長い間ありがとうございました。今回で終了です。
登場人物
金太郎。足柄山で育った怪力少年で、モンスターと戦う見習いハンター。
ジライヤ。金太郎のオトモで、料理から戦闘までなんでもこなす天才アイルー。
ババコンガ。沼地のボスで悪知恵が働く。爆裂オナラが武器。
フルフル。金太郎の匂いを覚えてどこまでも追う。
ラージャン。牙獣界のボスでババコンガの兄貴分。圧倒的な力を持つ。
「あ〜っ! オシッコが出ちゃうーっ!!」
ビューッ、ビューッ!!
音を立てて脈動するおちんちん。
先端から出た液体は、まだ真っ白というよりは半透明で、完全に精通しきっていないものであった。
しかし、その勢いはハンパではなく、竿を握っていたババコンガの顔面を直撃したのだ。
『ぎゃああ! 目がぁ〜、目がぁ〜!!』
1年以上は我慢していたからだろうか。
ものすごい勢いで発射された精子が、水鉄砲のようにババコンガの眼球にぶち当たった。
ババコンガは悲鳴をあげながら、地面に転がってのた打ち回る。
一方の金太郎は、射精して力尽きたのかグッタリと首を落とした。
「ハァハァ・・・」
金太郎は精根尽き果てたように、うなだれていた。
ゆっくりと目をあけてみると、そこには『ギャー!』と叫びながら悲鳴をあげるババコンガがいた。
さらに<バンッ!>とか<ドンッ!>とか分からないが、なにかが破裂するような音が聞こえる。
「な、なんだぁ・・?」
金太郎が顔を起こすと、ババコンガが耳を塞いでうずくまり、爆音と閃光に耐えている。
なにやら、数人の人間が音爆弾と閃光弾を、鍾乳洞の入り口から次々に投げ込んでいるようだ。
一体なにが起こったのかと、金太郎がボーゼンとしていると、地面から聞き慣れた声。
「金太郎、なんという情けない格好しているニャ」
「その声はまさか・・・」
地面の中からネコの耳が出たかと思うと、それがピョーンと飛び上がる。
ハリツケにされている金太郎の胸に抱きついてきたのは、ジライヤだった。
「ジライヤ!」
「金太郎、とっても心配したニャ! みんなで助けに来たニャ!」
ピョンと金太郎の胸に抱きついてジライヤは、ジッと金太郎の顔を見つめる。
ジライヤの目には、うっすらと涙が溜まっているように見えた。
見つめ合っているうちに、金太郎もグスンと鼻をすすり、抑えていた感情を隠せなくなった。
「ジライヤ・・おいら・・ううっ・・」
「とっても心配したニャ。会えてよかったニャ」
暖かい言葉に、金太郎は目にいっぱいの涙を溜めた。
「う・・うん・・」
「ボクがポッケ村に着いたときは、金太郎のマサカリがボロボロになって落ちていたニャ。
だから一生懸命、村の人たちと手分けをして金太郎を探したんだニャー。
やっとこの鍾乳洞を見つけたけど、相手が2匹もいて、スキがなくて助けるのが遅れたニャ。ごめんニャー」
「ありがとうね、ジライヤ・・」
「全く・・みんなに心配をかけて、金太郎は大バカ者だニャ! もし今度同じことをしたら絶対に許さないニャ!」
「うっ・・うん。・・うぐっ・・うわーん!」
金太郎はついに大声で泣き出してしまった。
大きな口を開けて涙する金太郎を見て、ジライヤは思った。
金太郎はまだ子供なのだ。
モンスターに捕まり、冷たい鍾乳洞で体をもてあそばれ、恐ろしい目に遭ったのだろう。
だからジライヤは、これ以上金太郎を怒る気持ちにはなれなかった。
ジライヤは優しい顔で返す。
「ボクが来たからもう安心するニャ。もう金太郎を1人にしないニャー!」
