山下が太一に要求した条件とは?
登場人物
亀山太一。温厚な性格だが、メタボでノロマな事からクラスでは一人ぼっち。
条件次第で、大塚には手を出さないという山下。
しかも簡単な条件だという。
ホッとした太一は、明るい表情で山下に尋ねた。
「それで、条件ってなんですか? ボクができることなら何でもしますから」
「えー、マジで!?」
「はい」
「マジでいいの!?」
なにやら山下の声のトーンが急に高くなったような感じがする。
大きな体に似合わず、ちょっと甲高い声。
太一は頭の後ろを掻きながら、聞き返した。
「あの・・ボクを殴るとか・・暴力は勘弁してくださいね」
「暴力は振るわねーよ。俺は太一くんとは仲良くしたいし、やさしくしてあげたいのさ」
「はぁ、やさしく・・?」
「俺と遊んでくれたら、大塚には手をださないぜ。だから2人でイチャつこうぜ」
「は?」
山下の言葉の意味が、いまひとつ良く分からない。
太一は苦笑いをしながら、もう一度尋ねてみる。
「あの・・遊ぶんですよね・・?」
「だって太一くん、すげーかわいいし。顔を見ているだけでうずいてくるしさ。
大塚の友達なんだよな。そこだけは気に食わねぇ。だから大塚から奪ってやる。
大塚の友達じゃなくて、俺のものになれ。俺と付き合ってくれよ」
「つ、付き合うって・・!?」
男同士で付き合うとはどういう意味なのか?
友達になって一緒にテレビゲームをして"遊ぶ"ことなのかなと、太一は勝手に思った。
「どうした? ウンと言わなければ、また大塚に暴力振るっちまうかもな」
山下の言葉に、太一は反射的に返事をしていた。
「分かりました。山下さんと付き合って遊べばいいんですよね?」
「あぁ」
「じゃ、付き合います。だから大塚くんには手を出さないでください」
「マジでいいの? 交渉成立だな」
「はい、交渉成立で」
山下は「よっしゃ」とガッツポーズをとりながら、喜んでいる。
男同士で遊ぶことが、そんなにうれしいのかな?と太一は不審に思った。
しかし、次に山下が発した言葉は、太一の耳を疑うものだった。
「太一くん、キスしようぜ」
「えっ?」
「俺とキスするんだ。それで裸になって体を触らせてよ」
突然の山下の発言に、太一はどう返事をしていいのか分からずにボーゼンとした。
「どうしたんだよ。付き合うんだろ、俺たち?」
「そ、そ、そんなことできるわけ・・」
「いま約束しただろ。俺と付き合うって」
「付き合うって・・!?」
「太一くんは俺のモンになったんだ。言うこと聞けよ!」
なにがなんだか分からず、額から嫌な汗がスーッと垂れる太一。
一体、山下は自分をどうしようというのか?
(まさか、"付き合う"って・・男同士で恋人になるって・・意味?)
そう考えたとき、太一は背筋にゾッと寒気が走るのを感じた。
"山下と付き合う"という条件を飲んでしまった太一。
意味が分からなかったとはいえ、安直に口約束してしまったことに太一は後悔していた。
しかし、これは大塚を助けるための献身的な行為なのだ。
だから、いまさら約束を取り消すこともできない。
(ボクはとんでもない約束をしてしまったのでは・・どうしよう・・)
いつのまにか、山下の目がなにやらギラギラとしたものに変わっている。
太一は背筋を凍らせ、山下から1歩、2歩と後退した。
そのとき、山下が僅かな笑みを浮かべて、ほかの2人の部員に命令した。
「お前らはもう帰っていいぞ。ここからは俺と太一くんだけの世界だぜ」
<はいはい。山下はそーいうの好きだからな。邪魔しねーよ>
<久しぶりのカワイ子ちゃんじゃん。明日太一くんがどういう味だったか聞かせろよ、ハハハッ>
残り2人の柔道部員は、太一を置き去りにして道場を早歩きで出て行く。
<じゃあな、山下。そうだ、2人っきりのムード出してやるぜ>
部屋を出るついでに、部員の1人が道場の電気のスイッチをすべて切った。
突然、明かりが消えて夕陽がほんのりと差し込むほどの暗い部屋に変わった。
肉眼で山下がどこにいるのか、ようやく分かる程度の明るさだ。
「ヘヘッ、太一くん。これで俺たちを邪魔するヤツはいなくなった。
エッチしようぜ。外から覗かれても見られないし、暗いから恥ずかしくないしさ。
声はあまり出すなよ。気持ちよかったら、喘いでくれたほうが俺は燃えるけどな」
「だ、だめだよ・・」
「いまさら何言ってんだ」
予想だにしない事態に、太一は玄関の方向へと逃げようとする。
後ろを向いて逃げようしたが、山下が睨みつける状況ではうまく足が動かない。
もつれてしまい畳にドシンと尻餅をつく。
「ククッ、逃げてもムダだぜ」
太一は尻餅をついたまま、急いで声の主の方向に向きなおした。
大股開きの格好だ。
「逃げれば逃げるほど、やりたくなってくるぜ」
「あっ・・ああ・・やめてください・・」
「やめろだ? 大塚の話はなかったことにするぜ。それでいいのか?」
「そ、それは・・」
「お前は従うしかないんだ。俺とここで気持ちいいことをすればいいだけさ」
その言葉に、太一はオロオロとして額に汗を流した。
山下は、大股開きで倒れている太一にゆっくりと近づく。
ノシリと巨体を近づける山下を目の前にし、太一は小動物のようにブルブルと震えていた。
まるで狼に襲われた子羊のようだ。
山下は、ニンマリとした笑みを浮かべて、上から見下ろした。
その威圧感に、太一はゴクリと生唾を飲み込む。
山下は太一のお腹の上まで、ゆっくりと歩を進めた。
「よいしょ」といいながら、倒れている太一のお腹に強引にまたがる。
「さぁ、はじめようか」
仰向けに倒れている太一の腹に馬乗りになり、そのまま手首を、畳に食い込むように押さえつけた。
「太一くんのお腹、ゴム鞠みたいにプニョプニョじゃん」
「ううっ、放して・・」
「いやだね。太一くん、逃げたかったら抵抗してみなよ」
太一は必死に体を左右に振って逃げようとするが、山下のケツが重くて動かない。
両手首を山下にガッチリと畳に抑えられて、とても抵抗できそうになかった。
(ダメだ・・力を入れても体が全然動かないよ・・)
「ヘヘッ、もう抵抗は終わり? ボクシングしているのに力がないんだな」
「だって、山下さんが重くて・・」
「さてキスしようか」
緊張で背中が汗でびっしょりになった太一に、山下が野獣のように襲い掛かった。
第7話に続きます。次の話を読む