仕掛けようか、計りかねていた。
しかし、村を破壊したのは間違いなくコイツだ。
金太郎は、頬を両手でパチンと叩き、気合を入れなおす。
「行くぞぉ、ババコンガ!」
『あーっ! ちょっとタンマ!』
「な、なんだよ・・」
ババコンガは人差し指を出して、チッチッと金太郎をあしらう。
『いろいろと情報収集をして分かったべ。
  お前ら人間は、"モンスターハンター"と勝手なことを言って、俺たちモンスターを狩っているんだべな?』
「そうだ。なんか文句あんのか!」
『文句あるだべ。モンスターを狩るために、いろんな道具使ってるよな? 
  落とし穴を掘ったり、閃光玉で目を眩ませたり、音爆弾でビックリさせたり、好き勝手にやりたい放題だべ。
  おもしろそうなゲームしてるじゃねーか? だから俺もやりたくなったんだ』
「どういう意味だ?」
『金太郎を"狩る"んだべ。弱いモンスターが頭を使って考えて、罠をあちこちに仕掛けて、
  "金太郎っていう一匹のモンスター"を狩るんだ。お前ら人間がやっていることの逆をするだけだ』
「おいらは、モンスターじゃねぇ!」
『ドドブランゴのアニキを倒すほどの人間だ。俺のようなザコから見れば、お前は立派なモンスターだべ。
  さぁ、プレー開始だ。俺たちがハンターになり、モンスターである金太郎をじっくりと狩るゲームをな!』
「おいらを"狩る"だって・・?」


ババコンガの予想だにしない発言に、金太郎は困惑した。
いままで自分はモンスターを狩ることだけを考えてきたのに、今度は自分が狩られる側になるなんて・・。
しかも、ババコンガはこれを人間狩りのゲームだという。
『肝心なことを忘れとった。ゲームのルールを決めておくべ。
  フィールドはポッケ村だ。この村の中だけで戦う。アイテムはお互いに自由に使ってOKだべ。
  勝利条件は敵を50分以内に殺すか、捕獲することだ。もし金太郎が俺を倒せば、そっちの勝ちでいいべ』
「なにを勝手なこと言ってんだぁ!」
『だから、これはゲームだべ。例えば、こんなことをして遊ぶだ』
そういうと、ババコンガは手に持っていた玉を、金太郎に向かって放り投げる。
その玉は、ガキンッ!だか、グシャン!だかいう大きな音を立てて、金太郎の目の前で爆発した。
「うわっ、耳が痛ぇ!!」
思わず、耳を塞いでうずくまる金太郎。
『ヘーヘヘッ、それは俺が作った対人間用の音爆弾だべ。どうだ、鼓膜がキーンと悲鳴をあげてるだろう?』
「そんなものまで作ったのかぁ!?」
『ゲームを楽しくするには、アイテムが必要だべ。細工は流々、仕上げはごろうじろだ』
「さいくはりゅうりゅう・・?」
『つまり、ポッケ村にはいろんな仕掛けがしてあるんだな。金太郎は俺の作った罠をかいくぐらなくちゃいけないだ』
「ふ、ふざけたこというなぁ!」


勝手に話を進めるババコンガに、金太郎は怒りをあらわにした。
「なんだかわかねーけど、おめーをやっつければいいんだろ!?」
すると、ババコンガは再び人差し指を出して、金太郎をあしらう。
『あ、もう1つ忘れていた。ハンターにはオトモが必要だべ。
  だから、俺のオトモを紹介しよう。コイツは強いぞ。なにしろ伝説の飛竜の一族だべな』
「飛竜だってぇ!?」
金太郎は、"飛竜"という名前から敵の姿を想像する。
"龍"といえば、翼をもった巨大な生物で、炎を吐いてポッケ村を焼き尽くしてしまう・・そんなイメージだ。
(村を破壊したのは、その飛竜ってヤツか・・?)
金太郎は、思わず体をブルッと武者震いさせる。


『おーい、フルフル! こっちに来いや!! 金太郎の相手をしてやれ!』
『グェエエー!』
ババコンガが上空に向かって叫ぶと、どこからともなく小さくて白い生物が飛んできた。
小さな羽根を広げて、ゆっくりと降下してくると、地面に砂煙が舞う。
金太郎は驚いて風圧を避けるように、顔を腕で隠した。
"飛竜"と呼ばれたその生物は、2足歩行するかのように、コトンと地面に足を着いた。
ババコンガの隣にたたずむその生物は、あまり大きくなく、金太郎の身長の2倍くらいだろうか。
背中に2本の翼が生えていて、口から『グェッ』と白い息を吐いている。
どことなく不気味で、皮膚はヌメッとした液体がついている。
たしかに龍のように見えるのだが・・・小さい・・?
「なんだぁ!? 飛竜ってまさかこいつ?」
『コイツが俺のオトモだべ。伝説の飛竜の一族だ。ちょっと小さいけどパワーあるべ』
金太郎はその言葉を聞いて、思わずズッコケそうになった。
「おいら、"竜"っていうからすげーデカイかと思ったら、随分と小さいんだなぁ?」
『小さくても飛竜だべな。フルフルっていうんだ。可愛い名前だべ?
  お前のオトモであるアイルーよりも役に立つぞ。そういえば、金太郎のオトモはどうしただ?』
ババコンガの質問に、金太郎は一瞬返事が遅れる。
「ジ、ジライヤはいねぇ。今日はおいらが1人で戦うんだ。まとめてやっつける!」
『ほう、オトモがいないのか。あの頭のいいネコをどうしようか考えていたが、それはよかったべ』
「ジライヤは頭なんかよくねーもん。おいらだけで十分だぁ!」
その言葉を聞いて、ババコンガをほくそ笑んだ。
(ヘヘッ、この村で、変な噂を流しておいたのが正解だったべな。
  作戦どおりに決別しおった。オトモがいない金太郎ならもう勝ちは決まったべ。たっぷりと痛めつけて捕獲するだ)


次回、第12話「金太郎、絶体絶命!? 2大モンスターの猛攻」をお楽しみに。次の話を読む


おまけコーナー

第11話終了時点で、キャラクター関係図を更新しました。こちらを参照ください。

今回登場したモンスター

このコーナーは小説に登場したモンスターが、ゲーム中では実際にどんな姿なのかを紹介します。

ババコンガ
太った猿のような姿のモンスター。桃色の毛皮を持ち、頭頂部の毛は緑や黄色の交じり合った極彩色。戦闘中に放屁(強烈なおなら)をしてハンターに屈辱的な攻撃をする下品なモンスター。小説本編ではドドブランゴの弟分として登場し、非常に悪知恵に長けている。金太郎が力だけの子供であることに着目し、言葉巧みに自分のペースに持ち込んで金太郎に実力を発揮させない。さらにニセモノのハンターを使って金太郎の弱点を研究する。主にフルフルに攻撃させて金太郎が弱ったところにトドメを刺しにくる狡猾さで、陵辱で金太郎をもてあそぶ。

フルフル
体組織に色素がなくて白く、目も耳もないヒルのような頭部を持つ飛竜。暗所に生息するため目が退化しているが、嗅覚が鋭敏に発達している。常に白い息を吐き、視覚が無いので閃光玉も効かない。尻尾をアース代わりにして体中から電気を発してハンターを追い詰める。小説本編ではババコンガの手下として登場し、ババコンガと絶妙なコンビネーションで金太郎を苦しめる。皮膚が硬く、金太郎のマサカリもまったく通用しない強敵。人間のおちんちんが好きで、一度味を覚えるとどこまでも追い続けるエロエロ生物。


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