その言葉に、金太郎はひっくひっくと涙をすすりながらも、表情が柔らかかった。
「ごめんよ・・。おいら、やっぱりまだ一人前のハンターじゃなかったんだ。
おいらは、自分勝手でわがままで、ジライヤのことをバカにして・・本当に頭悪いし、3流のハンターだ・・」
「これから頑張ればいいだニャ!」
「ひっく・・うん。ありがとう」
「いま、村の人たちがババコンガとフルフルの注意をひきつけているから、いまのうちに回復薬を飲むニャー!」
「村の人たちがここまで来たの・・? 大丈夫なの・・?」
「危ないに決まってるニャ。だから早く回復薬を飲んで、金太郎に村の人たちを守ってほしいニャ!」
ジライヤは背中の持っているハンマーを取り出し、金太郎を拘束していたフルフルヘビーを叩き落した。
そして、緑色のビンに入った回復薬を金太郎に差し出す。
「あれ? 体力を回復させるのって、"こんがり肉"じゃなかったっけ?」
「こんがり肉はスタミナを回復するだけだニャ。体力を回復するには"回復薬"だニャ。まだ覚えてないニャ?」
「い、いや・・その・・・えへへ」
金太郎は緑色のビンを受け取ると、その中の液体をグイッと飲み干した。
金太郎は、ようやく束縛から解放され、回復薬によって体力もすっかり元に戻った。
そこに数人の村人が駆け寄ってくる。
<金太郎、この大剣を使えるか!?>
大の大人が数人がかりで運んできた、身長の3倍はあろうかという大きな剣。
その剣は黒光りをして、剣先は尖っているというよりは龍の鱗で堅く覆われており、真っ赤な色をしていた。
先端にうっすらと炎が纏い、持つ者を拒むような雰囲気がある。
まるで、生きているかのような剣だ。
「あれ、この剣って・・?」
すると、ジライヤが答える。
「ポッケ牧場に封印されていた"炎剣リオレウス"っていうニャ。
ずっと昔に、ティガレックスというモンスターを倒したハンターが、使っていたという噂だニャ!
以前から誰かに使ってもらおうと、村のみんなが鍛冶屋にお金を払って、焼きなおしていたんだ。
なにしろ古い剣だから、鍛冶屋も復元するのが相当に大変だったみたいだニャー」
ジライヤの発言に金太郎はけげんな顔をする。
「ジライヤ、この剣はニセモノだぞ! 単なるなまくら剣だぁ」
「違うニャ! この剣は鍛冶屋がしっかりと直した正真正銘の伝説の剣ニャ!」
「そ、そうかなぁ・・?」
「このジライヤが信用できないのかニャ!?」
「そ、そんなことねぇぞ!」
あまりにジライヤが必死なので、金太郎も思わず相槌を打ってしまった。
不審な顔つきで剣を見る金太郎に、ジライヤが話しかける。
「金太郎はマサカリしか使わなかったから、この剣はずっと鍛冶屋で眠っていたんだニャ。
みんなが金太郎のために復元した武器ニャ。だから、金太郎に使ってみて欲しいニャー」
「おいらのために・・? そうだったんだ・・みんな、ありがとう!」
金太郎はふと気がついた。
いままで自分が守ってきたはずの村人たちに、いつのまにか自分が守られていたことに。
(そうか・・。おいらは1人で戦っていたんじゃない・・。ジライヤと、ポッケ村の人たちと、みんなで戦っていたんだ。
村の人たちが一生懸命に支えてくれるから、おいらは村でハンターとしての役目に集中できるんだ。
おいらが1人でモンスターを倒しているんじゃなかった・・。みんなで1つなんだ。
おいらは恥ずかしい。いままで自分のことしか考えていなかった。でもこれからは、みんなを守るために戦う!)
金太郎は意を決して、真っ赤な刃を持つ大剣を村人から受け取る。
そして柄をつかんだ瞬間、金太郎の全身に電撃が落ちたかのような感覚が走る。
(なんだこの剣・・初めて触ったのに、おいらには使い方が分かる・・剣が心に語りかけてくる・・)
半信半疑だった金太郎の心の中に、確信めいた"何か"が生まれた。
金太郎は、刀を片手で握り締める。
ゆっくりと中腰の姿勢となり、逆手に剣を持ち替えて、剣を正面ではなく背後に回して構えた。
金太郎の剣の構えに、ジライヤが驚いて声をあげる。
「金太郎、そんな構えじゃ敵を斬れないニャ! 正面に構えて上から振り下ろすニャ!」
ジライヤの言葉に金太郎は首を横にふった。
「この構えでいいんだ。炎剣リオレウスは剣で直接相手を斬るんじゃない。
敵を炎で切り裂く剣なんだ・・おいらには分かる。だってこの剣が教えてくれるんだから」
「金太郎・・まさか分かるのかニャ・・」
そこへ突然、複数の人間の匂いに感づいたのか、白い飛竜が咆哮をあげる。
フルフルが、金太郎と村人たちに気がついて、突進をしてきたのだ。
『グェエーーー!!!』
<なんだ、あの白いバケモノは!?>
<閃光玉が効かないぞ!>
<目が見えないモンスターなのか!?>
背筋を凍らせる村人たちを守るかのように、金太郎はフルフルの前に立ち、そして目を瞑り、感じた。
フルフルの息遣いと邪悪な気配を。
「みんなは安全な場所まで下がってくれ! フルフルはおいらが絶対に倒す!」
村人たちは突然襲い掛かってきた白い飛竜に度肝を抜かれたが、洞窟の奥に急いで逃げ込んだ。
「おいらがみんなを守ってみせる。おいらの新しい技を受けてみろ!」
「金太郎、まだフルフルは遠くにいるニャ! 目を開けてよく見るニャ!」
「これでいいんだ。おいらのパワーをすべて使ってくれ、炎剣リオレウス!!」
金太郎は剣を真後ろに構えたまま、じっとパワーを溜める。
まるで自分のすべてのエネルギーを剣に注ぎ込むように。
「行けぇ、
金太郎は剣を後ろから正面へと、水平に力一杯振るう。
すると剣先から業火があがり、竜の頭の形をした炎が一直線に飛び出した。
まるで触れるものすべてを焼き尽くすような鋭い火柱。
それは、数メートル先にいるフルフルの胴体を一直線に貫いていった。
『ゴゲェェーーーツ!!』
フルフルは剣の形をした炎に真っ二つにされ、その場で体の半分が地面でドスンと落ちて横たわった。
「ハァハァ・・やった・・!」
肩で大きく息をした金太郎は、ほとんどの力を使い果たしたのか、尻餅をついて剣を地面に置いた。
そして剣先から出ていた炎は、自然と消えていった。
しかし、村人たちはその様子を見て、腰を抜かしたように驚いた。
<なんだいまのは・・?>
<炎剣リオレウスって、あんなことができたのか・・>
<それよりも金太郎が・・人間技とは思えない・・>
<本当に人間の子供なのか・・?>
村人たちは、金太郎が戦う姿を初めて見たせいか、ざわざわとした不穏な空気が流れる。
剣からあがった焦げ付くような業火を目の当たりにして、村人たちは表情が凍りついていたのだ。
「ハァハァ・・みんな、やったよー!! おいら、炎剣リオレウスを使いこなせちゃった!」
<・・・>
振り向いてバンザイをして喜ぶ金太郎に対し、村人は全員がゴクリと唾を飲み込で突っ立ったままだった。
「あ、あれ、みんなどうしたんだぁ? フルフルを倒せたんだよ! みんなのおかげだぁ!」
<・・・・>
「おいら、とってもうれしい!」
そこへ、ジライヤが歓声をあげる。
「そ、そうだニャ。みんな、なにをしてるんニャ!! 金太郎がみんなを守ってくれたニャ!!」
<し、しかし・・>
「あの剣は振れば炎が出る仕組みになってるニャ! そういう剣なんだニャ!」
ジライヤの言葉に、村人たちはホッとしたのか金太郎を笑顔で迎えた。
<なんだ・・そうだったのか>
<金太郎、お前の怪力はすごいな!>
「えへへ。みんな、ありがとう」
「金太郎、すごいニャ! 今回だけは誉めるニャー!」
「ジライヤまで・・。あ、そうだ。もう一匹敵が残っていたぞぉ、次はおめーだぁ!!」
そういうと、金太郎は鍾乳洞の奥に逃げようとしていたババコンガを指差した。
ババコンガは忍び足で逃げようとしてところを、金太郎に呼び止められた。
「さっきはよくも、おいらをいたぶってくれたな!」
『ひぃ!』
「まだおめーを倒すくらいの力は残ってるぞぉ!」
ババコンガは全身から汗を吹き出しながら、振り向いてへいこらと頭を下げる。
『金太郎様、どうもスミマセンでしたーっ!
おちんちんを揉んだら射精しちゃった事も、昔はクマに甘えていた事も、誰にも言いませんから許してくだせー!』
「おめぇー、思いっきり言ってるじゃねぇか!」
『二度と悪いことしませんだ〜』
「もう騙されないぞ。覚悟しろ!!」
金太郎が地面に置いた炎剣リオレウスに手を伸ばそうとしたとき・・。
──ドッカーンッ!!
耳を塞ぐような轟音とともに鍾乳洞の天井が崩れた。
そして一匹の大型のモンスターが、天井に空いた大きな穴から、
金太郎とババコンガの間に割って入るように、ドシンッ!と地面を揺らしながら降り立ったのだ。
そのモンスターは不気味に光る真っ赤な目を持ち、ミノタウルスのような姿をした獣だった。
猛牛のような2本の立派な角を持ち、穴から差し込む陽の光に照らされて、地面に四つん這いで降り立っていた。
「な、な、なんだぁ、コイツ!?」
突然現れた威風堂々としたモンスターに、金太郎は揺れる大地の上で後ずさりする。
そしてこの後、金太郎はさらに驚くべき現実を目の当たりにした。
『ウグォーーーッ!!』
激昂したような咆哮をあげると、そのモンスターの体毛が輝き、金色に変化しはじめたのだ。
「モンスターが金色に・・これって・・」
金色に輝くモンスターが一喝すると、その衝撃波で鍾乳洞全体が震える。
村人たちは咆哮を聞いただけで足がすくみ、さらに衝撃波で壁に打ち付けられて絶命してしまうほどだった。
圧倒的な存在感と威圧感に、金太郎の喉はからからになり、鳥肌が立ち、そしてゴクリと唾を飲み込む。
震える足を必死に抑えた。
金色に輝くモンスターは、不気味な目で金太郎を見下ろすと、ゆっくりと口を開いた。
『下界が騒がしいと思って来てみれば、ようやく炎剣リオレウスを使いこなす者が現れたか・・』
そのモンスターは、金太郎が手放した炎剣リオレウスをゆっくりと拾い上げる。
金太郎は剣を奪い返そうとしたが、体が1ミリ足りとも動かなかった。
──恐怖。
初めて金太郎が心の底から、とてつもない「恐さ」を感じるモンスターだった。
モンスターは剣を拾い上げると、満足そうにうなづいた。
『炎剣リオレウスは元々、俺が使っていたものだ。もらっていくとしよう。
しかし、この剣を使える人間がまだ年端も行かぬ小僧だとは。それにジライヤ、お前がオトモについていたのか?』
金太郎の傍らで口をつぐんでいたジライヤが、声を絞り出した。
「ラージャン・・」
『フフフッ、ネコの分際でしぶといヤツだ。もっともあの時にお前だけは殺さずにおいてやったからな』
ジライヤは、"ラージャン"と呼んだモンスターに激しい口調で怒鳴った。
「今回のモンスター騒動は、お前が首謀者だったのかニャ!」
『何の因果かは知らぬが、まだハンターのオトモをしているのか?
それともこの小僧が目覚める前に、スキを見て殺すつもりか? そんなことをすれば、今度こそ命はないぞ』
「うっ・・。金太郎は違うニャ。お前なんかと一緒にするニャ!」
ラージャンとジライヤの会話を、金太郎はただ黙って聴いていた。
金色に輝くモンスターの名前が"ラージャン"であることと、それをジライヤが知っている事実。
一体なにがどうなっているのか・・金太郎の頭はパニックになっていた。
ラージャンはジライヤをあざけり笑うと、金太郎に話しかけた。
『おい、小僧。いや、金太郎とか言ったな?
遅くなったが自己紹介をしておこう。俺はラージャンという。
モンスター軍団の統率者だ。俺を倒せばポッケ村は平和になるぞ。いま勝負してみるか?』
ラージャンの質問に、金太郎は言葉が詰まった。
いまここでラージャンと戦えば、自分は確実に負けるだろう。
『どうした、相当に疲れているようだな? 炎剣リオレウスは持つ者のエネルギーを吸い尽くす。
まだ子供の体力でこの剣を振るえば、立ち上がることもかなうまい。どうだ、図星だろう?』
「ハァハァ・・おめーは一体・・・」
『金太郎よ。お前は昔に大切なものを失ったことがあるか?
もしそうならば、お前はもう目覚めつつあるということだ。将来が楽しみなガキだ。
もっと戦え。そして俺を倒すまでに成長したとき、本当の苦しみが待っているのだ。
予言してやる。お前がポッケ村を救う英雄になったとき、お前のハンターとしての物語は終わる。なぜなら・・』
「やめるニャ!! お前と一緒にするニャ!」
ジライヤが会話を止めるように叫ぶ。
『フフフッ。いつか我らが進む道と、お前が進む道が1つになる。楽しみにしているぞ・・金太郎』
ラージャンは薄ら笑みを浮かべると、ババコンガを脇に抱えてそのまま飛び跳ねる。
天井に空いた穴から、空に飛びそのまま咆哮を残して風のように去っていった。
・・・。
生き残った村人たちは、ジライヤの忠告に従い一足早く沼地から去った。
金太郎とジライヤは、2人でポツリと鍾乳洞の入り口に立ち止まり、その景色をぼんやりと眺めた。
金太郎はゆっくりと思い出していた。
ポッケ村がババコンガに襲われ、建物は瓦礫と化し、そして多くの村人がケガをし、死んだこと。
自分がドドブランゴにトドメを刺さなかったことが原因であること。
さらに、ラージャンが現れて、謎めいた話をしたこと。ジライヤが何か関係があること。
金太郎とジライヤは、お互いに黙ってうつむいていたが、
バツが悪そうな雰囲気を振り切るかのように、金太郎のほうから口を開いた。
「ジライヤ、ありがとう・・ね・・」
「な、なにをニャ? 金太郎?」
「なにって、おいらを助けてくれたことだよぉ」
「そ、そうだったニャ」
「おいら、この鍾乳洞で捕まったとき、もう二度とジライヤに会えないと思ったんだ」
金太郎から出た素直な言葉に、ジライヤの顔つきは柔らかくなった。
「ボクだって、金太郎のボロボロになったマサカリを見たときは、血の気が引いたニャ!」
「ごめんよ・・心配かけて。
おいらは強くなりたかった。母ちゃんが死ぬ直前に"強く生きろ"って言ったんだ。
だから小さいときから強い相手と毎日戦ったよ。足柄山にいる動物たちをみんな家来にした。
そして強い相手を求めてポッケ村に来たんだ。強いモンスターと戦って、強い人間になりたかった。
だって、世の中で一番強いヤツを倒せば、おいらが一番強いっていう証明になると思ったから」
「そうだったのかニャ・・」
「おいら、自分が強くなればそれでいいと思っていた。
ポッケ村がモンスターに襲われても、おいらだけが強くなれればいいと思っていたんだ」
「・・・」
「だけど、おいらは間違っていたよ。母ちゃんが言っていた"強く生きろ"っていうのは、
おいらの腕っ節がただ強くなることとは違ったんだ。本当に強い人間はみんなを守れる人間だ。
ジライヤと村長、そして村の人たちを守り、みんなのことを考えてこそ、おいらは本当に強い人間になれるんだ。
だから、おいらはもっと強くなれる。あのラージャンってヤツを絶対に倒して、ポッケ村を平和にするんだ」
「金太郎・・」
ジライヤはふと金太郎の横顔を見る。
その顔は、前よりもとても凛々しくて、精悍で子供のあどけなさは消えていた。
金太郎の心の中に溜まっていたものが吹っ切れて、一流のハンターとして、ようやく一歩を踏み出したのではないか。
ジライヤにはそんな風に思えた。
そして、金太郎を守ってあげるのが、自分の役目であることも肌で感じた。
金太郎は遠くを見つめながら、再びジライヤに話しかける。
「さっきの話だけど・・」
「なんだニャ?」
金太郎は少し話にくそうに視線をそらせたが、真面目な顔で質問をしてきた。
「ジライヤは、ラージャンっヤツのことを知っていたの?」
「それは・・その・・以前に戦ったことがあるモンスターだからニャ・・」
「本当の苦しみか待っているって、どういう意味なんだ!?」
「・・・」
金太郎の問い掛けに、ジライヤは目を合わさず、何も答えなかった。
しかし、しばらくして真面目な声で話しかけてきた。
「金太郎・・1つ聞いてもいいニャ?」
「うん。なんだ?」
「金太郎はこれからもずっと、人間を信じて戦ってくれるニャ?」
その質問に、金太郎は腕に力こぶを作って答えた。
「あったりまえだぁ。だっておいらは人間だもん!」
「そうだニャ・・。この先なにがあっても、金太郎は人間だニャ」
「変なこというなよぉ。おいらは村のみんなのために戦うって決めたんだ」
「・・・分かったニャ。金太郎がそう思うなら、ボクは全力で金太郎を助けるニャ。
金太郎と生きるのも死ぬのも一緒だニャ。たとえ世界中を敵に回しても、ボクだけは金太郎の味方だニャ!」
「世界が敵って・・ジライヤは大げさだぞぉ。でも、ありがとう。
おいらはまだ未熟だけど、ジライヤがいれば大丈夫だ。だって、ジライヤはまるでクマ五郎みたいにあっけぇ」
「クマ五郎?」
「いや、その・・ジライヤがそばにいてくれるだけで、おいらは・・・」
「なんだニャ?」
「おいらは・・その・・」
「??」
金太郎はなぜか頬をポッと赤く染めて、駆け出した。
「なんでもないよぉ〜!! おいらに追いついたら教えてやらぁ!」
「あーっ、金太郎、待つニャ! その先を教えるニャ!」
夕暮れの沼地に、金太郎とジライヤの笑い声が響いていた。
最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました。今回は、リンクさせていただいているきんたろーさんのページの「金太郎」の絵が可愛かったので、そこから妄想して小説を書いてみました。初めてのオリジナルっぽい?小説です。世界観や敵キャラクターはPSPで流行している『Monster Hunter Protable 2ndG』から拝借しました。モンスターがしゃべるのは、かなり都合よく改変させてもらいました。「金太郎」を主人公にしようと決めたときに、怪獣やモンスターみたいな敵と戦わせたいという思いがあったので、そういう意味ではモンハンはちょうどよい素材でした。自分がプレーしていたこともあるし、挿絵を描いてくださったきんたろーさんも、モンハンにかなりハマッておられたので、「こーいう小説で、こーいうキャラがいて・・」みたいな説明はしやすかったです。いろいろと注文をだしてきんたろーさんにはご迷惑をおかけしましたが、自分的には満足のいく小説が書けたので、よかったと思っています。なにか感想がありましたらぜひお願いします。
この物語の今後の展開ですが、いちおう考えていた世界設定、キャラクター設定は以下のリンクに張っておきます。興味のある方はご覧ください。読むとほぼネタバレになるのでいろいろと妄想されたい方?は読まないほうがいいかもしれません。
金太郎 in MonsterHunter Portable 2nd G 設定集